今回読了した小説「蒼色の大地」(著者:薬丸岳氏)は、中央公論新社の創業130周年を記念して発刊された小説誌「小説BOC」の企画によって書かれた作品。「『人と人との対立』というキーワードで、『“海族”と“山族”の血筋を引く者同士は、ぶつかり合う運命に在る。』という設定等、幾つかの要素を共有した上で、8組の小説家達が、原始時代から未来迄の其れ其れの時代の物語を書く。」という企画で、先日読了した伊坂幸太郎氏の「シーソーモンスター」は、“昭和のバブル期”を舞台にした「シーソーモンスター」と、“近未来”を舞台にした「スピンモンスター」という2つの中編小説で構成されていた。「蒼色の大地」は、明治の時代を舞台としている。
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19世紀末。嘗て幼馴染みであった新太郎(しんたろう)、灯(あかし)、鈴(すず)の3人は成長し、其れ其れの道を歩んでいた。新太郎は呉鎮守府の軍人に、灯は瀬戸内海を根城にする海賊に、そして鈴は思いを寄せる灯を捜し、謎の孤島・鬼仙島に辿り着く。
“海”と“山”。決して交わる事の無い2つの血に翻弄され、彼等は軈て此の国を揺るがす争いに巻き込まれて行く。
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薬丸岳氏と言えば、「現代人の心の中に存在する、様々な問題を提起する作風。」で知られている。薬丸作品は全て読了して来たが、記憶違いで無ければ今回読了した「蒼色の大地」は、彼にとって“初の時代小説”で在る。
従来の薬丸作品を期待して読んだ人、特に時代小説を読まない人からすると、“期待外れ”と感じるかも。でも、個人的には面白かったし、“彼の新たな取り組み”を評価したい。
総合評価は、星3.5個とする。