DVについて問題視されるようになってもう大分経っているが、DV被害者が犠牲になる事件が後を絶たない。DV被害者保護の体制もまだ十分ではないと思う。なかなか解決に向かわない背景には、問題が男女関係にあることと、個人的な関係の問題であるということだと思う。
DV被害を訴えると、加害者に対して警察から指導が入るが、それも功を奏しているとはなかなか言いがたい。加害者に近づくなと注意しても、そのときは、多少、控えるであろうが、自己の問題についての認識が深まって改善されたというわけではない。むしろ、接触を控えている間に、加害者の心の中では、被害者に対する捻じ曲がった思いというものは増殖を続けていると言える。そのため、ほとぼりが醒めると、また接近を始めてしまう。これまでのように、「会ってはいけません、近づいてもいけません。」と言っていくら繰り返したところで、加害者は逆恨みをして、警察に対する恨みや憎しみを増すばかりであり、加害者が自己の問題性を認識したり、反省したりといったことには繋がらないように思う。却って、被害者に対して、「ちくりやがって」と憎悪を増すばかりである。注意するだけではなく、むしろ、加害者側の心に焦点を向け、加害者の悩みを引きだしていく働きかけが必要なのではないかと思う。そのためには、専門家を配置し、加害者にカウンセリングを行うなど、きめ細かく対応していくことが大切なように思う。まあ、一口に自己の問題性を気付かせるといっても、並大抵のことではないと思われ、相当の高いカウンセリング能力を持った人が時間を掛けて接していく必要があろう。
また、制度面でも現行のように接触を禁止する命令を出すばかりではなく、きちんとした治療・教育を行うことができるように変えていく必要があろう。まあ、法律を改正して、裁判所が治療・教育プログラムを受けるよう命じることは差して難しいことではないと思うが、しかし、本当に実効力のあるプログラムとそのためのスタッフをきちんと養成していかないと、これもまた、絵に描いた餅にしか過ぎず、何ら解決には至らないであろう。DVはこれほど大変で、根深い問題を抱えているということなのだろう。