ツクモグサと未踏峰を求めて・・・
ヌカビラ岳 (1807.9m)~北戸蔦別岳 (1912m)
~1967峰~ピパイロ岳 (1917m) 往復縦走
■ 山 行 日 2013年6月23日(日)~25日(火) 2泊3日
■ ル ー ト チロロ林道~二岐沢ルート
■ メ ン バ ー 夫婦登山 №11
■ 登 山 形 態 登山道or踏み跡 (登山靴)
■ 地 形 図 1/25000地形図 「千栄」「二岐岳」「ピパイロ岳」
■ 三角点・点名 ヌカビラ岳(三等三角点・点名「糖平岳(トウヒラダケ)」)
北戸蔦別岳(三角点・点名無し)
1967峰(三角点・点名無し、日高第3峰)
ピパイロ岳(三等三角点・点名「戸蔦別岳(トッタベツダケ)」)
■ コースタイム
<1日目>
登山口(二岐沢出合) 8:05--取水ダム 8:52~9:00休--二ノ沢出合 9:38~45休--
尾根取付き(1100付近) 12:10-(ロスタイム1時間)-ヌカビラ岳 16:11--北戸蔦別岳17:05
<2日目>
C1 6:10--1856ピーク 7:17~25休--1967峰 8:50~9:05--1911肩 10:05
ピパイロ岳 10:38~11:05--1911肩 11:30--1967峰 11:33~40休--
1856ピーク 13:45~50休--C1テン場 14:50
<3日目>
C2 6:05--ヌカビラ岳 6:40~7:15休--二ノ沢出合 8:35~55休--二岐沢出合 9:47
~55休--取水ダム 10:45~57-(山菜取り)-登山口 11:53
★ プロローグ・・・
二昔前は、日高第3峰と言われる「1967峰」の存在も登りたいと言う意欲も無いただ連れて行って
もらうから登る・・・だけの自分だった。
それが今は夫婦で北海道の山を中心に登り尽くそう・・なんて、妄想を考えるようになったのだから
人間の欲なんて果てしなく、取付いてしまった奥深い趣味の世界に終わりは無い・・とも思い込む始末だ。
このルートでの登行は、2001年8月に始めて登った時以来12年振りとなるが、未踏峰を意識し始めて
これまで3度ほど計画を組んで挑戦しようとした。しかし、いずれも天候に恵まれずすべてが登山口まで
行かずに、計画倒れで終わっていた。
何とか実現に向けて・・の意欲は欠かさずそのチャンスを狙っていた時、2010年6月HYMLの大先輩
函館のsakagさんと千歳のたかさんそして本州から法起坊見習さんの66歳トリオで登った記録を読んで
その素晴らしさに感動し、行くなら6月と決めていた。
残雪と花々の開花時期を一気に迎える日高の稜線、テントを担いで2泊の贅沢な山旅は憧れの山行
でもあった。出来れば七つ沼カールまで散歩と洒落込み余裕の下山・・なんて夢も見ていた。
登れるかどうか、天気は良いのか、水はあるのか、テン場は・・・と不安と期待は募る。
チーヤンは、全てが未踏、私は1967峰のみが未踏での挑戦だった。
カムイコザクラ、ツクモグサ、ヒダカミヤマノエンドウ、ヒダカハナシノブなどまだ見た事の無い花々との
出逢いも楽しみだった。色々な思いを持ってとうとう実行の時を迎えた。
<1日目> 【6月23日(日)】 快晴
★ 順調なスタート・・・
計画した3日間の天候は、ほぼ晴れ予報。
林道の状況、入林手順も事前に確認して出発する。
自宅から日高町を経由しチロロ林道へと進み国道から約17キロで登山口となる。
二岐沢出合には広い駐車スペースと簡易トイレが設置されていた。すでに6台の車が駐車していて
私の車でほぼ満車状態になってしまった。日曜日なので混み具合は予想していたが下山組がほとんど
だろうからテン場は大丈夫・・と自己解釈して登り始める。まずは順調なスタートと言えよう。
実質的な登山口となるチロロ川と支流二岐沢の出合にある駐車スペースと簡易トイレ
