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M女史とは誰か?(PART 1)

2019-12-28 11:15:25 | 文芸・文学
 

M女史とは誰か?(PART 1)

 



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デンマンさん。。。、 今日はM女史のお話ですか?


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そうです。。。 いけませんか?

でも、M女史というのは、いったいどなたのことですか? まさかトップに出てきたマリリン・モンローのことではないでしょうねぇ~。。。?

小百合さんはマリリン・モンローが嫌いなのですかァ~。。。

別に、嫌いというわけではありませんけれど、M女史と呼ばれるにはイマイチだと思いますわァ~。。。

「マリリン・モンロー女史」と呼ぶにはふさわしくない人物だ、と小百合さんは言うのですか?

だってぇ~、普通、「女史」と呼ぶには、ノーベル文学賞をもらった人とか、芥川賞や直木賞をもらった女流作家とか。。。 それなりに、文学や社会に貢献した女性に対して用いる呼称でしょう?

あれっ。。。 マリリン・モンローは、ケネディー大統領の誕生日に呼ばれてセクシーな歌を歌ったのですよ。。。

 


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でも、大統領の誕生日のために歌を歌っても社会貢献にはならないと思いますわァ~。。。



つまり、歌手とか女優に対して「女史」を付けて呼ぶのはふさわしくないと言うのですねぇ~。。。

呼びたい人は呼んでもいいですけれど、これまでに歌手とか女優に対して「女史」を付けて呼んだのを聞いたことがありませんわァ~。。。 それに GOOGLEで検索しても次のように書いてありますわ。。。

 


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社会的地位・名声のある女性の名に添える敬語 なのですわ。。。 今日は、何が何でも歌手とか女優に対しても 「女史」を付けて呼ぼうというお話ですか?



いや。。。 そうではありません。。。 実は、小百合さんが佐野市の図書館で廃棄されて、「どうそお持ちください」という本の中から手に取った本が向田邦子の『眠る盃』なのですよ。。。 覚えてますかァ?

もちろん、覚えていますわ。。。 デンマンさんが読みたいというので軽井沢の別荘にやって来たときに貸したのですわ。。。

その本を読んでいたら次の箇所に出くわしたのですよ。。。


能州の景

 


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父は石川県七尾の産である。(略)
私は東京生まれの東京育ちだが、いつの日か父の故郷でありわが本籍地でもある能登を訪ねたいと思いながら、生来の横着で、実現したのは、テレビの台本を書く仕事もどうにか格好がついた30代の終わりであった。

わが能登めぐりには、同業のM女史・S女史も同行されることになった。
感激した父は入念なスケジュールを立ててくれた。(略)

第一夜は金沢泊りである。
凝った普請の旅館であった。
結構な夕食を終え、三つの布団をくっつけて、中年女三人が夜を徹してテレビ界を憂い、来し方行く末を語り合おうという段取りである。

私は父のことを話したかった。
逆境から身を立て名を挙げた波瀾の人生を、子供の頃から聞かされた能登の吹雪の烈しさや鱈のおいしさをまぜて語りたかった。
日頃敬愛する両女史も感動してくれるにちがいない。

ところが、電灯を暗くしようというときになって、鴨居に特大のゴキブリが這っているのに気がついた。

 

とたんにM女史が、

「それ!」と一声。

ぱっと浴衣を脱ぎ捨てた。

 


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紫色の半シュミーズと黄色の毛糸長下ばきに包まれた豊満な肢体が仁王立ちになったーーーと思った瞬間、女史は二人のあっけにとられた視線を感じられたか、

「アッ!」

と、叫んでガバと布団の上にうつぶされた。

だが、再び思いかえされたか、浴衣を羽織ると、ゴキブリに踊りかかり目にも留まらぬ早業で退治されたのである。

 


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M女史は大先輩である。
お人柄も大好きだ。
おまけに見てはならぬ姿まで拝見してしまったのである。

笑い転げては失礼にあたる。
お礼を申し上げ、電灯を暗くして天井を仰ぎ、目尻から流れる涙と、こんにゃくの如く打ち震えるおなかをさすって辛抱した。

それにしても不思議である。
私は蜘蛛の巣退治などには、おととしのブラウスを探して羽織るが、女史はなぜ浴衣を脱ぎ捨てられたのであろう。

彼女は男兄弟の末っ子で、火事だけんかだというときには、兄上たちはいつも裸で飛び出されたという。
名門の生まれで、兄上のなかには経済界で活躍されておいでの方もいる。

「その癖が出たのかな」
女史は小さな声でそう言われた。

 

(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)




47-48ページ 『眠る盃』
著者: 向田邦子
2016年9月15日 第2刷発行
発行所: 株式会社 講談社




つまり、向田邦子さんが書いた上のエピソードの中の M女史 が誰なのか? 。。。 そのことが気になって わざわざ私を呼び出したのですか?



