神の手は力ある働きをする。

 主の右の手は高く上げられ、
 主の右の手は力ある働きをする。

(詩篇118編16節より)

パンズ・ラビリンス。

2023年02月23日 | キリスト教


・ストーリー
<むかしむかし、地底の世界に病気も苦しみもない王国がありました。その国には美しい王女様がありました。王女様はそよ風と日の光、そして青い空をいつも夢見ていました。ある日、王女様はお城をこっそり抜け出して人間の世界へ行きました。ところが明るい太陽の光を浴びたとたん、彼女は自分が誰なのか、どこから来たのかを忘れてしまったのです。地底の王国の王女様はその時から寒さや痛みや病の苦しみを感じるようになり、ついには死んでしまいました。姫を亡くした王様は悲しみましたが、いつか王女様の魂が戻ってくる事を知っていました。そしてその日をいつまでも、いつまでも待っているのでした……>

 内戦で仕立て屋の父親を亡くした少女オフェリア。彼女は妊娠中の母親と共に、再婚相手であり独裁政権陸軍のビダル大尉に引き取られ、森の中にある軍の砦に移り住む。レジスタンス掃討を指揮する冷酷なビダルは、生まれくる自分の子だけを気にかけ、母親も夫の意向ばかりをうかがうため、オフェリアは顧みられず、孤独な日々を過ごす。砦での暮らしは彼女にとって重苦しいものとなっていき、本の中にある妖精やおとぎ話の世界へ引き込まれていく。オフェリアの相手をしてくれるのは砦の家政婦であるメルセデスだけだが、彼女の弟はレジスタンス運動に身を投じており、メルセデス自身もビダル大尉の目を盗んでこれに協力していた。

 ある夜のこと、オフェリアの前に妖精が現れ、森の奥にある迷宮へ導く。そこには迷宮の番人パンが待っており、彼女を一目見るなり「あなたこそは地底の王国の姫君だ」と告げる。パンはこの迷宮が地底の王国の入り口である事、そして姫君である事を確かめるためには3つの試練を果たさなければいけない事を伝える。こうしてオフェリアはパンに与えられた3つの試練に挑むことになった。

 オフェリアが幻想の世界を訪れている間にも、現実ではビダル大尉による容赦のない掃討が繰り広げられており、それは彼女の幻想と現実の世界の双方を侵食し、暗い影を落していく。

(以上、ウィキぺディア様よりm(_ _)m)


 でるとろ監督の有名作と思うのですが、今ごろになってようやく見ました♪(^^)

 わたし、『パンズ・ラビリンス』よりも先に、『シェイプ・ザ・ウォーター』のほうを結構前に見てて、確かその次に『パシフィック・リム』を、そんでこちらも割と最近『パシフィック・リム:アップライジング』を見たのでした。。。

『パシフィック・リム』は面白い作品とは思うのですが、日本のアニメや漫画をパクリまくってる印象が強く、「……………。」といったような気持ちになり、2の『アップライジング』のほうは、1よりも内容的にもその他色々パワーアップしてて面白いとはいえ、何か特に自分的に感想の言葉とかあんまし出てこない感じかもしれません(というか、それだったら『シン・ウルトラマン』とか『シン・ゴジラ』の感想のほうが、まだ書けそうなこと色々ある・笑)。

 そんで、『パンズ・ラビリンス』、上記に上げたでるとろ監督系作品の中では、個人的に一番面白くて、素直に「好き!」と思える作品だったんですよね

『シェイプ・ザ・ウォーター』もそうですが、半神半獣のパン、あるいは人魚というか半魚どんというかマーマンといったクリーチャー(?)の造形がリアルですごいなあって思うわけですそんで、自分的一番のお気に入りは、手のひらに目玉を埋め込んで「ハァ~イ!」とばかり周囲を見てくるヤヴァいアイツでしたww

 ハァハァ。ダメだ……ちゃんと順番に話を進めるとですね、わたし、『パンズ・ラビリンス』っていう映画があるっていうのを知ったのが実はかなり前で、ラジオで大好きなDJさんが「おススメの映画」として紹介しているのを聞いたからだったり

 それでその時、「まだスペイン内戦後の混乱の中、主人公の女の子が現実の厳しさから逃避するため、だんだんあやしい世界へ入りこんでいく……」みたいに紹介されてたのを覚えてたもんで、主人公のオフェリアが入り込んでいく妖精の世界っていうのが、「ええと、それでいくとこれは結局オフェリアちゃんの妄想の世界ってこと?」と最初から思ってしまったわけです(いえ、映画紹介したりする時は、公共の電波の場合注意しなきゃダメな気がする^^;)。

