ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「検察側の罪人」

2014年04月21日 | 書籍関連

**********************************

検事は何を信じ、何を間違えたのか?

 

東京地検ヴェテラン検事・最上毅(もがみ たけし)と同じ刑事部に、司法修習所教官時代、教え子だった沖野啓一郎(おきの けいいちろう)が配属されて来た。

 

或る日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、1人の容疑者の名前に気付いた。今から17年前、大学生だった最上が入居していた寮で、管理人・久住(くずみ)夫妻の娘で中学生の由季(ゆき)が殺害された。管理人夫婦には大変世話になり、そして自分にも懐いていた由季を殺めた、憎き犯人。既に時効を迎えてしまった此の事件で当時、重要参考人目されるも、容疑不十分逮捕には到らなかった男・松倉重生(まつくら しげお)の名前が、今回の刺殺事件の容疑者の1人として記されていたのだ。

 

彼が今回の事件の犯人で在るならば、最上は今度こそ裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ち始める。

**********************************

 

雫井脩介氏の小説検察側の罪人」。アガサ・クリスティー女史の小説&戯曲に「検察側の証人」というのが在るが、「検察側の罪人」というタイトルは、此の有名過ぎる作品を意識して名付けた物と思われる。

 

ブログで何度か書いた事だけれど、「正義」とか「愛国」とかという概念は非常に曖昧で、時には危険さも有する。人其れ其れに「正義」や「愛国」の“中身”が異なり、其れを「唯一無二的に正しい。」と振り翳し他者強いるというのは、相手の心身危害を加える事で在るからだ。

 

正義とは、一体何なのか?、そんな事を考えさせられる内容。「極刑処されるべき犯罪を起こし乍らも、容疑不十分で逮捕されない、時効によって“罰”を免れた者が居る。長い月日を経て其の人物が別の殺人事件の容疑者として自分の前に現れるも、此の件に関しては犯人で無い可能性が極めて高い。」、そんな場合、どうすれば良いのか?冤罪が絶対に許されないのは判っているが、こういうケースが非常に悩ましいのも事実。近しい人間を殺害された者ならば、余計にそうだろう。

 

最上も沖野も、「正義感の強さ」という点では似た人物。司法修習生として抜きん出た成績では無かったものの、沖野の正義感の強さを含めた素質の高さを、教官として買っていた最上。そんな最上を、沖野も慕っていた。沖野が最上と同じ検事の道に進み、そして最上と一緒に事件を追う事になった時、2人の間に軋み生じ始める。

 

正義感の強い者同士が、が信じる正義を貫くべく、片や”を踏み外し、片や“道”を突き進む中での軋み。何方の思いも判るだけに複雑な思いになるし、結末は哀しくも在る。「こんな奴のに、自分は正義を貫かなければならなかったのか!?」という沖野の心の叫びが、行間から伝わって来るからだ。

 

総合評価は星4つ後味は決して良く無いが、“読ませる作品”なのは間違い無い。


コメント    この記事についてブログを書く
« 田舎の香水 | トップ | 頭打ちも当然か »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。