二岐沢林道の入口ゲート (北電管理ゲート) ・・取水ダムまで3.1キロ
★ 準備運動・・・
取水ダム 8:52着~9:00 休憩
登山口の二岐沢ゲートから取水ダムまで3.1㎞の標識があった。(所要47分だった)
林道は車が充分に通行出来る整備された道で、二岐沢沿いの右岸、左岸を淡々と歩く形となる。
道は大きなアップダウンが2度ほどあり重荷を背負う登山者には辛いアルバイトもこれから向かう
日高の急登を前にまずは「準備運動」と考えておくと少しは気休めになると言うものだ。
北電取水ダム・・・ここから本格的な登山が開始となる。
★ 気合・・・
北電管理の取水ダムには大きな駐車スペースがあるが、本来は作業用のためのスペースなのかも
知れない。その中央には焚き火の残骸がありキャンプ敵地と言ってもマナーの悪さが露呈していた。
さて、準備運動もここで終了。ようやく辿り着いた本当のスタート地点だ。
ダム広場には「北戸蔦別岳登山口」の案内が小さな看板で表示されていたが、登山口は藪に覆われ
ていて分かり難く、ピンクのテープでようやく「ここかぁ」と分かる。
気合を入れ直しいよいよの出発だ。
取水ダム 9:00 出発
★ 最初のハプニング・・・
取水ダムから二岐沢沿いの登山道(踏み跡)は終始左岸沿いにある。
ところどころ蕗や笹で覆われて分かり難い所もあるが次の二ノ沢出合までは順調に歩く事が出来た。
二ノ沢出合 9:38~45 休憩
出合(C820)には4~5人用のテン場スペースがある。
古い標識が出合の大木に付けてあったが何も書かさってはいない。
出合に咲く「エゾノオオサクラソウ」に癒されて暫しの休憩を取る。
二ノ沢出合に咲いていた「エゾノオオサクラソウ」色鮮やかで元気がいいって感じだ。
サクラソウに癒されて気分良く出発。
再び踏み跡的登山道を辿って重荷を背負う。そして出発して15分、標高880m付近で先行者?
らしき3人パーティーに出会う。見ると一人はズボンを脱いだ状態のパンツ姿、一人はズボンをめくり
上げた裸足で沢を渡渉していた。
「えっ!嘘でしょ!・・・」って感じで、なんで裸足なの?・・・と絶句した。
思いもよらぬ想定外の光景に一時冷静さを忘れていたが、沢を良く見ると「増水」していたのだ。
対岸への渡渉ルートに間違いは無く、でも登山靴で渡渉するにはリスクを伴う状況だった。
ちょっと上流側を偵察して何とか靴を脱がずに渡れる場所は無いかと探すも、時間の無駄と悟って
自分たちも靴を脱いで渡る事にした・・・。
この山行の最初のハプニングと言えよう。約20分のロスタイムだった。
しかし、この先も数回の渡渉点があって次の渡渉も靴を脱ぐほどの増水でロスしたが、その後は
すべて靴を履いたまま渡渉出来てホッとした。
先行者の3人パーティーは群馬県から来た60代~70代ですべての渡渉でその度に靴を脱いで
渡ったらしい。私たちが先行する形となるもまたまた小さなハプニングが発生することになる。
地形図上の二ノ沢水線の源頭995m地点が尾根の取付き・・と勘違いしていたエバ。
ほとんど沢登り状態で古い標識テープのみが頼りのルート取りだったがその995を過ぎた頃
踏み跡も標識テープもはっきりしない沢の中で迷い始めた。
「テープが無い」「踏み跡どこだ?」「標高が1000m越えたぞ?」「尾根の取付きは?」と
幾つかの不安が募る。一度戻って再び地形図をじっくり確認。
その間に群馬のパーティーが追い着いて来て、なんの不安も無さそうに淡々と沢を登って行った。
地形図を良く見ると995地点が取付きでは無く水線の無い沢形を更に登り標高1100m付近
から沢から離れていた。
見つけられなかったテープや踏み跡も少し歩けば再びあって、小さなハプニングは無事終了する。
二ノ沢1100m付近、雪渓の向こうに尾根への取付きがある
★ 思い込み・・・
尾根取付き12:10
二ノ沢から尾根への取付き点は意外と分かり難いかも?
