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「リクエスト導入 ヒット」(5月14日付け東京新聞[朝刊])
プロ野球は、開幕から1ヶ月余りが経過した。今季は監督がリプレー検証を要求出来る「リクエスト」制度が導入され、例年以上にベンチワークに注目が集まるシーズンとなっている。監督の手腕がより試される様になった一方、昨季迄見られた審判員への猛抗議は減りつつ在る。
3月30日の開幕戦から積極的に使われたリクエスト。判定が覆るケースとなったのは、ロッテの井口資仁監督だ。楽天との開幕戦。1回の守りで併殺を狙ったプレーで1塁がセーフと判定されたが、検証を要求し、一転アウトに。併殺が完成した。
大記録の可能性が絶たれた例も在った。4月4日の「西武-ソフトバンク」戦では、西武のファビオ・カスティーヨ投手が6回1死迄1人の走者も許さない完全投球。17人目の打者は1ゴロに打ち取ったかに思われたが、ソフトバンクの工藤公康監督が権利を行使し、内野安打となった。
日本野球機構(NPB)によると、5月3日迄のセ・パ両リーグ計163試合で、リクエストは71回使われた。此れは2.3試合に1度のペースだ。此の内、判定が覆る「成功例」は26回在り、36.6%に上る。友寄正人審判長は「想定はしていなかったが、そんなに在るんだなという感じ。」と受け止める。対象プレーは、試合後に必ず検証していると言う。
井口監督が「試合のリズムを変える面も在る。」と指摘する様に、成否によっては勝敗を左右する可能性も在る。リクエストの度に試合は中断する為、相手投手のテンポを乱す目的で使う事も在るかもしれない。
「9回迄に、2度しかないリクエスト。」を行使出来るのは監督だけ。勝負所を見極め、限られた権利を何処で使うのか。此れ迄以上に指揮官の手腕が問われている。
今季、監督等が審判員に詰め寄って猛抗議する様なシーンは、殆ど見られない。嘗て広島、楽天を指揮したマーティ・ブラウン氏はベースを投げて、抗議を示した。こういった行動がチームの一体感を生み出す事も在っただけに、プロ野球の面白みが減ったと感じるファンも居るかもしれない。
だが、極一部のリクエスト対象外のプレーを除き、「機械の目」による判定が可能になったメリットは大きい。DeNAのアレックス・ラミレス監督が「映像を見て、ファンが一喜一憂するのは良い事。」と話す様に、検証中は球場の大型ヴィジョンで審判員が見ているのと同じ映像が流され、ファンも選手も納得した上で、試合を進められる。後々迄物議を醸す様な「疑惑の判定」は激減するだろう。
試合時間の間延びが懸念されるが、3日時点で今季の平均試合時間は、セが3時間13分、パは3時間12分。昨季終了時と比べ、セは1分延び、パは2分短くなり、現段階では大きな影響を及ぼしているとは言い難い。
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以前にも書いたが、「プロ野球の試合を、“全て”機械判定にする。」というのは大反対。“人の目”では確かに“誤審”も発生し様が、其れが“スパイス”になる事“も”在る。誤審を防ぐ必要性は認めるけれど、だからと言って「全てを機械判定で。」となってしまうと、余りに杓子定規で、“潤い”が無くなってしまう様に思うからだ。
又、NPBでリクエスト制度が導入する以前、リプレー検証が導入された試合を観戦したけれど、行使回数が“無制限”だった事から、無闇矢鱈と行使され、其の度にプレーが中断。試合が間延びした感じとなり、非常に辟易とさせられた。
そういう事も在り、リクエスト制度を懸念していたのだけれど、回数制限が設けられた事や、「検証中は球場の大型ヴィジョンで、審判員が見ているのと同じ映像が流される事で、ファンも選手達も納得出来る環境が作られている。」事から、「導入は良かった。」と考える様に。
其れにしても、「リクエスト行使は、2.3試合に1度のペース。」や「判定が覆る『成功例』は36.6%。」というのは、想像していた以上の割合だ。
逆に、昨シーズンまで、これほどの割合で誤審が存在していた(かもしれない)という現実に驚愕です…。
リクエスト制度の導入により、審判団は例年以上に慎重なジャッジを心掛けていたと思うんです。リプレー検証で判定が覆る割合が多ければ、“審判団の目”に対する信頼感が下がるだろうから。
そういう状況下、“誤審率”が3分の1強だったという事実に、自分も驚きました。「一般人よりは遥かに“優れた目”を持っている筈の審判団ですら、こんな感じなのか。」と。
でも、そういう事で在っても尚、自分は“機械による全判定”というのは反対。其れじゃあ余りに無機的で、潤いが無くなってしまいそうなので。