その老婦人にお会いするのは2度目だった。
先方様は覚えていないようだったが羽織っている温かなそうなコートには
確かに見覚えがある。
一通りのご案内の後、その方が問わず語りに話しだす。
“さっきね、携帯の料金を振り込んできたの
わずかばかりの金額なんだけど 主人の名前で...
“実は主人は昨年の秋に亡くなったのよ
だからこの携帯も解約をしようと思っていたのだけど
“その道中で携帯が鳴りだしたの
掛けて来たのは主人のお友達だった...
“それで解約するのはもう少し先にしようと思ったの
持ってるだけで繋がっている気がしてね
“それから鳴る事はないのだけど 後、2、3回は料金を支払うつもり。”
嗚呼
携帯一つにこんなにも深い想いとドラマがあったのだ。
“また、来月も寄せてもらうわね”
ニッコリ笑いコートに包まれお店を後にする。
はい、心からお待ち申し上げております。
本日もお付き合いいただきありがとうございました