ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

言葉の重さ

2006年03月21日 | 其の他
最近、人や物の名前が思い出せなくてイライラする事がまま在る。「何という名前だったか・・・。」と呻吟している内に、暫くして思い出しホッとするのだが、「よもや健忘が進んでいるのではなかろうか?」と怖くなったりもする。

健忘とは異なるのだが、芥川賞作家の中村文則氏が書いていた話が面白かった。彼が電車に乗っていた際、二人の男子高校生が次の様な会話をしていたそうだ。

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A: ほら、この前のあれ、何つうか、こう、もっとパーっとやらねえ?何かこう、もっと、ガッてさ。・・・判るやろ?

B: あー何となく。確かにな、もっとガッて行くか。何かもっと、ダーってな。
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ミスターが,「うーん、その腰をダーッと廻して、バットをグッと振るんだ。ビュンとではなく、グッと振る。お、良いぞ!もう少しガッという感じだ。」といった様に打撃指導をしているという話は有名だが、それに近いかもしれない・・・という冗談はさて置き、確かにこの手の会話を耳にする機会が少なくない。「良くぞ御互いに意思疎通が図れているものだなあ。」と感心すらしてしまう程。

上記した様に人や物の名前が瞬時に思い出せない事が在るので、自分も「アレがナニして・・・。」といった感じで指示代名詞を使ってしまう事はしばしば在るが、自らの思いを的確に表現する能力が此処迄衰えてはいない

若い中村氏も「勿論若い人の全部がそうなのではない。(中略)でも、ごく一部に、こういう風にしか考えを述べられず、言葉を細かく論理的に使う事をしない人が少し増えて来たのも、事実かもしれないと思った。」と書いている。

「言葉の持つ重みが薄れて来ているのかなあ。」と感じたりもする。

WBC絡みでイチロー選手が発したコメントが、色々取り沙汰されている。ここ数年、彼の言動に好感を持てなかった自分だが、昨年位からは自分が嘗て好きだった頃の彼に戻った様な、”演じていない鈴木一朗”を見せてくれている事に嬉しさを感じていた。又WBCでは、先頭に立って日本チームを引っ張って行こうとしている彼に頼もしさも感じていた。しかし、ここの所の彼のコメントにはやや違和感を覚えている。

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唯、勝つだけじゃなく、凄いと思わせたい。戦った相手が『向こう30年は日本に手は出せないな。』という感じで勝ちたいと思う。
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WBC開幕前にイチロー選手が口にしたこの言葉に、韓国マスメディアが先ず反発した。このコメントに関しては、野球が国技的な扱いをされている国に於いて、プロとしてずっと結果を残して来た者のプライドが言わせた言葉と自分は捉えている。韓国チームを名指しした訳では無かったと記憶しているし、韓国メディアの”煽り”は難癖の様にも思えた。「WBCという大会を盛り上げたい。」、「日本チームの士気を鼓舞したい。」という彼なりの”計算”が在る様に感じ、「一寸言葉が過激だな。」とは思ったものの、それ程問題で在るとは受け取らなかった。

しかし、韓国との2回目の対戦で日本チームが負けを喫した後、彼が発したコメントには首を捻らざるを得なかった。

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僕の野球人生の中で、最も屈辱的な日。

(韓国チームのビクトリーランを見て)不愉快でした。
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「僕の野球人生の中で、~」に付いては、野球人としてのプライドが言わせたものだと思う。これは未だ理解出来る。でも、「不愉快でした。」というのは言葉が過ぎたのではないだろうか?

そして一昨日の勝利を受けて、彼は次の様なコメントを発している。

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ブーイングは大歓迎。でも、韓国応援団のブーイングは物足りなかった。
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喧嘩を吹っ掛けている様にも受け取れる内容。報道によると、「韓国チームが日本との2回目の対戦で勝利を収めた後、韓国の或る選手が大極旗をグラウンドに突き刺した。」とか、「一昨日の試合ではイチロー選手のフライをキャッチした三塁手が、そのボールをイチロー選手に向かって投げ付けた。」という。その他にも、韓国チームの敬意を欠く行為が少なからず在ったとも言われている。