 もちろん、見る方によっては、オフェリアの体験したことはすべて現実の厳しさから逃れるための妄想だった――と判断する方も、もしかしたら存在するかもしれない。でも、映画見た多くの方が、あの妖精の世界は本当にあって、彼女もまた死後にそのような世界へ運ばれていったのだ……そう思うのではないでしょうか

 と言ってもわたし、「そんなふうに妖精の世界を信じることの出来ない奴ぁ人非人だ!」と思っているわけでもなく、でるとろ監督はたぶん「どちらとも取れる演出」をしてるとは思うんですよね。というのも最後、オフェリア自身が「純粋無垢な血」を流したことで、天国のような場所へと魂が運ばれていくわけですけど……何分時代設定が1944年のスペインで、作中にノルマンディ上陸作戦のことがちらっと出てくるみたいに、夜明け前の、もっとも闇の濃い時代だったのかなって思ったりするので。。。

 オフェリア自身、おそろしい怪物のような義理のお父さんに、ほとんど無意味としか思われない形で発砲され、死んでしまいます。でもこの時代、戦争で毎日ほとんど無意味にしか思えない形で死んでいった兵士は数え切れほどいて、その無意味に流された血=「純粋無垢な血」っていうことなのかなって思ったりしました。

 つまり、戦後世代のわたしからしてみると、第一次世界大戦にしても第二次世界大戦にしても「人間はなんでこんな愚かな恐ろしいことをしたのだろうか」としか思えないわけですが、戦死者の数やその死に方について思ってみただけでも――「こんなことは絶対許されない」、「あっていいはずがない」としか思えないことが戦時中は数えきれないほどたくさんあって。

 でも、それらの人々の魂がすべて、「(純粋無垢な血を流したから)今は天国にいて、神さまの元で安らいでいる」ということを、「あなたは信じることが出来ますか?」という、あのラストには個人的に、そうした重い問いかけがあるように感じました(だからこそ、現実的にはただ無意味に死んだようにしか見えず、魂の世界ではオフェリアが父なる神と、その隣に座す聖母マリア(お母さんのカルメン)と再会しているということなのだと思ったんですよね)。

 スペインは確かカトリックだったと思うのですが、この世界で全人類のためにもっとも純粋無垢な血を流したのは誰かと問われたとすれば、それは当然キリスト教徒にとってはイエス・キリストなわけです。だから、戦争中に死んでいった人々の流した血は決して無意味ということはなく、それはイエス・キリストが十字架上で我々のために苦しみ悶えて流してくださった血に連なるものであり、殉教者たちの流した血と同じものである……ゆえに、これらの人々はその純粋無垢なる血によって今は天国で平安に神さまの元憩っているのだ――ということを、わたしがもし戦争中に生きていて、食うや食わずやの苦しい生活を送っていたら、信じることはまず難しかっただろうと思うわけです。

 右を見ても死体の山、左を見ても死体の山……そんなものを目の当たりにして、それでも自分はどうにか生き延びたといったことであれば、神を否定したまま死んだとしてもおかしくないと思う、というか。こうした文脈からこのお話を続けると長くなるので映画の内容のほうに戻りますと、オフェリアのお母さんが再婚した父親というのが、人間の姿をした悪魔にしか思えない奴なわけです

 こういう、人を容赦なく拷問できるような、血も涙もない人間というのが確かにいて、わざわざ悪魔に会うのに地獄まで探しにいく必要はない……みたいに描かれているのは、まったく恐ろしい限りと思います。また、このオフェリアの義父のビダル大尉って、『シェイプ・ザ・ウォーター』に出てくる、こちらも冷酷で歪んだ性格の軍人ストリックランドにキャラクター造形がそっくりと思いました。そして、『シェイプ・ザ・ウォーター』のほうでは、人間の姿はしているけれども化物のストリックランドと、見た目は一般的にいった場合怪物(でも可愛い)でも、心が優しく繊細な半魚どんの対比が自分的に秀逸と思うんですよね。そしてイライザは最初からこの半魚どんのほうに惹かれており、ストリックランドにはただひたすら嫌悪感しか覚えてないっていうところが、『パンズ~』を見ていてあらためて面白いと感じたり。

 たぶん、映画見た多くの方が最初から最後近くまでずっと思うことというのがあって、それが半神半獣のパンが、「いい奴なのか悪い奴なのか」ということで、見た目はとりあえずどっか悪魔チックだし、ギリシャ神話の中でもなんかいかがわしい奴だし……ということで、最後のあたりはほんと、ギリギリスレスレのところで「やっぱコイツ、悪いほうの奴だったんだ!」と思いきや……というところで、物語のほうは終わるという(^^;)

 見た方によって解釈や感じること、思うところは違うと思うのですが、オフェリアが妖精の世界に夢中になっていたように、見てるわたしも一時的に映画の中に思考が同化してしまったようにすら感じる、本当に面白い作品だったと思います♪

 それではまた~!!






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