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薬物依存症患者やDV被害者の女性達が暮らすシェルターで発生した火災。「先生」事小野尚子(おの なおこ)が入居者を救い、死亡。盛大な「御別れの会」が催された後、警察から衝撃の事実が告げられる。
「小野尚子」として死んだ遺体は、別人の物だった。ライターの山崎知佳(やまざき ちか)は、過去を調べる内に、嘗て「女」を追っていた記者に辿り着く。一方、指導者を失ったシェルター内では、じわじわと不協和音が・・・。
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篠田節子さんの小説「鏡の背面」を読了。彼女の作品を読むのは初めて。「“慈愛に満ちた篤志家”として知られる女性・小野尚子が、火災事故に巻き込まれて死亡するのだけれど、火災現場から見付かった遺体を調べた所、小野尚子とは別人の物と判明する。『自分達が小野尚子と信じていた女性は、一体誰なのか?』、彼女の正体を調べる中で意外な事実が明らかとなる。」というストーリー。
“成り済ましとして入れ替わっていた女性”と“成り済まされた女性”との間に、余りの違いが在る。何故、こんなにも違う女性が長期間、別人格を演じて来られたのか?作者の篠田さんは、此の作品のテーマを“自我の脆さと不思議さ”としているが、「完璧に他人に成り済まそうとする余り、其の他人の人格に引き摺り込まれてしまう。」という事が在るならば、自我の脆さと不思議さ以外の何物でも無いだろう。
530頁を超える大長編。だらだらとしてストーリー展開に加え、登場人物達のキャラクターに魅力が感じられなかった事も在って、読み進めるのがしんどかった。
総合評価は、星3つとする。