ただその上には大きな滝があるのでその手前で取付く事は誰もが判断出来ると思う。
左岸のテープ標識を頼りに雪渓の上を慎重に登り取付き点に着く。
出合から急登もフィックスロープが設置されていて助かった。
荒れ気味の登山道もしっかりした道で迷う事は無い・・・なのに、「じぇじぇじぇ・・」のミスをまた
やってしまった。
急登で一気にスピードダウンのエバ。
肩に食い込む荷重と自分の体重でスムーズな登行は出来なかった。
チーヤンに先行してもらい「トッタの泉」で水を確保してくれと依頼する。
1200m付近で下山して来る単独の青年に出会う。「トッタの泉はまだですか?」と尋ねると
「もうすぐです」「標識もありますから・・」と聞き一安心。
1300m付近、「トッタの泉まであと10分」という標識があった。しかし、このペースダウンの
私ならあと20分は掛かるだろうと思ったし、12年前の記憶では近くに岩場があったように思
い込んでいた。標識から10分も経たずに先行していたチーヤンから声が掛かる。
「トッタの泉はまだぁ~」その後も「・・・・・」何か言ったようだったが私には聞こえなかった。
「まだまだぁ~もっと上だろう!」と返事をする。
1350m付近、雪渓が道を塞いで歩き難い場所を通過・・・・(ここがトッタの泉だった)
1450m付近、二人組の下山者に出会う。
「トッタの泉はまだ上ですか?」と聞くと「いや、まだ過ぎてないから下でしょう・・」・・・「えっ!?そんな」
チーヤンとちょっとした言い合いをした後、ザックをデポし9リットル分のタンクやボトルを持って降りる事
にした。その間群馬パーティーはすでに水を確保して先行する。・・・大きなタイムロスも水の確保は絶対
であり、止む負えなかった。(約1500m付近だった)
トッタの泉は雪渓の下にあって水源は隠れていた。ただ水汲み用のペットボトルや塩ビ管が近くにあって
登山道には水も流れている。チーヤンが私に声を掛けたのはこの場所だったのに気が付くことなく通過
してしまったのだ。(水汲み14:00~15:00)
約1時間のロスタイムも何とか必要な水9リットルをデポしたザックまで持ち上げた。
しかし・・・
情けない話だが、私が3リットル、チーヤンが6リットルを背負う。(実に頼れる妻であった)
1600m付近から登山道は完全に雪渓に覆われ急斜面を登ることになる
ヌカビラ岳手前の大雪渓を登る・・・
★ 体力の限界・・・
1600m付近から登山道は完全に雪渓に覆われる。
下山者と先行パーティーのトレースがありルート的には助けられたが、上を目指せば登山道に当たると
軽い気持ちでは登れない斜度と広さであった。ピッケルを出し一歩一歩トレースを辿る。アイゼンを付け
る程固くは無く先行者のステップにも助けられた。
大粒の汗を掻き、何度も休みながら登る。迫るヌカビラの岩峰群が少しずつ近づくのが嬉しかった。
体力の限界を感じつつここまでの情けない自分を振り返る余裕はあった。6リットルの加重なのに
なんであんなに早く登れるの?とチーヤンの底力に尻を叩かれる思いで奮起する。
念願のカムイコザクラとの出逢い・・とにかく色鮮やかで生き生きしている。
★ 一掃の絶景に感動・・・
岩峰群 16:00頃
岩場にひっそりとでも元気に咲き誇るカムイコザクラに力を頂いた感じする。
人間頑張ればやれるんだ・・と教えられた気がする。(これまでも何度も教えられているが・・ね)
歩き始めて約8時間・・・ようやく日高の尾根上に辿り着くとそこにいきなりのご褒美がある。
いままでの苦労を一掃する大眺望と爽やか過ぎる風が気持ち良い・・・。
ある意味今回の目的は、未踏峰の制覇ではなくこの絶景を見る事にあったのではないかと・・・
それほど感動的な絶景との出逢いである。苦労した者だけが味わえる特典だが誰にでも見てほしい
光景はせめて写真で分かち合ってほしい。
ヌカビラ岳(1807m)頂上から望む、日高の主峰「幌尻岳(2052m)」と北カール
ヌカビラ岳から北戸蔦別岳への尾根上にも何箇所か雪渓が残っている
コエゾツガザクラ
エゾツガザクラ
★ テン場・・・
北戸蔦別岳頂上 17:05
ヌカビラ岳から北戸蔦別岳まで稜線にはまだ多くの雪渓が残りそれは北戸蔦別岳頂上直下まであった。
その間途切れた窪みや岩場には花畑が点在しまだ蕾のキバナシャクナゲやエゾツガザクラ、チングル
マ、イワウメ、イソツヅジ、ミヤマキスミレなどがハイ松や笹原を凌いで咲き誇っていた。
歩き始めて9時間。ようやく着いたぁ~とザックを放り投げる。
群馬パーティーは、北戸蔦別岳手前のコルにテントを張っていた。
丁度良いスペースとすぐ目の前には雪渓もある。冷やしたり水を作るのは容易な場所だがなぜここに?
