ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「無影燈」〈上・下〉 渡辺 淳一  読了!

2015年08月05日 18時58分41秒 | 作家 わ行
「無影燈」〈上・下〉 集英社文庫 渡辺 淳一 (著)  2015.8.4読了 。

個人経営のオリエンタル病院で一勤務医として働く直江庸介。優秀な外科医でありながら、大学でのエリートの道をあっさり捨てて振り返らぬ、どこか影のある男だった。看護婦の倫子は、そんな直江に惹かれ、やがて深く愛するようになる。酒に溺れ、何人もの女性と関係を持ち続ける彼には、人には言えない秘密があった。孤高の医師と恋人との愛の物語を軸に病院内の人間模様を描いた傑作医療小説。
どこか孤高の影を引きずり、ニヒルで不可解な存在。彼と深い関係となった今も、志村倫子にとって、直江は捉えきれない男だった。相変わらず酒と女性に耽溺し、密かに麻薬を打っている気配もある。彼の秘密に気づき始めた倫子は、正月休みに旅に誘われ、二人で雪景色の北海道へと発つ。楽しい旅行になるはずが…。運命に翻弄されつつも生きる男と女。切ない愛の行方は!?医療小説上、不朽の名作。



医療小説というのは、あまり読まないジャンルなのだが、これはもう、直江医師というキャラクターにひかれて、物語にひきづりこまれた。
主人公の直江医師の影の部分が明らかになるにつれ、そこには、死の予感以外は存在しなくなる。
普通は、愛と死の物語となるところが、あまりに直江医師が圧倒的すぎて、最後はすべてが無に帰してしまう。
死とは無であり、直江医師も死んでしまえば無なのだろうか? なんかひきづられる小説だった…8点。