モルガン・スタンレー等を経て、投資会社でM&A等を手掛ける“ぐっちーさん”なる人物が、AERAで「ぐっちーさん ここだけの話」というコラムを連載中。8月4日号では「又も散蒔き 地方創生1兆円」というタイトルで、政府の相次ぐ“散蒔き手法”に疑問を呈している。
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「又も散蒔き 地方創生1兆円」
消費増税の影響も在って、日本経済が可成り苦しい状況になりつつ在る、と前号で書きました。政権側も其れが判っているのか、彼の手此の手で散蒔きを始めています。其の極め付きは、安倍晋三首相を本部長とする「地方創生本部」を設け、地方活性化に1兆円の予算を付ける、という物です。
覚えていますか?1989年4月の消費税導入に際し、竹下内閣が「ふるさと創生」と称して、全国の市町村に1億円ずつ散蒔いた事を。御蔭様で、日本中に何の役にも立たない物が乱立しました。今回も結局、自民党は散蒔く事しか頭に無い様です。しかし、其の所為で財政が更に悪化し、増税しなくてはいけなくなる訳で、そうした悪循環をどうして断とうとしないのか、疑問でなりません。
地方の人口減少を食い止める-其れが目的らしいのですが、では30年前から今日に至る迄、何故地方の人口は減り続け、東京等の大都市に人が集中したのか?其の原因をはっきり突き止めもせず、地方の人口減少を食い止めると言っても、又無駄な補助金を使って大企業の工場を誘致する、なんてのが関の山。其れでは根本的な地方再生にはなりません。
其れに、電機や自動車産業の工場を誘致出来たとしても、業績が悪くなったので撤退しましたという事例は枚挙に遑が無い。そういった産業は、最も激しい競争に晒されている訳で、そんな企業を援助して工場を誘致した所で、グローバル化の波に攫われるだけなのですよ。
地方都市の人口を増やす為には、子育て支援策が必要-という話も良く耳にするのですが、此れも理解に苦しみます。抑、親の仕事が無くて、どうやって子供の面倒を見ろというのですか?地元の若者でさえ、皆東京に働きに出ているのに、どうして都会から人を連れて来られるのですか?其の思考回路が、全く判りません。
司法の人口を増やすには、旧ソ連が遣った様に、強制移住でもさせない限り、不可能。此の儘で行けば、数年の内に上下水道の様な基本的なインフラさえ維持出来なくなる市町村が続出します。そうならない為に、遣れる事は一つ。人口が減少する中でも効率良く経済を回し、潰れない様にする-其れだけです。どんなに立派なホールを建てたって、御客さんが来ないのでは墓石と同じ。そんな風景を、又日本全国に増やす積りなのでしょうか。
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「『地方活性化の為に使う。』という名目で、1988年から1989年に掛けて、各市町村に1億円が交付された。」のが、所謂「ふるさと創生事業」だ。「地方活性化対策」と言えば尤もらしいが、「1989年導入が決まった消費税への国民の反発を恐れた竹下内閣が、支持率低下を食い止めんが為に、前代未聞の散蒔きを行った。」というのが、実際だったと思っている。
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の開催等、少なからず意義が感じられる物も在るには在ったが、各地方自治体の1億円の使途の多くは「純金の鰹像制作」やら「村営キャバレーの設置」やらと、不毛な箱物作りに費やされ、結局は維持費等が嵩んで、地方活性化どころか地方不活性化させてしまった。
国民の多くが反対している“自身の趣味”許りを推し進め、支持率を下げさせない為に、パフォーマンス三昧の安倍首相。民意を完全無視した結果、支持率が下がり始めた途端、ガス抜きを図る為に持ち出したのが、今回の“散蒔き手法”と言える。来年、消費税の更なるアップを企図している彼にとって、「此れだけ散蒔けば、愚かな国民は騙されるに違い無い。」とでも思っている事だろう。
「無駄な支出をどんどん削り、子孫の為にも、国の借金を少しでも減らさなければいけない。」と、あんなにも多くの国民が騒いでいた筈なのに、安倍政権下で次々に繰り出される不毛な散蒔きに対して、大歓迎とは言わない迄も、反対の声が大勢にならない不思議さ。繰り返され様としている愚行に疑問を感じないのは、思考回路がストップしてしまった国民が増えているからなのだろうか?