地震リスク delphis manta blue

身近な地震リスク 減災を目指して

<復興を願い 2011.3.11東日本大震災>
<未曾有の巨大災害 記録>

東海地震に備えて(第五回)

2007-02-04 | 地震リスク
静岡県の地震対策は進んでいるのだろうか。

個人住宅22万棟の全壊が予想される中、静岡県ではプロジェクト「TOUKAI(東海・倒壊)-0(ゼロ)」が2001年からスタートした。この「TOUKAI(東海・倒壊)-0(ゼロ)」は、「減災(ミティゲーション)」の考え方を基本とした「静岡県地震対策アクションプログラム2001」(現行2006)の理念に基づき行われている施策である。目標は「東海地震における旧基準の木造住宅の倒壊による死者をゼロにする。」ことで、既存木造住宅の耐震化を促進し、震災時における人命の安全を確保することが目的となる。

実施されている内容は、①居住者による簡易耐震診断の実施、②わが家の専門家の無料耐震診断・相談の実施、③木造住宅耐震補強助成制度の創設、④木造住宅建替助成制度の創設、⑤木造住宅建替支援制度「しずおか住宅ローン優遇制度」の創設、⑥簡便で低コストの耐震措置のコンペ(「地震から生命を守る」2001しずおか技術コン クール)の実施と様々な取り組みを行っている。

現時点での成果は以下のとおりと十分ではなく、さらなる推進が必要だ。
①居住者による簡易耐震診断の実施⇒69千件
②わが家の専門家の無料耐震診断・相談の実施⇒46千件(目標20万戸)
③木造住宅耐震補強助成制度利用⇒5.7千件(目標1万戸)
④木造住宅建替助成制度利用⇒2006年度から実施(2006年予定45戸)
⑤木造住宅建替支援制度「しずおか住宅ローン優遇制度」の利用⇒2006年度から実施
上記の内容は静岡県ホームページに詳細が公表されている。
http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/chosa/toukai0/toukai0gai.htm

中央防災会議の被害想定では個人住宅の半壊、一部損壊の数字は公表されていない。静岡県が予測した県単体の数字は全壊、半壊、一部損壊も含めた数字が公表されている。それが以下の内容だ。総務省住宅土地統計(2003年)の静岡県の棟数127万棟と総数は一致していない。国、地方自治体でも様々な推定された数字が存在している。おおよその被害像をつかむためには参考となるが、正確な建物の棟数が把握できていないことに疑問を持つ。法的には建物は表示登記の義務があり、所在地、構造、種別が登記されており把握は可能である。未登記の建物が存在する場合にはそれは建築基準法同様に違法建築物に分類され、即刻取り壊し命令等の行政指導を行政は行うべきではないだろうか。話はそれてしまったが、違法建築物が防災の阻害になるケースもあり被害を拡大する要素もあることから、行政は防災をすすめる上で徹底的に違反建築物を排除する努力が必要だ。

<静岡県第三次被害想定より>
総建物棟数 1,528,349棟(98.1.1基準)
想定建物被害合計(予知なし・冬18時)
大破192,450棟(12.6%)
中破294,846棟(19.3%)
一部損壊(床上浸水)279,433棟(18.3%)
軽微被害(床下浸水)6,945棟(0.5%)

合計すると約70万棟を超える住宅に被害が及ぶ計算となり、静岡県全体の半数近くの住宅に被害が及ぶことになる。

現行の耐震化の支援策だけでなく、住宅・建築産業界への働きかけが必要かもしれない。これまではどちらかというと住民個人への促進策ばかりで、住宅・建築産業界への働きかけはみられない。耐震化にむけた技術支援、資金支援により、耐震化の費用を軽減させることも一案だ。耐震化を含む地域防災に積極的な企業への税優遇も一案だ。住民個人ひとりひとりの生活状況により建替え、耐震化が進まないのが現状であるが、東京都のように行政の強権を考えることが、地域住民全体の利益につながる可能性もあるのではないだろうか。(続く)