かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞  46  

2022-04-08 12:27:57 | 短歌の鑑賞
     ※本日2回目の記事です。

  渡辺松男研究2の7(2017年12月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【山鳥薇】P36~
     参加者:泉真帆、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
  
46 風景を山鳥薇(やまどりぜんまい)が殺し秋はゆくなり茫々の雲

        (当日発言)
★殺風景だけど雲はあるんだよという心持ち。(慧子)
★殺風景とは歌で言ってないですが。山鳥薇はシダ科の植物で、山野ではよく見かけますね。
    (鹿取)
★一面に山鳥薇がはびこっている為に、秋の風景というのはこういうものであろうという期待が壊 
 されてしまった。「殺し」は風景を台無しにしたくらいの意味でとりました。しかし、この歌に
 関しては山鳥薇という言葉の面白さに少し頼りすぎているように思いました。(真帆)


         (後日意見)
 作者は『泡宇宙の蛙』冒頭からさまざまな茸、蟹蝙蝠、猪独活、四葉鵯、白根葵などなどたくさんの植物を登場させてそれらにシンパシーを示してきた。ところがここにきて「風景を山鳥薇が殺し」という。山鳥薇にやや否定的なように読めてしまうが、どうとったらいいのだろう。殺しといいながら風景の中に山鳥薇の存在感がものすごくあるし、一連の題にもなっているのだが。山鳥薇はシダ科の植物で勢いがあって野性的ではあるが、だからといってすすきや女郎花などのたおやかな情趣を作者が秋山に求めていたとも思えないのだが。
 「秋はゆくなり」に続くので、馴染んでいた秋の風景が山鳥薇に席巻されてだんだんと変化してゆく、そして移り変わってゆく風景の上を茫々と永遠のような雲が浮いている、そんな時間の経過がテーマなのだろうか。(鹿取)

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