2023年度版 渡辺松男研究2の30(2019年12月実施)
Ⅳ〈月震〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P151~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
236 驢(ろ)と生まれただ水草をおもいみるまずしさよ吾は鞭打たれいし
(紙上意見)
粗食に耐え、丈夫なロバは人間にとっては都合のいい家畜だが、そのロバと生まれるのは哀れだ。けれど哀れと思うことも知らず、ただわずかな水と草を与えられるのを待ち、働かされている。なんとまずしいことか。けれど、自分もロバと同じように、生活の為に、上司や社会や周りの要求のままに、使われ働かされているではないか。結句の言い切りの強さに作者の苦しさが表されていて、読むものに、自分も同じロバかもしれぬと思わせる歌。この作者にしては、わかりやすく強い歌だ。 (菅原)
(当日意見)
★松男さんの歌は、なるべく書いてある通りに読もうと思っているので、この人は
驢馬に生まれたんですね。それで餌である水草のことばかり思って生きている。
そら、働けと言ってむち打たれていたものだ。なぜ結句が過去になるのかな。水
草は餌ではなく水草の生える水辺で驢馬にとっての唯一の憩いの場かもしれない
けど。作者の苦しい仕事の投影というのはその通りなんだけど、敢えて言わなく
てもいいかと。でも驢馬=作者と解釈すると歌は平板でつまらなくなる。(鹿取)
★貧しさよは、水草を思い見ることしかできなかったことを言っている。鞭打たれ
たのが過去なのは、今だったら何か対処ができるのに、昔は鞭打たれるままでし
か無かった。(泉)
★水草は餌ではなくて、たかがしれたもんだけど、それを思い浮かべている。だけ
ど三句に「まずしさよ」っていうのはいらないだろうと思う。「まずしさよ」がな
くても、力の弱い使役される頼りない存在だって事は出ています。下の句もおん
なじ事を言っている。「鞭打たれいし」ってダメ押しでしょう。みんな同じ調子で
すよね。(A・K)
★もし水草が餌でなかったら、それを思い見るかすかな詩的な余白があるわけです
よね。ふっくらとした何かがここにはあると思うんですが。(鹿取)
★水草は清らかで流れていて。驢馬は抵抗できないわびしい存在だけど、水草を思
うことはできる。願いとか祈りがここにはある。でも、貧しさ、鞭打たれという
のは肯えない。この作者がそんなことをわからない訳はないので、私にわからな
いもっと深い何かがあるのでしょうか。(A・K)
Ⅳ〈月震〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P151~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
236 驢(ろ)と生まれただ水草をおもいみるまずしさよ吾は鞭打たれいし
(紙上意見)
粗食に耐え、丈夫なロバは人間にとっては都合のいい家畜だが、そのロバと生まれるのは哀れだ。けれど哀れと思うことも知らず、ただわずかな水と草を与えられるのを待ち、働かされている。なんとまずしいことか。けれど、自分もロバと同じように、生活の為に、上司や社会や周りの要求のままに、使われ働かされているではないか。結句の言い切りの強さに作者の苦しさが表されていて、読むものに、自分も同じロバかもしれぬと思わせる歌。この作者にしては、わかりやすく強い歌だ。 (菅原)
(当日意見)
★松男さんの歌は、なるべく書いてある通りに読もうと思っているので、この人は
驢馬に生まれたんですね。それで餌である水草のことばかり思って生きている。
そら、働けと言ってむち打たれていたものだ。なぜ結句が過去になるのかな。水
草は餌ではなく水草の生える水辺で驢馬にとっての唯一の憩いの場かもしれない
けど。作者の苦しい仕事の投影というのはその通りなんだけど、敢えて言わなく
てもいいかと。でも驢馬=作者と解釈すると歌は平板でつまらなくなる。(鹿取)
★貧しさよは、水草を思い見ることしかできなかったことを言っている。鞭打たれ
たのが過去なのは、今だったら何か対処ができるのに、昔は鞭打たれるままでし
か無かった。(泉)
★水草は餌ではなくて、たかがしれたもんだけど、それを思い浮かべている。だけ
ど三句に「まずしさよ」っていうのはいらないだろうと思う。「まずしさよ」がな
くても、力の弱い使役される頼りない存在だって事は出ています。下の句もおん
なじ事を言っている。「鞭打たれいし」ってダメ押しでしょう。みんな同じ調子で
すよね。(A・K)
★もし水草が餌でなかったら、それを思い見るかすかな詩的な余白があるわけです
よね。ふっくらとした何かがここにはあると思うんですが。(鹿取)
★水草は清らかで流れていて。驢馬は抵抗できないわびしい存在だけど、水草を思
うことはできる。願いとか祈りがここにはある。でも、貧しさ、鞭打たれという
のは肯えない。この作者がそんなことをわからない訳はないので、私にわからな
いもっと深い何かがあるのでしょうか。(A・K)
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