と尋ねると、メンバーの一人がもうへばってしまい頼み込んでここにしてもらった・・と言う。
3人パーティーの内2人は始めての北海道でいきなりの北戸蔦別のようでそうとう参ったらしい・・。
さて、自分たちのテン場は・・・あれっ!先客?
最初は二人とも登頂に酔いしれて頂上裏側にあるテン場と先客が居たとは気が付かなかった。
急に風が強くなり非常に寒くなって来て、雲行きが一気に変わり黒い雲が青空を消していく。
インナーダウンを着て改めて全体を見まわしようやくテントに気が付く始末。
頂上テン場は二つ。二人用テント限定と言った感じで狭いスペースだが、頂上の東側で窪んだ場所に
あるので西側からの強風が避けられる敵地と言えよう。
テン場はもう一つ、頂上すぐ北側にも一張り分のスペースがあったがここは風除けが無く強風には
難儀しそうな場所だった。もし群馬パーティーが先着でも私たちの場所には3人用テント設営は難し
かった・・と勝手に解釈していた。
とにかくありがたく思いつつも寒さに耐えながら早々にテントを設営した。
(安着乾杯用のビールは途中で確保した雪に入れて丁度良く冷えている・・・)
北戸蔦別岳頂上に着くとすぐに現れたブロッケン現象に遭遇する
★ 一瞬・・・
ブロッケン現象との遭遇
テントを張り終えたほんの一瞬だったが、強風とガスと光と虹が混じり合うブロッケン現象が発生した。
この現象は、霧の中に伸びた影と、周りに出来る虹色の輪(ブロッケンの虹)の二現象をまとめて言うら
しい。いきなりの登頂サプライズに感動が一つ増えた感じがした。
頂上には二張り分しかないテン場になんとか張れたエバ夫婦のテント
★ 安堵の時間・・・
安着 18:00 乾杯!!・・・
とにかく寒く、風が強くなって来た。
この時はまだ隣人とも軽く挨拶を交わす程度で外でゆっくり・・という状況ではなかったので早々テント
に潜り込む。
そして、最高の幸福感と共に冷えたビールの栓を開ける瞬間がたまらない。
「カンパ~イ」と小さな声でご発声、互いのグラスをぶつける。
咽喉越しに染み渡るこの瞬間には、9時間もの間重荷に耐えて登った来た苦労を吹き飛ばす瞬間でも
あり自分たちへのご褒美なのだ。山の頂で飲むから意味がある・・そんな自己満足が絶対なのである。
500缶2本時間を掛けてゆっくりと飲み干し、次にウイスキーの水割りで祝を締める。
★ 今宵、スーパームーン・・・
スーパームーンとは、月が地球に最も接近する時と満月が重なる時を言うらしい。
米航空宇宙局(NASA)によると、スーパームーンは通常の満月に比べ大きさが14%、明るさは30%
増して見えると言う。ほぼ年に一度のペースで観測され次回2014年は8月となる計算らしい。
日本で最大に見える時間は午後8時32分・・・なのだが。
偶然にも最高の観測機会に巡り合いながら、安着の儀以降午後8時32分まで起きている事が出来
なかった。ラジオで聞いていた日ハムの野球も初回中田が先制のホームランを打ったまでは覚えて
いるが19:30過ぎにはラジオも切って爆睡状態となる。風は相変わらず強くテントのフライを揺らす。
時折雨音もするが眠気の方が強く気にする事無く寝てしまったようだ。
本当によく頑張った一日でした・・・・。
6月23日 スーパームーンの始まり・・・まだ19時過ぎの現象
スーパームーンの始まり・・・ズームアップしただけ。
※ <2日目・3日目に続く> ・・・現在アップ中です。
ヌカビラ岳 (1807.9m)~北戸蔦別岳 (1912m)
~1967峰~ピパイロ岳 (1917m) 往復縦走
■ 山 行 日 2013年6月23日(日)~25日(火) 2泊3日
■ ル ー ト チロロ林道~二岐沢ルート
