「九条守って世界に平和」(マスコミ・文化 九条の会 所沢)のバックナンバーをいただきました。最新が200号でしたが、ある筋からメールで201号が送られてきました。〈転送歓迎〉ということなので、紹介させていただきます。
通常は8頁立ての隔月刊のようです。内容は多岐にわたっていますが、レベルが高く、じっくり読み込みたい記事ばかりです。
著名人の執筆者も多いようですが、中嶋里美さん(所沢市)、植竹しげ子さん(清瀬市)など知り合いのお名前も見えて嬉しかったです。
◆映画「学校」の黒井先生
(亡くなった西田敏行さんが日本アカデミー賞を受賞した役)
前川喜平(現代教育行政研究会代表)
亡くなった西田敏行さんが日本アカデミー賞を受賞した役は、夜間中
学を描いた1993年の映画「学校」 (山田洋次監督)の黒井という教師の
役だった。
この黒井先生のモデルは複数いる。
塚原雄太氏は東京の夜間中学で1957年から20年以上教鞭(きょうべん)
をとり、夜間中学廃止の危機を乗り越えて夜間中学の教育を先導した人
物だ。
毎年開かれている夜間中学の生徒のスピーチ大会は、塚原氏の詩の一
節からで「花咲け出愛(であい)」スピー チ大会と呼ばれている。
見城慶和(けんじょうよしかず)氏は塚原氏の著書「夜間中学生」に感
銘を受けて1961年に夜間中学の教師になり、40年以上教えた。
その様子は2003年のドキュメンタリー映画「こんばんは」(森康行監
督)に生き生きと描かれている。
松崎運之助(みちのすけ)氏は1973年から30年以上夜間中学で教えた。
映画の原作となった本の著者だ。田中邦衛さんが演じた「イノさん」
は、松崎氏が実際に教えた井上さんという生徒がモデルだ。
夜間中学はこうした教師たちが作り上げてきた。文部科学省の主導で
作られた学校ではない。
文科省は10年前に態度を改め、今では全国の教育委員会に夜間中学の
設置を促しているが、現場の教師が日々の実践から積み上げた学びのあ
り方を離れて夜間中学は作れない。
単に昼間の中学校を夜に移したものではないのである。
(10月20日「東京新聞」朝刊21面「本音のコラム」より)
◆世界終末90秒前
大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)
今年のノーベル平和賞が、全国の被爆者らでつくる日本原水爆被害者
団体協議会(被団協)に決まった。
反核平和運動の最前線に立ってきた被爆者のみなさんに心からの敬意
と祝福を表したい。
いま、私たちがやらねばならないのは、祝福ムードを盛り上げること
よりも、会見で委員らが語った「怒り心頭」の思いを受け止め、行動に
移すことであると思う。
石破茂首相が言及した米国の核兵器を共同運用する「核共有及び核持
ち込み」について、田中煕巳代表委員は「論外」と切り捨てた。
日本政府は 「共有だから保持ではない」という卑怯な口実で実質的核
保有国になりたがっている。
被爆者への冒涜(ぼうとく)であり、犠牲者を二度殺すことと同じでは
ないか。いや、それ以上に、人類の危機を加速させるものである。
1945年、広島・長崎への原爆投下への反省から創刊された米国の科学
雑誌「原子力科学者会報」は、表紙に世界終末時計を掲載する。
毎年更新される時計は、今年、深夜0時の90秒前で止まっている。
深夜をまわれば、核戦争によりこの世界は破滅し、人類は滅びる。
その時は着実に迫っている。
世界終末時計を止める方法は「核共有」などではない。
ノーベル平和賞受賞を機に、まずは「核兵器は抑止力」などという愚
かな考えを日本政府に捨てさせねばならない。
(10月21日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)