エメラルドの瑕疵

旧 『楽母の人見知り日記』です。 毎日更新しています。気候の良い時期は地元(京都)の寺社散策に励みます。

言葉で治療する

2010-02-04 07:25:43 | 
言葉で治療する  鎌田實 著  朝日新聞出版 2009年11月30日初版

去年の暮れに4日ばかりではあったが、入院をしてみて改めて感じた、医師なり看護師さんの『言葉の力』

この本は、主に癌患者さんに対する医療現場の事を書いている。
週刊朝日の読者の中から、「医療者によって傷ついた言葉、励まされた言葉」の体験募集を行って、それをもとに、今の医療はどうあるべきか、というのが綴られている。

父の入院していた大学病院も、忙しすぎるのかなんなのか、医師によってはほんとに腹の立つもの言い、態度をとる人もいた。入院患者は人質のようなもので、主治医にその命をゆだねている。だから、どうしても医師のご機嫌を伺うような、医者と患者の立場には、上下関係があった。 入院生活も長引くと、付き添っていた母にも疲れがたまり、主治医のもの言いひとつでカチンと来て、その医師を注意してもらうべく、主治医の先輩Drにあたるクリニックから大学病院の教授宛に手紙まで書いてもらったほどだ。
まぁ、それが良いことなのかどうなのかはいまだに分からないけれど、確かに、医療関係者の中には、患者の体ばかり診て心をみない人も多い。

私も入院中、医師というよりたくさんの看護師さんと出合った。
彼女たちは3交代勤務のようなので、当然、朝来ていた看護師さんが、夕方には別の人になり、深夜はまた違う人・・・というようにどんどん変わっていった。 その中には、ベテランだから仕事は的確なんだけど、どこかに何か大切なものを忘れてきたな、と思うような人もいた。
私がほとんど何も食べられないでいる間、食べられませんか? 何かひと口でも・・・という言葉はたびたび聞いたけれど、それはマニュアル通りにしか感じられなかった。 でも、その中でたったひとり、まだ新人さんのような初々しい看護師さんが本当に気遣ってくれて、栄養管理の方に言って楽母さんが少しでも食べられる献立にしてもらえるようにしますから、お好きなものとか食べられそうなものを、言ってください。 私が確実に伝えますから、と熱心だった。 多分、病気が病気だけに、マスクをしていても彼女たちはあんまり積極的に近付かないでいたけれど、彼女だけは近くに来て顔を覗き込むようにして接してくれた。 で、果物なら口にできそうと言ったら、次から少しだけれど付いてきて、それを私が食べたのを見て、良かった良かった!と手を叩いて喜んでくれた。

病人やその家族は、身体だけでなく心も病んでいる場合が多い。その分、ひと言ひと言の重み、言葉の裏にある気持ちをストレートに感じ取る。
医療関係に限らず、言葉によるコミュニケーションはとても難しいものだけど、敏感になっている分、患者には健康体の者よりずっと気を使わなければならない、というのが書かれてあって、ああ、父の入院してた頃にこの本があったら、あの主治医に読ませたのに、なんて思えた一冊。

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6 コメント

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重い? (ポンチ姫)
2010-02-04 08:26:18
ポンチではありません、話です。教育関係でもありますよね?コミュニケーション不足?どちら側に、立つかで、変わってきますがすね…永遠の課題で、自分だけは、避けたい問題ですね
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おはようございます。 (エー)
2010-02-04 09:07:01
寒いけど、良いお天気のようです。
早いよねぇ~!2月も、もう4日ですよ。。。

母が入院していたとき、主治医ではない医師の無神経さに腹が立ちました。。。
「あいつが主治医でなくて、良かった!」と何度思ったことか。。。
地声が大きいのかもしれないけれど、たぶん入院している人たち全員に聞こえるような声で、患者の家族に病状の説明とかこれからの治療計画などを説明しちゃって・・・。
守秘義務云々という以前の問題。。。(怒)
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おはようございます (ゆっき~)
2010-02-04 11:05:49
不用意な言葉がどれほど患者を傷つけることか。言った本人はそんな言葉を発したことさえ忘れていることが多い。たとえ同じ言葉だとしても、聴く側の心理状態によっても響き方が違ってくるので、一概に善し悪しの判定は難しいとしても、最低限のマナーといわれるものぐらいは身につけて欲しいと思う。末期がんの患者を看取った経験からそう思う。
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こんばんは (楽母)
2010-02-04 17:30:49
我々の世代って、親を看取った人が多いと思う。 でも残念ながらよい先生、良い病院だったわぁという言葉が聞こえてこない。 医療の現場が忙しすぎて余裕がないというのもよく耳にするけれど、大きな声じゃ言えないけど・・・だからここでは書かないけど・・・根本的なとこが間違ってるよ、と思う事ひとつ。
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医者の当たりハズレ (olive)
2010-02-04 19:10:12
両親の時に経験。父は当り!末期の肝臓癌でしたが7年命をもらいました。
母の時は、今なら完全医療ミス!退院許可が出たので迎えに行ったら「脳毒症」透析しなければ命が…、当院では出来ないので…挙句、搬送に救急車は出せない!担当医の言葉に兄弟姉妹
入院は整形外科ですよ。それが、何で脳毒症!
医局で兄が医師を集めて大声で詰め寄りましたが、知り合いの外科部長に謝られて泣き寝入り。
医師も看護師もつかず、自分達の車で紹介先の病院へ。
これでも当地では大学病院の分院として有名なんですから呆れます。
どんなに有名な名医が来ようと一生受診はしない!と決めてます。
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おはようございます (楽母)
2010-02-05 07:29:56
医者の当たり外れって、本当に困りますよね。 うちは父が大腸癌から肝臓転移という道筋で、何年も入退院を繰り返す晩年でしたが、その度に主治医が違うんですね。で、いい先生に当たった時と、腹の立つ先生になった時と。 私も母が文句を言ったDrには切れましたね。 で、医局で他のDrも集まっているというのに「どうしてなんですか!!」って詰め寄ったことがあります。 それと、今はどうか分かりませんが、救急車の区域外搬送ができないってことも大いに憤慨しました。 実家は四日市、市内の病院には搬送できても、入院先の隣の津市には搬送できないという事で、市の境目で乗り換え要請されたんですよ。 一刻を争う重病人だから呼んでる救急車で乗り換えって
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