かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 230

2023-01-04 11:14:34 | 短歌の鑑賞
  2023年度版 渡辺松男研究2の30(2019年12月実施)
     Ⅳ〈月震〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P151~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


230 月震ぞハムスターからハムスターぞろぞろ生まれまろまろと死す

         (レポート)
 月のみちかけと生命とはふかくかかわる。掲出歌は「月震ぞ」とはじまり、まるで月の揺れが原因のようにハムスターからハムスターがぞろぞろ産まれるという。オノマトペに関しては、「ぞろぞろ生まれ」には愛でたさよりも滑稽な趣きが、「まろまろと死す」にはどこか愛おしんでいる感じがある。(慧子) 

          (紙上意見) 
 月に地震があり、それに触発されるようにハムスターが出産し、死んでゆくと詠う。月が人間を含めた生き物の生理・生殖に影響を与えていることはよく知られている。月夜にこぞって産卵する、サンゴ・カメ・カエルなどなど・・・。これが事実かどうかはわからないが、月の地震に呼応するように多産のハムスターが出産し死んでゆくというのはありそうと感じさせる歌。生の「ぞろぞろ」が怖くて、死の「まろまろ」がかわいらしく、鼓動する宇宙のひび割れから、命が生まれたり、死んだりする不思議さを表したかったのかもしれない。(菅原)


         (当日意見)
★月震って広辞苑にはなかったのですが。(A・K)
★ウィキペディアに出ていました。「月に起こる地震のことである(以下省略)」
  (鹿取)
★「月震ぞ」というのは初句切れ?それとも月震なのでというように続いているの?
      (A・K)
★「ぞ」は強意だから、月震なんだという初句切れかな。月震なんだと強く提示し
 ている。もちろん意味的には続いていくんだけど。月震の起こっている時にハム
 スターが一方では生まれ一方では死ぬ。「方丈記」の淀みに浮かぶうたかたはか
 つ消えかつ結びて……みたいですね。〈生の「ぞろぞろ」が怖くて〉というなん
 だか逆説的な菅原さんレポートが面白かったです。(鹿取)
★渡辺さんって意識的にオノマトペを使われますね。ちょっと対句風ですね。
    (A・K)


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