そうです。。。 いけませんか? 小百合さんならば、きっと判るだろうと思ったわけですよ。。。

どうして私ならば、判ると思ったのですか?

だってぇ~、小百合さんも上の本を読んだことだし、そもそも上の本を貸してくれたのは小百合さんなのですよ。。。

でも、私は女流作家にお友達はいませんわァ~。。。 いたとしても、世代が違いますわ。。。 向田さんの大先輩なら、私にとってはおばあさんの世代ですわァ~。。。

でも、小百合さんは軽井沢に別荘を持っているのですよ。。。 上の本によると M女史名門の生まれで、兄上のなかには経済界で活躍されておいでの方もいる のですよ。。。 だとしたら、M女史が軽井沢に別荘を持っていたとしても不思議じゃない。。。 だとすれば、M女史は もしかすると、小百合さんの別荘の隣人だったかもしれないではありませんか!

今申し上げたように、私には女流作家のお友達はいません。。。

だけど、M女史の子供か孫か? 小百合さんは軽井沢で知り合いになったかもしれないじゃありませんか!

小さな村であれば、そういう可能性もあるかもしれませんけれど、軽井沢に別荘を持っている方は 少なくとも10万人ぐらいは居ますわァ~。。。 私がM女史や、あるいは子供たちや孫と知り合いになる可能性は 宝くじに当たるぐらいの確率ですわァ。。。 で、S女史は誰だか判ったのですか?

それは、すぐに判りました。。。 上の本の中にもたびたび登場する向田さんの親友の澤地久枝・女史ですよ。。。

だったら、澤地さんに電話して訊けばいいではありませんか!

あのねぇ~、澤地さんは今年、89歳ですよ。。。 耳が遠くなっているかもしれないし、記憶があやふやになっているかもしれないのですよ。。。 そういう人に対して「カナダのバンクーバーに住んでいるデンマンと申しますが、突然で失礼します。。。 昔、向田邦子さんと金沢で一泊した時に、当時一緒に居たM女史が紫色の半シュミーズと黄色の毛糸長下ばきに包まれた豊満な肢体で ゴキブリ退治をしましたよね。。。 そのM女史が誰なのか知りたいのですが、教えていただけないでしょうか?」。。。なんて訊けるわけないでしょう!?

どうしてですかァ~? デンマンさんならば、恥も外聞もなく、人の迷惑など考えずに訊けるはずでしょう!?

やだなああああァ~。。。 僕は、あの「現実主義者」と名乗る“馬鹿の見本”と違いますよゥ!

 


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『現実主義者 馬鹿の見本』

 



この男は人の迷惑など考えずに、ズケズケと嫌がらせのコメントを書くほどだから、無作法に89歳の澤地さんに電話することなど屁とも思わないでしょう! でもねぇ~、僕はこの男に対して助言するほどだから、同じような真似は死んでもできないのですよ。。。
 


それはないでしょう。。。 もしデンマンさんに それだけの思慮深さがあれば、コラージュして紫色の半シュミーズと黄色の毛糸長下ばきに包まれた豊満な肢体のM女史の写真など貼り出さないはずですわァ~。。。

 


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あのねぇ~。。。 向田邦子さんは、このM女史が、一旦は「アッ!」と、叫んでガバと布団の上にうつぶされたけれど、再び思いかえされて、浴衣を羽織ると、ゴキブリに踊りかかり目にも留まらぬ早業で退治したのですよ。。。 それを見た向田さんは笑い転げては失礼にあたるので、じっとこらえたけれど、電灯を暗くして寝床に入ったときには、笑いをこらえがたく、目尻から流れる涙と、こんにゃくの如く打ち震えるおなかをさすって辛抱したのですよ。。。 おそらく、上のエピソードを読んだら、誰もが、いったいM女史とは誰なのか?。。。 絶対に知りたくなりますよ! 小百合さんだって、知りたいでしょう?



もちろん、知っている方がおられたら、ぜひ伺いたいと思いますわァ~。。。

。。。でしょう? だから、こうして僕はM女史を取り上げる気になったわけです。。。

でも、私は知りませんわ。。。 デンマンさんは、こうして記事にするからには、自分で調べたのでしょう?

