大島真寿美「ピエタ」
18世紀のヴェネツィアが舞台。
作曲家ヴィヴァルディが亡くなる知らせが、孤児を養育する、ピエタ慈善院で事務を執る、ヴィヴァルディの教え子でもある40代半ばのエミーリアにもたらされるところから始まる、結構壮大な物語。
ピエタで育ったエミーリアと、同じく、そこで天才演奏家として騒がれたアンナ・マーリア、そして貴族の娘でピエタに音楽を習いに来ていたヴェロニカが序盤の核。ヴェロニカが昔、ヴァイオリンが下手な自分に、ヴィヴァルディが特別に書いてくれた楽譜があり、その裏に詩を書いたことがあるが、その楽譜を見つけて欲しい、とエミーリアに頼み、その楽譜探しから、ヴィヴァルディの人生が掘り起こされる。
ヴィヴァルディが親しくしていたコルディジャーナのクラウディア。
ヴィヴァルディの妹たち。
ヴィヴァルディが見込んだ歌手とその妹。
昔、エミーリアとの縁談が持ち上がったヴェロニカの兄。その妻。娘。
ゴンドラを漕ぐロドビーゴ。
ヴィヴァルディやピエタに関わった人が、いろんな人生を生き、ある意味借りを返していくお話。
ヴェロニカの楽譜の意外な在りかが終わりの方でわかるけど、もう号泣でした。
1つの時代に1人の芸術家を囲んで生きた人々の回顧録のよう。
今、この年齢になったからこその受け止め方ができたかな、と思いました。
エミーリアと、おそらくヴェロニカの兄だったであろう、カーニバルでの仮面の男との恋もアナザーストーリーです。
その恋人についてクラウディアの語る「あなたには顔や名前がなくったって、その人のことがよくわかっていた。あなたはその人の魂そのものに触れていたのですもの。あなたはその方の魂に触れて、その温かみや、強さ、美しさ、そういうものをちゃんとわかってあげられて、そのうえ、強く愛せたんですもの。」
ってセリフにハッとさせられました。そういうの、ある意味うらやましいな、と。
満足度200