ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ようこそ、わが家へ」

2013年10月19日 | 書籍関連

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真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一(くらた たいち)は、或る夏の日、駅のホームで人の列を無視して車内に入り込もうとした男を注意した。

 

すると、其の日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐ様になる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死の猫が投げ込まれた。更に、車は傷付けられ、部屋からは盗聴見付かった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。

 

一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長・真瀬(まなせ)に不正の疑惑を抱いた事から、窮地へと追い込まれて行く。

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池井戸潤氏の小説「ようこそ、わが家へ」。タイトルだけだと「ほんわかした感じの作品」の様にも感じるが、執拗なストーカー攻撃と社内トラブルに懊悩させられる50過ぎ男の話で在る。

 

勤務先の銀行から“使えない人間”という烙印を押され、取引先の1つで在る中小企業に出向させられた倉田は、御人好しで真面目な人柄。家庭は円満なれど、銀行からは追い出され、出向先では“余所者”として扱われ続ける彼が、車内に割り込もうとした男を注意した事で、執拗なストーカー攻撃に遭う様になってしまう。公私両面で、大きな悩み事を抱える事になった訳だ。

 

巨大な敵と闘う主人公が、周りの人間達の支えによって奮起し、様々な困難を乗り越えて行く。というのは池井戸作品(特に経済小説)の特徴だが、此の作品も其の例外では無く、倉田の家族や部下が彼を支えている。

 

「普通に考えれば、恨みを買う様な事は一切していないのに、恨みを買ってしまう。」という事態が、近年は増えている様に感じる。「向けられるべきでは無い悪意を、素性の判らない人間から向けられる。」というのは、恐怖以外の何物でも無いだろう。

 

読後爽快感を覚える事が池井戸作品には多いのだが、「ようこそ、わが家へ」に関しては、爽快感と「何か嫌な感じ」とか相半ばした。「何か嫌な感じ」が残ったのは、ストーカーが“本当に”反省したのかが疑問だったり、ストーカーに対して或る人物が“攻撃”し返した事等が原因。「自分がな事をされたのだから、相手にも嫌な事をしても構わない。」というのでは、負の連鎖を生むだけだと思う。

 

とは言え、池井戸作品は面白い。一気に読了してしまったし。総合評価は、星3.5個とする。


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-10-21 09:18:58
なんか嫌な感じ、わかります。 趣味のレザークラフトの会の皆さんから妻に贈られたオルゴールの中に事件とは関係のない盗聴器が見つかったこと、それからいまどきの大学生の長男のとった行動ですね。 盗聴器があるから盗聴発見器も家電街で売っている。 そもそもの電車の列の割り込み行為。 陰湿な嫌がらせ、他人の才能への妬み。 出向という言葉自体が、世のサラリーマンにとってはとても嫌な言葉でもあります。 ただ、池井戸潤さんのこの作品に描かれているおやじはとても典型的な日本のやさしい大人、ふつーのお父さんで、職場では外様というとてもアルアルなキャラクターで親近感が持てました。 家族も仲良しでよかった。 もちろん結末もハッピーエンドで。
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>マヌケ様 (giants-55)
2013-10-21 10:05:40
書き込み有難う御座いました。

オルゴールの件及び長男の件、何方も然も在りなんという感じでは在るのですが、家族の団結という流れが良かっただけに、長男の件は個人的に後味の悪さを残しました。

でも、決して強いとは言えない普通の主人公を、家族や部下が支えるという所は凄く良かったし、其の点にはホッとさせられましたね。
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