Domestic Violence という言葉、聴くようになって久しい。家庭内のストレス、家庭外のストレスを家族に向けて、暴力という手段で発散する行為だが、意外と身近にその種はあるように思う。
妻の髪を洗ってあげているとき、妻は、やれ顔に水が掛かる、頭頂部の洗いが足りない、濯ぎが不十分だ等々、体は動かないが、口だけは達者で文句を絶え間なく言ってくる。いちいち応答をしていても、限がないので、半分聞き流していると、ますます激しくなってくる。そんなとき、頭をこつんとやったら?という考えがふと頭をよぎる。これって、「暴力だよなぁ」と、思いとどまる。今でも、妻の頭の中には、私への不信感で一杯のようだ。それは、当を得ている部分も、全く濡れ衣の部分もある。しかし、多くは、自分の考えどおりに動かない私への不満だ。十年以上、離れて生活していて、私流の生活の仕方が身についているわけで、それを全部捨てて妻の生活の方法、リズムに合わせることは難しい。そこで妻の要求に、いちいちそれに応じていたら、限がないと受け流し、犯行ている私にも問題が多いことは分かっている。それにしても、単純に腹が立つわけだ。
最近、妻の体はますます動かなくなってきている。そこで、体を洗うのも私があるようになった。それが、また、洗う手順というか手際について、洗っているときに、いちいち文句を言ってくる。「何をもたもたしているの?」「手をコチョコチョ動かすので、大きく動かして!」「もう良いから流して!」等々、これも口が止まらない。まあ、自分でできない分、苛立ちは倍増して、激しさを増している。そんなとき、妻の肌に直に触りたい衝動が頭をよぎり、泡をつけた手でなぜてみた。「そこはもう洗ったから早く流して!」の一言で、すぐに中断させられる。内心、「何だよ。ご褒美はナシかよ!」、「ちょっとくらい、良いじゃん!」と思う。ただ、こんなことを続けていると、DVと言われかねないと思いとどまるが、私の欲求不満の種は尽きない。