もしそうで在れば、イチロー選手が感情的になる気持ちも判らないでもないが、だからと言ってそんな相手と同じ土俵に乗ってしまってどうするの?という思いがそれ以上に在る。

賢明な彼だからこそ、そして超一流選手の彼だからこそ、そんな”煽り”を軽く受け流し、逆に憐憫の情を持って発言して欲しかった。否、寧ろ韓国メディアが煽り始めた段階で、黙して語らずの姿勢で在って欲しかった。黙する事は決して相手への迎合阿り等では無く、自らの気高さを守り、そして高める事にこの場合は繋がったと思う。彼を素晴らしい選手と認めているからこそ残念でならない。

一昨年、日本プロ野球界に合併騒動が巻き起こった際、多くの人がナベツネに怒りを覚えたのは何故だったか?彼が発したたかが選手という一言が大きく影響しているのは確かだろう。言った側の人間としては大した意味合いを感じずに発した言葉かもしれないが、受け取った側の立場からすると許し難く感じられる事はまま在る事。言葉とはそれだけ重みを持ったものだと思う。

野球とは格闘技だ。試合中は喧嘩腰で在っても良いだろう。でも、アスリートとして互いを敬する気持ちが無ければ、それは本当の喧嘩に過ぎない。

一流選手が集う素晴らしい大会の陰で、冗談半分で言っている部分も在るのだろうが、日韓の”一部の人間”が不毛な罵り合いをしている事は非常に残念。

何はともあれ今日の決勝戦では、日本チームが最高のパフォーマンスを発揮し、世界一の栄冠を勝ち取ってくれる事を期待したい。又、世界一になる事が、此処迄日本チームを苦しめてくれた強い韓国チームに対する、最大限の敬意にもなると信ずる。

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10 コメント

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即レス!! (hiro)
2006-03-21 02:36:52
そうですね、試合をするのは選手なんですから!!

監督で客を呼ぼうという姿勢も如何なものか・・・

東スポ系ですから、あまり気にはしてません。



今日のキューバとの決勝気になるなぁ・・・

あっしは仕事なのですよ。

リアルタイムでは観れません。

勝って初代王者になって欲しいデス!!

頑張れ!王ジャパン!!
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イチロー (帆印)
2006-03-21 06:55:01
う~ん

イチローが発した言葉を何度も映像で流していた日本のメディアに、驚いたなぁ

「SH○T!」じゃなく「FU○K!」だったしな、

あれアメリカ国内でも言うことに、ためらうのに、あれを何度も流した日本の映像が理解できなかったと、アメリカ人の友人が嘆いていたくらいだ・・・。まあ、やったのはイチロー本人だから仕方ないことだな。それだけ、世間は彼を見ているって事だね。追いかけられるんじゃないかな、これから先も・・・。

思いやられるとは思うが・・・。

今日も仕事だ、儀式が出来ないかも(笑)

しかし、日本がんばれよ。



追記:初めて被れたJAPANの帽子、子供のように舞い上がったという。そんなイチロー選手を見てみたかったな。

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Unknown (miyashiro)
2006-03-21 10:23:29


いつも楽しく拝見しています。



個人的には、「向こう30年...」発言は、意気込みを語る発言なので問題なく良いと思うのですが「不愉快」発言は、ちょっと不適切な発言だったかもしれません。「悔しかった。屈辱でした」程度なら問題なかったかと思います。とはいえ、大極旗をグラウンドに突き刺したシーンは、さすがに私も「不愉快」...いや「悔しかった」です。



日本選手は韓国戦に勝って、みんなとても喜んでいましたが、妙な(やりすぎな)パフォーマンスがなくてよかったと思います。それが、王率いる日本チームの美徳だと感じます。



さぁ、いよいよ決勝戦。私もそろそろ戦闘(TV観戦)モードの準備にはいります!
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あえて紳士的友好的なムードにしたくなかったのでは (久保課長)
2006-03-21 17:22:59
私なりの解釈ですが・・・

イチローのこれらの発言は、このWBCが野球を介した国と国との威信を賭けた戦いであることを強調して、そういう観点から今回から始まるこの大会自体を盛り上げていこうと意図したものだと思います。そこには、オリンピックのように参加することに意義があるような国際親善的なものではなく、ナショナリズムのぶつかり合いを前面に出したサッカーワールドカップを意識したものがあるのかもしれません。良い、悪いは別にして、サッカーW杯では過去にそれを機に実際の戦争(ホンジュラス対エルサルバドル)が起こったことすらあるほど国全体を熱狂させるイベントですから。