■ メ ン バ ー 夫婦登山 №11
■ 登 山 形 態 登山道or踏み跡 (登山靴)
■ 地 形 図 1/25000地形図 「千栄」「二岐岳」「ピパイロ岳」
■ 三角点・点名 ヌカビラ岳(三等三角点・点名「糖平岳(トウヒラダケ)」)
北戸蔦別岳(三角点・点名無し)
1967峰(三角点・点名無し、日高第3峰)
ピパイロ岳(三等三角点・点名「戸蔦別岳(トッタベツダケ)」)
■ コースタイム
<1日目>
登山口(二岐沢出合) 8:05--取水ダム 8:52~9:00休--二ノ沢出合 9:38~45休--
尾根取付き(1100付近) 12:10-(ロスタイム1時間)-ヌカビラ岳 16:11--北戸蔦別岳17:05
<2日目>
C1 6:10--1856ピーク 7:17~25休--1967峰 8:50~9:05--1911肩 10:05
ピパイロ岳 10:38~11:05--1911肩 11:30--1967峰 11:33~40休--
1856ピーク 13:45~50休--C1テン場 14:50
<3日目>
C2 6:05--ヌカビラ岳 6:40~7:15休--二ノ沢出合 8:35~55休--二岐沢出合 9:47
~55休--取水ダム 10:45~57-(山菜取り)-登山口 11:53
★ プロローグ・・・
二昔前は、日高第3峰と言われる「1967峰」の存在も登りたいと言う意欲も無いただ連れて行って
もらうから登る・・・だけの自分だった。
それが今は夫婦で北海道の山を中心に登り尽くそう・・なんて、妄想を考えるようになったのだから
人間の欲なんて果てしなく、取付いてしまった奥深い趣味の世界に終わりは無い・・とも思い込む始末だ。
このルートでの登行は、2001年8月に始めて登った時以来12年振りとなるが、未踏峰を意識し始めて
これまで3度ほど計画を組んで挑戦しようとした。しかし、いずれも天候に恵まれずすべてが登山口まで
行かずに、計画倒れで終わっていた。
何とか実現に向けて・・の意欲は欠かさずそのチャンスを狙っていた時、2010年6月HYMLの大先輩
函館のsakagさんと千歳のたかさんそして本州から法起坊見習さんの66歳トリオで登った記録を読んで
その素晴らしさに感動し、行くなら6月と決めていた。
残雪と花々の開花時期を一気に迎える日高の稜線、テントを担いで2泊の贅沢な山旅は憧れの山行
でもあった。出来れば七つ沼カールまで散歩と洒落込み余裕の下山・・なんて夢も見ていた。
登れるかどうか、天気は良いのか、水はあるのか、テン場は・・・と不安と期待は募る。
チーヤンは、全てが未踏、私は1967峰のみが未踏での挑戦だった。
カムイコザクラ、ツクモグサ、ヒダカミヤマノエンドウ、ヒダカハナシノブなどまだ見た事の無い花々との
出逢いも楽しみだった。色々な思いを持ってとうとう実行の時を迎えた。
<1日目> 【6月23日(日)】 快晴
★ 順調なスタート・・・
計画した3日間の天候は、ほぼ晴れ予報。
林道の状況、入林手順も事前に確認して出発する。
自宅から日高町を経由しチロロ林道へと進み国道から約17キロで登山口となる。
二岐沢出合には広い駐車スペースと簡易トイレが設置されていた。すでに6台の車が駐車していて
私の車でほぼ満車状態になってしまった。日曜日なので混み具合は予想していたが下山組がほとんど
だろうからテン場は大丈夫・・と自己解釈して登り始める。まずは順調なスタートと言えよう。
実質的な登山口となるチロロ川と支流二岐沢の出合にある駐車スペースと簡易トイレ
二岐沢林道の入口ゲート (北電管理ゲート) ・・取水ダムまで3.1キロ
★ 準備運動・・・
取水ダム 8:52着~9:00 休憩
