後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔594〕『描くひと 谷口ジロー』(双葉社)の裏表紙、人と犬は何処を歩いているのでしょう。

2023年06月05日 | 図書案内
 このブログを読んでいる方に聞きます。『描くひと 谷口ジロー』の裏表紙の絵は何処を描いたものでしょう。知っている人がいたら教えて下さい。
 「谷口ジローの『技法』に迫る」という座談会の中でアシスタントだった上杉忠弘氏が、谷口から写真を渡されそれを元に描き、彩色は谷口がしたことを証言しています。清瀬市にはこのような地域はないので、おそらくどこか地方の町なのだと思われます。双葉社の編集部にこのことを問い合わせたら、谷口が想像で描いたと言うのですが、証言や但し書きとは矛盾します。かくなる上は、『歩くひと 完全版』を出版した小学館の編集部に問い合わせるしかないようです。その結果はまたこのブログでお知らせしますね。乞うご期待!



 このブログでは数回にわたって谷口ジローのことを書いてきました。テレビ東京「新・美の巨人」で谷口作品が取り上げられたこと、谷口が長年在住していた清瀬市で谷口ジロー展か開催されたこと、『歩くひと』の場所をほぼ特定したことなど、それは枚挙にいとまがありません。

 さて、ひょんなことから、ある人から『描くひと 谷口ジロー』をいただきました。3500円+税という高価な本で、購入に二の足を踏んできたのですが。
 この本の概要は以下の通りです。

◆『描くひと 谷口ジロー』(双葉社、2019年)
〔オビより〕
生涯を漫画に捧げた「描くひと」の軌跡を、ここに。

一九七〇年のデビュー以来、四七年の長きにわたって漫画を描き続けた、谷口ジロー。
卓抜の画力を以て、ハードボイルド、格闘、山岳、SF、動物、はては散歩と、漫画のあらゆるジャンルを踏破したその業績は、今もなお光を失うことがない。

本書は、谷口がフランスで受けた貴重なロングインタビューを軸にして、生前、交流の深かった人々の証言も交え、その足跡を辿るものである。


 かなりマニアックな本ですが、谷口ファンには必読の書です。
  内容は「谷口ジローが語る」と「谷口ジローを語る」に大別されます。
  「谷口ジローが語る」は、フランス人のブノア・ペータースから、5日間にわたって、谷口のスタジオのあった東村山で受けたロング・インタビューです。根掘り葉掘り、率直に聞こうとする姿勢に好感が持てます。2012年にフランスでフラン語出版されたものの翻訳本です。
  「谷口ジローを語る」は『芸術新潮』(2017年7月号、新潮社)と『小説すばる』(2017年9月号、集英社)に掲載されたものの再録です。関川夏央、大友克洋、ヤマザキマリ、久住昌之、夢枕獏などが登場し、谷口の人となりがわかり、読み応えがあります。

  貴重なのは書誌一覧、年譜、初出などが後付けされていることです。書誌一覧にはヨーロッパやアジアで翻訳された漫画が収録されています。谷口研究の資料としても必携の書と言えそうです。

 谷口ジローは、フランスをはじめヨーロッパなどで漫画家として不動の地位を築きましたが、もっと日本で評価されていい作家であるのは間違いありません。
 それを立証するのがこの『描くひと 谷口ジロー』でした。