また、彼を弁護するわけではりませんが、「不愉快」というのは韓国チームがはしゃいでることそのものが不愉快というより、そういう光景を見せつけられる敗北という結果しか出せなかった、本来は自分たちがあのようにはしゃぐはずだったということを悔いるがゆえの不愉快だったのではないでしょうか。勝った相手を祝福するヒマがあったら自分を恥じるべき、負けたけどよく頑張ったとかはありえない、それくらい国同士の戦いは厳しいものなんだ、この大会はそういう位置づけなんだということをチームメイトをはじめ試合を見てる人たちにアピールしたかったのだと推測します。まぁそういうニュアンスを伝えきれず、一般的な意味での「不愉快」と捉えられてしまったのはイチロー自身の表現の至らなさだとは思いますけど。
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Unknown (やぎ)
2006-03-21 18:32:11
あ、僕も久保課長さんと同じ意味で「不愉快」をとらえましたよ。

どちらかというと世間で騒がれてから

「あーそういうとらえ方もあるのか」

と思ったくらいです。



もっと感情的で「殺したろかい!!」的な雰囲気でやるもんだと思うんですけどね、国際試合って。
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Unknown (Sango-Q)
2006-03-21 18:47:00
私の個人的な受け止め方ですが、

「むこう三十年云々・・・」は「圧倒的な強さで勝つ、くらいの意気込みで行く」

「不愉快でしたね」は「負けたことが不愉快」ということだと思いました。

また今大会においては、イチロー選手はわざと過激な発言をしたようにも感じられました。

世界一を決する戦いには、それくらいの闘争心が必要だと自分自身に言い聞かせていたのではないでしょうか。

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>久保課長様 (giants-55)
2006-03-21 20:46:24
書き込み有難うございました。



イチロー選手は非常にクレバーな人間だと思っています。ですので、開幕前のコメント(「戦った相手が『向こう30年は日本に手は出せないな。』という感じで勝ちたいと思う。」)に関しては、彼なりに大会を盛り上げたい、チームの士気を鼓舞したいという思いが在った様に感じます。



そして、問題の「不愉快」発言ですが、最初にあれを耳にした時には、自分もチラッと「自らの不甲斐なさを詰る意味合い」での不愉快という事なのかなあとも思いました。でも、あの試合で勝った韓国チームの選手がマウンドに大極旗を突き刺していたという報道を目にして、グラウンドを神聖な場と捉えて”いるで在ろう”イチロー選手にとっては、その場が汚された(これは大極旗だからどうこうという事ではなく、仮に日の丸で在ったとしても、グラウンドに「突き刺した」という行為そのものが受け容れられなかったのではないかと。)様に思え、不愉快としたのではないかという思いになりました。



又、一昨日の勝利後の発言(「ブーイングは大歓迎。でも、韓国応援団のブーイングは物足りなかった。」)が、これ迄以上に挑発的なニュアンスを”自分としては”感じられた事も、不愉快発言が自らの不甲斐なさ云々よりも、相手に対して為されたのではないかなあという思いを強くさせました。



元々は韓国メディアが難癖を付けたという感が在りますので、どちらかと言えばイチロー選手に同情的では在るのですが、でもONに匹敵する程の素晴らしい実績を残している彼だからこそ、つまらない事で非難されてしまうのは勿体無い気がして、余計に余り過激なニュアンスで言わなければ良いのになあと感じたんです。



とは言え、日本チームを身体を張って引っ張ってくれた一人がイチロー選手で在る事は間違い無く、ここ数年の彼へのマイナス・イメージが大きく変ったのは事実です。公式戦でも彼には頑張って貰いたいです。
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>Sango-Q様 (giants-55)
2006-03-21 21:04:44
書き込み有難うございました。



一連のイチロー選手の発言、「ブーイングは大歓迎。でも、韓国応援団のブーイングは物足りなかった。」というのだけは、具体的に相手を明示して語っていますが、それ以外のものは具体的に誰某と明示している訳ではないんですよね。ですから、Sango-Q様が書かれておられる様に、人によって受け取るニュアンスが異なるのは当然と言えば当然なのだと思います。



