ハブ ア ナイス doi!

いつまで続くのかコロナとの戦い。
全て解放されて、もっと、もっと
心から楽しまないとねえ。

山猫裁判長

2009年05月23日 22時18分42秒 | 最近の出来事

「あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。とびどぐもたないでください。
       やま猫 拝    」

山猫裁判長から、こんなはがきを
もらった、かねた一郎君はよろこんで
家中をとんだりはねたりしたり、
山猫のにゃあとした顔を
思い浮かべて、よるも眠れなかったそうです。

宮沢賢治の童話集、

「注文の多い料理店」

の冒頭に置かれた
「どんぐりと山猫」の一節です。

このはがきをもらった
一郎君は、喜び勇んで
どんぐりたちのもめごとを
解決すべく森の中に分け入って行く
わけです。

5月21日から始まった
裁判員制度のことを耳にするたびに
わしの頭には
この童話のことが浮かんでくるのです。

知り合いに、
裁判員の候補者に選ばれた人がいて
その人が、うれしそうに
通知をみせてくれたことがあります。

「受けるの?」
って聞いたら
「そりゃあ、もう、こんな経験を
逃す手はないっしょ」と
実にうれしそうでした。
「どんぐりと山猫」のことは
そのときから、浮かんでいて
「かねた君みたいやな」って
言ってやったら
キョトンとしていたっけ。

山猫の裁判の内容は
大勢のどんぐりたちが
「頭の尖ったどんぐりが一番えらい」
「頭の丸いのがえらいんだ」
「大きいのが一番えらい」
「押しっこの一番強いのがえらい」と
みんな口々にいって
収拾がつかないのに
困り果てた山猫が
かねた一郎君に
助けを求めたものでした。

この裁判、かねた君のある
提案で、一気にかたがついてしまうという
ストーリーなんですが
人間をどんぐりになぞらえて
人間のおろかさを
描いていると
知ったかぶりして書くのも
考えすぎで
おろかだと思わせるほど
見事にファンタジックな作品で
大好きなんです。

今の司法制度では
裁判官は、膨大な法令と照らし、
これまた膨大な判例に沿って
判決をくだしていくわけですよね。
これだと、客観的な要素が大で
人が人を裁くということの
重圧を軽減できるでしょうが、
裁判員は、やはり
主観的な要素を求められる分
しんどい面もあるんやないかなあ。

もしわしが裁判員になったら
かねた君みたいな
大岡裁きはできないかと、
そんなことばっかり
考えてしまいそうじゃな。

そのときは、是非
裁判所からの呼び出しには
冒頭の一節を書いといてほしいもんだ。