もちろんですよ。。。 でも、大体判ったのだけれど、イマイチ確信が持てないのです。。。

。。。で、調べた結果を聞かせてくださいなァ~。。。

知りたいですか?

ここまでの話を聞いたら、M女史が誰なのか? 知りたいですわ。。。

でもねぇ~、絶対にこの人だとは決められないのですよ。。。

どうしてですか?

ぴったりと この人だという人は見つからなかった。。。

だから、デンマンさんが調べて この人だと思ったのは誰なのですか?

やっぱり、小百合さんも知りたい?

じらさないで教えてくださいな。。。

森茉莉・女史ですよ。。。


森茉莉

 


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写真はパリ在住時(右から2人目)、当時の夫(左から2人目)と

 

1903年(明治36年)1月7日 - 1987年(昭和62年)6月6日

 

森 茉莉(もり まり)は、日本の小説家、エッセイスト。
翻訳も行っている。
東京市本郷区駒込千駄木町出身。

文豪森鷗外と、その2人目の妻志げの長女である。

幻想的で優雅な世界を表現することに優れており、主な著作には『父の帽子』『恋人たちの森』『甘い蜜の部屋』などがある。
また、独特の感性と耽美的な文体を持つエッセイストとして、晩年まで活躍した。

森家の長女として生まれた茉莉は、鷗外を始め非常に多くの人に囲まれ、かわいがられて育った。
特に鷗外の溺愛ぶりは有名で、彼女は16歳まで鷗外の膝の上に座っていたという。

東京女子高等師範学校附属小学校(現・お茶の水女子大学附属小学校)に入学したが、10歳の時に教師と衝突して中退し、仏英和尋常小学校(現・白百合学園小学校)に転校。
1919年3月、仏英和高等女学校(現・白百合学園高等学校)卒業。同年11月、鷗外の紹介でフランス文学者の山田珠樹と結婚する。
1922年に1年間渡仏してパリに住む。

この旅の途中で、日本で最愛の父が死去した。
このことが、後年の鷗外像を極端に美化する一因ともなる。

1957年、54歳で鷗外に関するエッセイを集大成した『父の帽子』を発表、第5回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞する。
その後、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花文学賞受賞)・『恋人たちの森』(田村俊子賞受賞)などの長短編小説群を発表。
三島由紀夫などから激賞され、一躍作家の仲間入りをする。

その後も、父・鷗外の話を中心に多くのエッセイを執筆し、全集も出版されている。
『贅沢貧乏』などでは、独自の美学を表現する。

その他では、1979年から1985年に心臓発作で入院して連載打ち切りになるまで『週刊新潮』誌上で連載された『ドッキリチャンネル』がある。
独特の審美眼と華麗な言語表現により、手放しの賞賛と忌憚のない意見を織り交ぜて、テレビ番組やタレントを批評した。

「子どもがそのまま大きくなったような人」と評された茉莉の生活能力の無さは自他共に認めたところだったが、唯一料理だけはかなりの腕前と自負していた(実際に茉莉の料理を口にした人は多くがその味を褒めている)。

作るだけでなく食べることも大好きで、小説で好んで食事のシーンを書いたほか、エッセイで得意料理の拵え方やお気に入りの食べ物についての記述箇所が多くある。
後年、森茉莉を愛する人々の手によって、エッセイから食べ物に関する文章を抜き出した選集や、茉莉の作った料理を再現した本が出版された。

1987年、通いの家政婦が彼女が世田谷区経堂のアパートの自室で倒れているのを発見したが、すでに心不全により死去していた。
85歳没。死後2日が経過しており、いわゆる孤独死であった。




出典: 「森茉莉」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』




向田さんの大先輩に当たる女流作家をすべて調べたつもりなのだけれど、ピッタリ当てはまる人はいなかったのですよ。。。 その中で森茉莉さんは名門の生まれだということは間違いない。。。 それに料理が好きだという点で向田さんと共通の趣味がある。。。 



私も名前だけは聞いたことがありますわ。。。 「子どもがそのまま大きくなったような人」という点で、確かに紫色の半シュミーズと黄色の毛糸長下ばきに包まれた豊満な肢体でゴキブリを退治するかもしれませんわねぇ~。。。

。。。でしょう?

でも、写真で見る限り「豊満な肢体」をお持ちだったとは思えませんわァ。。。

あのねぇ~、上の写真は森茉莉さんが19歳の時の写真ですよ。。。 金沢で一緒に泊まった時の森さんは60代の大年増なのですよ。。。 旨い物をたくさん食べて豊満な肢体だったのですよ。。。



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 (すぐ下のページへ続く)







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