登山口の二岐沢ゲートから取水ダムまで3.1㎞の標識があった。(所要47分だった)
林道は車が充分に通行出来る整備された道で、二岐沢沿いの右岸、左岸を淡々と歩く形となる。
道は大きなアップダウンが2度ほどあり重荷を背負う登山者には辛いアルバイトもこれから向かう
日高の急登を前にまずは「準備運動」と考えておくと少しは気休めになると言うものだ。
北電取水ダム・・・ここから本格的な登山が開始となる。
★ 気合・・・
北電管理の取水ダムには大きな駐車スペースがあるが、本来は作業用のためのスペースなのかも
知れない。その中央には焚き火の残骸がありキャンプ敵地と言ってもマナーの悪さが露呈していた。
さて、準備運動もここで終了。ようやく辿り着いた本当のスタート地点だ。
ダム広場には「北戸蔦別岳登山口」の案内が小さな看板で表示されていたが、登山口は藪に覆われ
ていて分かり難く、ピンクのテープでようやく「ここかぁ」と分かる。
気合を入れ直しいよいよの出発だ。
取水ダム 9:00 出発
★ 最初のハプニング・・・
取水ダムから二岐沢沿いの登山道(踏み跡)は終始左岸沿いにある。
ところどころ蕗や笹で覆われて分かり難い所もあるが次の二ノ沢出合までは順調に歩く事が出来た。
二ノ沢出合 9:38~45 休憩
出合(C820)には4~5人用のテン場スペースがある。
古い標識が出合の大木に付けてあったが何も書かさってはいない。
出合に咲く「エゾノオオサクラソウ」に癒されて暫しの休憩を取る。
二ノ沢出合に咲いていた「エゾノオオサクラソウ」色鮮やかで元気がいいって感じだ。
サクラソウに癒されて気分良く出発。
再び踏み跡的登山道を辿って重荷を背負う。そして出発して15分、標高880m付近で先行者?
らしき3人パーティーに出会う。見ると一人はズボンを脱いだ状態のパンツ姿、一人はズボンをめくり
上げた裸足で沢を渡渉していた。
「えっ!嘘でしょ!・・・」って感じで、なんで裸足なの?・・・と絶句した。
思いもよらぬ想定外の光景に一時冷静さを忘れていたが、沢を良く見ると「増水」していたのだ。
対岸への渡渉ルートに間違いは無く、でも登山靴で渡渉するにはリスクを伴う状況だった。
ちょっと上流側を偵察して何とか靴を脱がずに渡れる場所は無いかと探すも、時間の無駄と悟って
自分たちも靴を脱いで渡る事にした・・・。
この山行の最初のハプニングと言えよう。約20分のロスタイムだった。
しかし、この先も数回の渡渉点があって次の渡渉も靴を脱ぐほどの増水でロスしたが、その後は
すべて靴を履いたまま渡渉出来てホッとした。
先行者の3人パーティーは群馬県から来た60代~70代ですべての渡渉でその度に靴を脱いで
渡ったらしい。私たちが先行する形となるもまたまた小さなハプニングが発生することになる。
地形図上の二ノ沢水線の源頭995m地点が尾根の取付き・・と勘違いしていたエバ。
ほとんど沢登り状態で古い標識テープのみが頼りのルート取りだったがその995を過ぎた頃
踏み跡も標識テープもはっきりしない沢の中で迷い始めた。
「テープが無い」「踏み跡どこだ?」「標高が1000m越えたぞ?」「尾根の取付きは?」と
幾つかの不安が募る。一度戻って再び地形図をじっくり確認。
その間に群馬のパーティーが追い着いて来て、なんの不安も無さそうに淡々と沢を登って行った。
地形図を良く見ると995地点が取付きでは無く水線の無い沢形を更に登り標高1100m付近
から沢から離れていた。
見つけられなかったテープや踏み跡も少し歩けば再びあって、小さなハプニングは無事終了する。
二ノ沢1100m付近、雪渓の向こうに尾根への取付きがある
★ 思い込み・・・
尾根取付き12:10
二ノ沢から尾根への取付き点は意外と分かり難いかも?