そもそもは、大会を盛り上げる為、そしてチームの士気を鼓舞する為に、意図的に刺激的な発言をイチロー選手はしたのだと思っています。彼はそれだけクレバーな選手だと信じています。



それが、韓国メディアが”妙な形”で食い付いて来た為、正直彼も面食らったのではないかと。彼の発言は、特定国を意識して言ったものでは無かったと思うからです。余りの反応の鋭さに、さしもの彼もややカチンと来て、必要以上に強いニュアンスをそれ以降口にしてしまったのではないか。何かそんな思いが在ります。



彼が凄い選手で在る事は事実。だからこそ、彼の言動はチーム内外に大きな影響を及ぼす。それが判っていたからこそ、敢えて過激とも思える発言を意識してしたのだとは思いますが、凄い選手だけに逆にもう少し上手いニュアンスで伝えられなかったかなあと残念です。もっと上手いニュアンスで伝えていたならば、日韓の”一部のファン”とはいえ、口汚く不毛な遣り合いをする事は無かったのではなかろうかと感じました。
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やったネ、ニッポン! (ミザリィ)
2006-03-22 00:17:17
日本の野球世界制覇、本当に嬉しかったです。

ホント、日本人でよかったなぁ、なんて思うコトって少ないですよネ?

私個人は、イチロー選手と同じ国に生まれてよかったなぁなんて思います。



言葉はコミュニケーションの身近な手段です。

その言葉の価値は、永遠に変わらないと思いますヨ。

ただ、若い世代の人がボキャブラリーに乏しくなりつつあるのは、私も感じますネ。

会話の中に擬音が多くなってきていて、なんとなく考えて喋るより、口が先に動いているような気がしないでもありません。

私自身は、頭の回転が遅いようで、オシャベリしていてもゆっくり喋っているようですが、現代っ子の時間に追われるような喋り方には、少し同情を感じます。



イチロー選手は「野球人」であり、オシャベリのプロではありませんから、「口が滑った」ようなトラブルは大目に見てあげるべきではないでしょうか?

そう言う意味では、韓国メディアの方が大人げないように、私は感じました。

私の印象では、あまり多弁な方には思えません。

そんな人が怒りを露わにする発言をされたのは、余程、腹に据えかねたモノがあったのではないか?と思います。

以前にも、こちらのブログで審判のコトが書かれていましたが、勝利を妨げる不純要素が、今大会には少し多かったようです。



以前、御紹介したかもしれませんが、ミザリィは2年前まで、小学校の教員をしていました。

生徒の名前を覚えるのは、やっぱり難しかったですネ。

覚えた頃には新学期が始まってる(笑)

聞いた話だと、出世のコツは人を覚えるコトなんだとか?

なにか良い方法、ありませんかネ?

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戦士の休息 (まなぶ)
2006-03-22 23:03:11
いつもコメントを有難うございます♪



昨年のドラマ出演前後から、イチロー選手の意外な素顔?が垣間見られ始めていたような気がしています。

記者たちの前で、少年のような笑顔をみせてくれたり、以前のイチロー選手からは聞く事の出来なかったようなコメントなどなど・・。

 以前の樹木希林さんのお話でも触れましたが、人間、何かをきっかけにして、ある時からフイッと世の中が違って見えてきたりすることがあるのではないでしょうか。それは本来の自分を曝け出せるといったことであったり、人生観まで変えてしまうことであったりと、さまざまだと思いますが。

“悟り”などという言葉を使うと語弊があるかもしれませんが、ある境地、レベルを超えた人間に備わる自信のような気がします。

今回のイチロー選手の発言、真意は測りかねますが、言葉の足りなさゆえに誤解や批判もされましたが、私には沈着冷静さだけではない、イチロー選手の熱情を感じられて、みていて好感を持てました。

本日、日本に帰国した選手たちの会見をみていて、イチロー選手のムード作り、チームーのアプローチのエピソードを聞いて、ますます確信を持てた気がします。

今はゆっくりと骨休めをさせてあげたいと思いますネ〆
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