読む日々

テーマばらばらの読書日記

喋々喃々

2013-01-31 | 
小川 糸「喋々喃々」

東京の谷中で、アンティークのきもの店を1人で切り盛りする主人公 栞。

飛び込みで来た男性客、春一郎と恋に落ちるが、相手は妻子あり。

それでも、すぐに深い関係にはならずに、少しずつ少しずつ、美味しいものを食べながら距離を縮めていく様子。

栞は、母が若い男の子供を孕んでしまったことで両親が離婚し、一家崩壊に至った苦い過去が。

栞と春一郎の恋に、栞の家族関係の物語などが語れる。


…同じ「道ならぬ恋」を扱いながら、おととい読み終えた本との、この違いはなんだ?
栞と春一郎は本当にお互いがお互いを必要になっていってしまっていく様子が丁寧にかかれてます。

悩んで、一度はサヨナラもします。
心のうちの切なさの表現がすごくいい。

たとえば、彼と会ってご飯食べて散歩して、じゃあ、と別れたあと。

「今は先のことなど何一つ考えられない。このままでいいはずがないけれども、もう、前へも後ろへも、右にも左にも、身動きがとれない」とか、そのどうにもならない閉塞感を現す言葉にすんなり感情移入できてしまう。

春一郎の妻子も、栞も、不幸にならずにずっと一緒にいれたらいいのにな、って応援したくなる。

栞が、ひどい風邪を引き寝込んだとき、春一郎が訪ねてきて看病してくれる場面で、栞は奥さんにではなく、娘さんに嫉妬します。

自分も、春一郎さんの子供に生まれたかった、って。
で一旦お別れを決意。その気持ちが、なんだろう、真面目というかなんというか。



この作家さんの書く本は、いやな人がいないなぁ。

きっとご本人も素敵な方なんだろうな。

満足度120