ただその上には大きな滝があるのでその手前で取付く事は誰もが判断出来ると思う。
左岸のテープ標識を頼りに雪渓の上を慎重に登り取付き点に着く。
出合から急登もフィックスロープが設置されていて助かった。
荒れ気味の登山道もしっかりした道で迷う事は無い・・・なのに、「じぇじぇじぇ・・」のミスをまた
やってしまった。
急登で一気にスピードダウンのエバ。
肩に食い込む荷重と自分の体重でスムーズな登行は出来なかった。
チーヤンに先行してもらい「トッタの泉」で水を確保してくれと依頼する。
1200m付近で下山して来る単独の青年に出会う。「トッタの泉はまだですか?」と尋ねると
「もうすぐです」「標識もありますから・・」と聞き一安心。
1300m付近、「トッタの泉まであと10分」という標識があった。しかし、このペースダウンの
私ならあと20分は掛かるだろうと思ったし、12年前の記憶では近くに岩場があったように思
い込んでいた。標識から10分も経たずに先行していたチーヤンから声が掛かる。
「トッタの泉はまだぁ~」その後も「・・・・・」何か言ったようだったが私には聞こえなかった。
「まだまだぁ~もっと上だろう!」と返事をする。
1350m付近、雪渓が道を塞いで歩き難い場所を通過・・・・(ここがトッタの泉だった)
1450m付近、二人組の下山者に出会う。
「トッタの泉はまだ上ですか?」と聞くと「いや、まだ過ぎてないから下でしょう・・」・・・「えっ!?そんな」
チーヤンとちょっとした言い合いをした後、ザックをデポし9リットル分のタンクやボトルを持って降りる事
にした。その間群馬パーティーはすでに水を確保して先行する。・・・大きなタイムロスも水の確保は絶対
であり、止む負えなかった。(約1500m付近だった)
トッタの泉は雪渓の下にあって水源は隠れていた。ただ水汲み用のペットボトルや塩ビ管が近くにあって
登山道には水も流れている。チーヤンが私に声を掛けたのはこの場所だったのに気が付くことなく通過
してしまったのだ。(水汲み14:00~15:00)
約1時間のロスタイムも何とか必要な水9リットルをデポしたザックまで持ち上げた。
しかし・・・
情けない話だが、私が3リットル、チーヤンが6リットルを背負う。(実に頼れる妻であった)
1600m付近から登山道は完全に雪渓に覆われ急斜面を登ることになる
ヌカビラ岳手前の大雪渓を登る・・・
★ 体力の限界・・・
1600m付近から登山道は完全に雪渓に覆われる。
下山者と先行パーティーのトレースがありルート的には助けられたが、上を目指せば登山道に当たると
軽い気持ちでは登れない斜度と広さであった。ピッケルを出し一歩一歩トレースを辿る。アイゼンを付け
る程固くは無く先行者のステップにも助けられた。
大粒の汗を掻き、何度も休みながら登る。迫るヌカビラの岩峰群が少しずつ近づくのが嬉しかった。
体力の限界を感じつつここまでの情けない自分を振り返る余裕はあった。6リットルの加重なのに
なんであんなに早く登れるの?とチーヤンの底力に尻を叩かれる思いで奮起する。
念願のカムイコザクラとの出逢い・・とにかく色鮮やかで生き生きしている。
★ 一掃の絶景に感動・・・
岩峰群 16:00頃
岩場にひっそりとでも元気に咲き誇るカムイコザクラに力を頂いた感じする。
人間頑張ればやれるんだ・・と教えられた気がする。(これまでも何度も教えられているが・・ね)
歩き始めて約8時間・・・ようやく日高の尾根上に辿り着くとそこにいきなりのご褒美がある。
いままでの苦労を一掃する大眺望と爽やか過ぎる風が気持ち良い・・・。
ある意味今回の目的は、未踏峰の制覇ではなくこの絶景を見る事にあったのではないかと・・・
それほど感動的な絶景との出逢いである。苦労した者だけが味わえる特典だが誰にでも見てほしい
光景はせめて写真で分かち合ってほしい。
ヌカビラ岳(1807m)頂上から望む、日高の主峰「幌尻岳(2052m)」と北カール
ヌカビラ岳から北戸蔦別岳への尾根上にも何箇所か雪渓が残っている
コエゾツガザクラ
エゾツガザクラ
★ テン場・・・
北戸蔦別岳頂上 17:05
ヌカビラ岳から北戸蔦別岳まで稜線にはまだ多くの雪渓が残りそれは北戸蔦別岳頂上直下まであった。
その間途切れた窪みや岩場には花畑が点在しまだ蕾のキバナシャクナゲやエゾツガザクラ、チングル
マ、イワウメ、イソツヅジ、ミヤマキスミレなどがハイ松や笹原を凌いで咲き誇っていた。
歩き始めて9時間。ようやく着いたぁ~とザックを放り投げる。
群馬パーティーは、北戸蔦別岳手前のコルにテントを張っていた。
丁度良いスペースとすぐ目の前には雪渓もある。冷やしたり水を作るのは容易な場所だがなぜここに?
