*********************************
望まない職場で、憂鬱な日々を送るOLの小田直美(おだ なおみ)。夫・服部達郎(はっとり たつろう)の酷い暴力に耐える、専業主婦の加奈子(かなこ)。30歳を目前にして、受け容れ難い現実に追い詰められた2人が下した究極の選択・・・。
*********************************
奥田英朗氏の小説「ナオミとカナコ」。性格は正反対なれど、「地方育ちで方言が中々抜けず、東京にコンプレックスを抱いていた。」等の共通点から、大学時代に親友となったナオミとカナコ。卒業以降、2人は全く異なる人生を歩む事になったが、共に一生の友人として年に数回会っていた。
そんな或る日、ナオミは、カナコが夫・達郎からDVを受けている事に気付く。傍目からは“素晴らしい夫”と見られるで在ろう夫からDVを受け続け、其れでも我慢しているカナコに、ナオミは「何とかして、彼女を救いたい。」という気持ちが湧き上がる。自分自身も仕事に不満を感じ続けていた事も在り、ナオミはカナコに「夫を一緒に殺害する。」という突拍子も無い提案をし、カナコは其れを受け容れる。
「絶対にばれない殺人計画」を立て、共同で殺人を行う2人。しかし、絶対にばれないと思っていた計画が、少しずつ破綻し、彼女達は徐々に追い詰められて行く。ストーリー展開の上手さも在り、読んでいてハラハラさせられる。
「絶対にばれる筈が無い。」、計画的に殺人を行う人間は、概してそう思うのではないか?綿密に計画を立て、アリバイ工作等を行い、「此れで、穴は無い。」と確信していても、何処かに穴が生じてしまっている物。だからこそ、犯罪者は捕まってしまう訳だが、其処迄深くは考えなかった2人なので、計画が破綻するのは必定。破綻して行く中で、どんどん追い詰められて行く2人の心境の変化が、実に興味深い。「最後はどうなったのか?」という結果の判らなさには不満が残るけれど、一気に読ませる面白さは在る。
総合評価は、星3.5個とする。