読む日々

テーマばらばらの読書日記

負けんとき上下巻

2012-12-27 | 
玉岡かおる「負けんとき」

近江兄弟社の創設者(これ読むと、そんな一言では表せませんが)、ウィリアム メレル ヴォリーズの妻で、華族の出の一柳満喜子の生涯。

関西人ではないせいか、近江兄弟社の事もよくわからない私でしたので、まったく何の先入観を持たずに読みました。

華族という身分の中で苦しみ、母が望んだ男女平等を自然と自分自身も求め、深い思いを抱き合った乳兄弟との身分違いによる別れを乗り越えるための渡米、等、様々な体験の末に、兄の婿入り先である、大同生命創業の広岡家でのメレルとの出会い

乳兄弟とは乗り越えられなかった身分を、メレルとは強靭な意思で乗り越えての結婚。

メレルが自分のホームと定めた、知己のない近江八幡で、教育者として花開いていく満喜子。

キリスト教に帰依しながらも、日本古来の八百万神も否定しない、日本人らしさと、何をも受け入れる柔軟さ、カッコイイ。

親子愛、夫婦愛、友情、人間愛、これでもか、と、詰まっていて泣けます。

乳兄弟との悲恋も泣けたけど、戦後、メレルがアメリカに対し、天皇の存在を肯定し、象徴としての立場を確立できた影にメレルの証言があったとは驚きでした。

前人未到の道を行く苦悩と、それを乗り越えて初めて掴める 何か の重さ。

いろいろ考えさせられかつ、淡々と語られるなかでの、胸に響く重い感動で涙が止まりませんでした。

満足度300