と尋ねると、メンバーの一人がもうへばってしまい頼み込んでここにしてもらった・・と言う。
3人パーティーの内2人は始めての北海道でいきなりの北戸蔦別のようでそうとう参ったらしい・・。
さて、自分たちのテン場は・・・あれっ!先客?
最初は二人とも登頂に酔いしれて頂上裏側にあるテン場と先客が居たとは気が付かなかった。
急に風が強くなり非常に寒くなって来て、雲行きが一気に変わり黒い雲が青空を消していく。
インナーダウンを着て改めて全体を見まわしようやくテントに気が付く始末。
頂上テン場は二つ。二人用テント限定と言った感じで狭いスペースだが、頂上の東側で窪んだ場所に
あるので西側からの強風が避けられる敵地と言えよう。
テン場はもう一つ、頂上すぐ北側にも一張り分のスペースがあったがここは風除けが無く強風には
難儀しそうな場所だった。もし群馬パーティーが先着でも私たちの場所には3人用テント設営は難し
かった・・と勝手に解釈していた。
とにかくありがたく思いつつも寒さに耐えながら早々にテントを設営した。
(安着乾杯用のビールは途中で確保した雪に入れて丁度良く冷えている・・・)
北戸蔦別岳頂上に着くとすぐに現れたブロッケン現象に遭遇する
★ 一瞬・・・
ブロッケン現象との遭遇
テントを張り終えたほんの一瞬だったが、強風とガスと光と虹が混じり合うブロッケン現象が発生した。
この現象は、霧の中に伸びた影と、周りに出来る虹色の輪(ブロッケンの虹)の二現象をまとめて言うら
しい。いきなりの登頂サプライズに感動が一つ増えた感じがした。
頂上には二張り分しかないテン場になんとか張れたエバ夫婦のテント
★ 安堵の時間・・・
安着 18:00 乾杯!!・・・
とにかく寒く、風が強くなって来た。
この時はまだ隣人とも軽く挨拶を交わす程度で外でゆっくり・・という状況ではなかったので早々テント
に潜り込む。
そして、最高の幸福感と共に冷えたビールの栓を開ける瞬間がたまらない。
「カンパ~イ」と小さな声でご発声、互いのグラスをぶつける。
咽喉越しに染み渡るこの瞬間には、9時間もの間重荷に耐えて登った来た苦労を吹き飛ばす瞬間でも
あり自分たちへのご褒美なのだ。山の頂で飲むから意味がある・・そんな自己満足が絶対なのである。
500缶2本時間を掛けてゆっくりと飲み干し、次にウイスキーの水割りで祝を締める。
★ 今宵、スーパームーン・・・
スーパームーンとは、月が地球に最も接近する時と満月が重なる時を言うらしい。
米航空宇宙局(NASA)によると、スーパームーンは通常の満月に比べ大きさが14%、明るさは30%
増して見えると言う。ほぼ年に一度のペースで観測され次回2014年は8月となる計算らしい。
日本で最大に見える時間は午後8時32分・・・なのだが。
偶然にも最高の観測機会に巡り合いながら、安着の儀以降午後8時32分まで起きている事が出来
なかった。ラジオで聞いていた日ハムの野球も初回中田が先制のホームランを打ったまでは覚えて
いるが19:30過ぎにはラジオも切って爆睡状態となる。風は相変わらず強くテントのフライを揺らす。
時折雨音もするが眠気の方が強く気にする事無く寝てしまったようだ。
本当によく頑張った一日でした・・・・。
6月23日 スーパームーンの始まり・・・まだ19時過ぎの現象
スーパームーンの始まり・・・ズームアップしただけ。
※ <2日目・3日目に続く> ・・・現在アップ中です。