今日は、今年で新調15年を迎えた
わが村のだんじりの
ブレーキの具合を調整するブレーキテストであった。
村、と言ってるのも
数あるだんじりの中でも、
ひとつの町名を北と南に分けて
旧字(あざ)名を冠している
数少ないだんじりのひとつであるから、
だんじりのことを言うときには、
「村」と呼んでいる。
そのわが村は宮本であるので、
東の端に氏神様の神社がある。
その神社には一般道をそれて、
私道である100m程度の参道を入っていくことになる。
その参道でだんじりを引っ張って、
ブレーキの利き具合を確かめるのがブレーキテストだ。
一般道に出るにはたとえわずかでも、
道路使用許可が必要となるため
私道の中で行っている。
毎年祭の前に必ず行っているこの作業は、
一見いちびって遊んでいるように見えて、
実はとても重要なのだ。
毎年卒団するものと、
入団するものがある青年団では、
数が少ないものだから
実際に引っ張る力加減が毎年変わる。
そのためにも本番前に
曳き綱の感覚を植え付けさせることができる。
後ろ梃子も緞子のポジションが
少しずつ変わるので、
息を合わせる作業の最終確認もできる。
前梃子、大工方も同様に
本番前の最後の打ち合わせ作業となる。
駒まわりのセッティングも微妙だしね。
それを確かめることもできる。
もちろん、一番の目的である
ブレーキの締め具合も
曳手の力にあわせて
ネジひと回し分間隔で微調整をする。
こういった作業はまるで
シーズン始めのトライアスロンバイクの調整のようだ。
ネジのゆるみ、がたつきはないか。
スポークの張りに狂いはないか。
ブレーキパッドのクリアランスは左右均等か。
チェーンは外れそうになっていないか。
ワイヤーの張り具合で変わる
ディレーラーの動きは正常か。
サドルの高さは今年の力量に合っているか、等々。
冬のマラソンシーズンには
全くバイクにまたがることがなかったdoironの場合は、
こういう作業は欠かせなかった。
年中乗っていれば、
日々のメンテナンスで十分なんだけどね。
だんじりもトライアスロンも
大げさに言えば命に係わるイベントである。
事前の調整は、綿密にやっておくに越したことはない。
doironが所属する村の世話人という団体は、
もう直接だんじりの曳行に携わることはない。
本番では交通整理、花の管理、
他町との交渉が主な仕事だ。
ブレーキテストの時には、
参道から出てきたところの一般道で交通整理をし、
作業を見守る役割なのだが、
今年のdoironは少し違う。
総括責任者であることと、
ブレーキ経験者として
新しいブレーキ担当者とともに
だんじりに乗って
具合を確かめることもしないといけない。
ブレーキ担当者には、
ここから経験してもらう必要もあることだしね。
参道を行ったり来たりして、
調整を繰り返し、
ブレーキパッドの滑りはないか、
方ぎきはないか等を確認しつつ、
担当者も年に一度の祭りの感覚を
思い出したところで終了。
こうして村中が一つになって作業をすることで、
祭り気分はいやがうえにも盛り上がってくるというものである。
あとは、今年も事故のない
いい祭りができることを祈るばかりだ。
何せ、何度も言うけど総括責任者なのだ。
ひとたび重大な事故が起これば、
警察で泊り覚悟の取り調べを受け、
重大な過失があれば取り調べ後
書類送検、起訴にいたることになる。
なので前科が付けばやめなければいけない
以前の職場にいた頃にはしにくい役回りというわけだ。
今はフリーライターという、
いわば自由業であるため
その辺は全く心配がないので、
いささか気が楽というものである。
とはいえ、事故はやっぱりNGだ。
しっかり気を引き締めて、
関係者には携わっていただきたい
と思っている。
その後は世話人詰所の設営だ。
村の人間の中には
電気工事屋さんもいれば工務店の人間もいる。
敷物を提供してくれる毛布屋さん
驚くような力持ちもいる。
もちろん、土地も無償で提供してくれる。
村の人間総出で事に当たっているわけだから
こんな場合に人材に事欠くことはない。
そうしてできた詰所に
祭が終わるまで、毎夜集うのである。
バカ騒ぎやいたずらをしても
そこに信頼関係があるからこそ
友達というものだ。
いや、友達だからこそ
何でも許しあえる仲間なのである。
そうしてうだうだと毎日を過ごし
来週日曜日はいよいよ試験曳を迎えることになる。