明治・父・アメリカ (新潮文庫 草 98-17) 星 新一 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
星新一 著 : 明治・父・アメリカ
を、読みました。
ショートショートの星新一の、父の若き日を書いた
伝記小説。
父の父、つまり祖父の時代から始まるこの伝記は
江戸時代から始まります。
いろいろとあって、星家の婿養子になった祖父
そして、その家の二男として生まれた父、星一。
その父が、福島県の田舎を後にし、東京で苦学したうえ
アメリカに旅立ち、アメリカでも東京時代をしのぐ苦学の上
大学卒業、新聞社の立ち上げなど、努力と辛抱で
乗り越えながら、やがて日本に帰るまでのことを記しています。
今の時代でも、アメリカで学ぶことは、それほど簡単ではないでしょう
しかし、時は明治。まだ自動車さえも走っておらず
日本の国民のほとんどがまだ、洋服を着ていなかった時代。
そんな明治の初期に、アメリカ大陸を目指した理由。そんなことも
教えてくれた、最後の1ページまで、興味深い本でした。
車も飛行機もない時代に、アメリカに学びに行っても
多くの人は、今の気軽な留学生と同じように
大志を忘れてしまった人も、多かったようです。
その中で、安住を選ばず、困難だけを選び取ってゆく人は
明治時代も今の世も、ごく稀なのだと感じました。
昔の人が、皆偉かったわけではないのだなと。
星一は、明治時代の代名詞といわれる人物達と
知り合ってゆきます。
その面々は、信じられないほどの有名人で
教科書、お札の常連さんたちです。
そんな偉人達と知り合っていったのは、ひとえに星一が
純真で、辛抱強く、明るく、健康だったからのようです。
もしも、その反対の狡猾な人だったなら
この偉人達との交流は、決してなかったのだろうと思います。
偽装の“偽”が、今年の漢字になった、2007年でしたが
こういう、すごい人がいたのだなと、みんなが知ればいいのになと
思った、本でした。