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「最強生物・熊虫が、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに」(4月18日、ニューズウィーク日本版)
熊虫は想像を絶する程の過酷な環境を生き延びる事が出来る生物だが、其の生命力の謎が解明される可能性が出て来た。
熊虫は其の愛らしい姿から、水グマやコケブタと呼ばれているが、極端な高温や低温、高圧・低圧、空気不足、放射線、脱水、更には宇宙の真空状態に至る迄、殆どの生命体にとって死を招く環境に耐える事が出来る。
最近、学術誌「カレント・バイオロジー」に掲載された論文によれば、此の頑健な生物が放射線を生き延びるメカニズムが解明された。
体長僅か0.5mmの熊虫は、様々な環境で生息している。苔、落ち葉、淡水や海洋の堆積物等に生息している事が多いが、高温の沸騰泉、ヒマラヤ山脈の頂上、水深4千mの深海でも発見されている。
熊虫は、信じられない程極端な環境に耐える事が出来る。150度の高温、-270度の低温でも、数分間生存可能だ。何十年もの間、食べ物や水無しで過ごす事が出来るが、此れは水分含有量を通常の1%以下に迄減らし、クリプトビオシスと呼ばれる状態に入って、代謝活動を実質的に停止させる事が出来るからだ。
此の奇妙な生物は、高レヴェルの放射線にも強く、殆どの生物を死に至らしめる放射線量の千倍以上の放射線を浴びても、生き延びる事が出来る。放射線は生物のDNAを傷付け、突然変異、癌、組織死等を引き起こし、生物の死を招く。
今回の論文によれば、ドゥジャルダンヤマクマムシという熊虫の一種は、DNA修復遺伝子を増幅させる事で、放射線によるDNA損傷を修復している可能性が在る事が判った。
「私達は、目にした物に驚いた。」と、ノースカロライナ大学(UNC)チャペルヒル校の熊虫研究者、ボブ・ゴールドスタインは、此の論文の序論で、こう述べている。「熊虫は、予想もしなかった事をしている。」。
熊虫のDNA修復分子は体内に溢れ、強烈な放射線被曝による損傷を、迅速に修復する。人間にもDNA修復遺伝子は在るが、熊虫に比べると発現のレヴェルは、遥かに低い。
「熊虫は、放射線に対して驚くべき反応を示した。其れが、驚異的な生存能力の秘訣の様だ。」と、UNCアッシュビル校の生物学助教授で、ゴールドスタインの研究室の博士研究員だったコートニー・クラーク=ハッテルは、論文の序論で指摘した。「熊虫が放射線ストレスを克服する方法に付いて私達が学んでいる事は、他の動物や微生物を有害な放射線から守る方法に関する新しいアイデアに繋がる可能性が在る。」。
又、熊虫のDNA修復遺伝子は、常時大量に発現している訳では無く、放射線を検出した時に反応して、発現量が上昇している事も判った。
「熊虫は電離放射線を感知し、特定のDNA修復経路遺伝子を大量に亢進させている。此の能力は、『DNAの完全性を維持する解決策の進化形を表しているかも知れない。』という仮説を立てている。」と、論文は述べる。
科学雑誌イーライフに掲載された査読前論文によれば、フランスの研究者達も、全く独立した実験で同様の結果を得ており、其の結果、放射線損傷からDNAを保護する可能性の在る、新しい熊虫蛋白質も発見したと言う。
「各研究所の結果が独立した形で、互いの研究結果を裏付けている事に、感動している。」と、ゴールドスタインは語った。
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地球上の超過酷な環境、所謂“極限環境”で生き抜く生物は結構存在するそうだが、熊虫は其の中でも“最強の存在”と言えるだろう。自分が熊虫の存在を知ったのは、もう大分昔の事になるが、「こんな凄い生物が存在するのか!」と驚いてしまった。中でも、放射線への耐性は、唖然とする許りだ。
「熊虫は何故、放射線への耐性が在るのか?」に関する理由、「DNA修復遺伝子が、異常に高いレヴェルで存在しているから。」と判明した訳だが、次は「何故、こんなにも異常に高いレヴェルのDNA修復遺伝子を作り上げる事が出来たのか?」を究明して欲しい。
大変興味深い記事ですね。
クマムシの遺伝情報の解明と応用が進めば、いずれそれをヒトにも応用できるようになるのかも。
ひとつ間違えればとんでもなく恐ろしいことが起きそうですが、知性で上手にコントロールできれば、スーパーマンが現実になる可能性も。
火星や金星といった過酷な惑星でも、最小の生命維持装置だけで暮らせるようになるかも。
不老不死というのは、独裁者に適用されると、こんなに怖い物は無い。熊虫の遺伝情報の応用も、そういう怖さは在りますね。
でも、自分も「惑星で生活する為の応用が出来るかも。」という夢を思い浮かべていました。物事って何でも、メリットとデメリットが在るんですよね。