未然 11

沙友理さんは、しばらく悩んで、例の件はこのまま優太さんに問いただすことはせずに、水に流すことにした。

おそらく、先輩がうっかりしていただけだろう…と思うようにした。

それが出来るなら、それはそれで健全かも知れない…と思った。

そしてまた、少しずつ自信を、取り戻し、前向きで明るい沙友理さんに戻っていった。

ある時、真央さんが訪れた。

実は私自身、真央さんの写真に優太さんが写っていたことが、気になっていた。

真央さんは、新しい恋に前進して楽しそうだ。

元々元気な真央さんなので、順調な恋愛パワーでオーラがキラキラしている。

「ダイビングは順調？」

「そうそう、さらにハマっています！先日も仲間が集まってバーベキューをしました」

「彼と二人っきりじゃないんだね」

「はい、仲間といるのが楽しいので、いつも仲間と一緒です」

「彼氏、寂しいんじゃない？」

「彼も、仲間と一緒がいいって❤️」

未然 10

優太さんが嘘をついているのか…、それとも、件の先輩がうっかり忘れていただけなのか…。

もともと自分に自信がない沙友理さんは、優太さんに対して疑心暗鬼になってしまった。

本来なら、モヤモヤと過ごすより、思いきって優太さんに聞いてみた方が、心の平和にいいのかも知れない…。

深刻な嘘ばかりでなくて、余計な心配をさせたくないから…の嘘だってあるかも知れないし…。

だけど、元々心配性で、自分に自信がもてない沙友理さんにとっては、どんな答えが返って来ても、"嘘"をつかれたことばかりを気にしてしまいそうな気がする。

案の定、それからの沙友理さんは、再び自分に自信が持てない女性に戻ってしまった。

「このままだと、良くないよ。思いきって、例の件、聞いてみたら？」

「聞いてみたいけど、イヤな答えが返って来たらどうしよう…ってばかり考えて…」

「…そうか…。」

確かに、今の沙友理さんは、もしも嘘をつかれていた場合…、何もかも壊れてしまいそうだ…。

未然 10

自分に自信を持った沙友理さん。

きっと、もっとキラキラして、さらに素敵な沙友理さんになることだろう…と思っていました。

旅行に行く…と言ってた日も過ぎたある日、また、沙友理さんに会った。

「旅行、楽しかった？」

「行けませんでした。」

「あら…？どうして？」

「優太さんの都合で、急遽行けなくなってしまったんです」

「そうなの…、残念だったわね。」

「それが…、優太さんが旅行をキャンセルした理由がちょっと気になるんです」

「どんな？」

「仕事場の先輩から、急遽用事を頼まれて、出掛けなくちゃならなくなった…って…。」

「そうなんだ…。」

「ところが、その先輩、たまたま先日、仕事を一緒にする事があって…、ちょっと気になったから聞いてみたんです。」

「優太さんに用事を、頼んだかどうか？」

「はい。そしたら、『え？』っていう顔をして、少し困ったような顔をして、『…そうだよ』って。何か隠してるようで…。考えすぎでしょうか？」

未然 9

キラキラ真央さんが、大好きな趣味のダイビングの写真を見せてもらって、そこに沙友理さんの彼、優太さんがいることに気づいた。

また、少しして、沙友理さんが来た。

自信無さげだった沙友理さんも、髪色をベージュにして、明るい口紅で、なんだかイキイキしているようだ。

「恋、順調なのかな？」

「はい。少し自分に自信を持ち始めました」

「そうですよ～！沙友理さんはキレイです。もっともっと自信を持ってください」

「…そんなぁ…キレイじゃないです。今度私、優太さんと一緒に釣りに行くんです。」

「あれ？まだ行ってなかったの？」

「はい。しかも、旅行を兼ねて」

「そうなんだぁ！」

沙友理さんは、イキイキとして、一層キレイに見えた。

「どこの海に行くの？」

「千葉です。忙しいのであまり遠くには行けないので」

「楽しみね！」

未然 8

キラキラしている真央さんが、楽しそうに新しい恋について、話してくれている。

「ダイビングの写真見てください！」

真央さんは、楽しそうに、スマホにあるダイビングシーンの画像を何枚か見せてくれた。

あれ？

なんとなく、違和感を感じた。

ダイビング仲間数人写る中に、見覚えのある顔が…。

「この写真は、お仲間？」

「そうなんです」

数人写る中、真央さんの少し後ろに立って、楽しそうに笑っている男性は、おそらく沙友理さんの彼氏、優太さんだ。

少し日に焼けて、イケメンで、一際目を引く。

優太さんって、ダイビングもしていたんだ。

沙友理さんの話題からは、優太さんがダイビングをしている…という話は聞いたことが無かった。

まぁ、どんな趣味をしていようと、お互いが理解しあっていれば、何も問題はない。

優太さんは、どんなシチュエーションで見てもイケメンでモテそうだ。