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頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男が、何故不遇の死を遂げたのか?
下級武士から筆頭家老に迄まで上り詰めた戸田勘一(とだ かんいち)は、刎頸の交わりで結ばれた竹馬の友・磯貝彦四郎(いそがい ひこしろう)の行方を追っていた。
2人の運命を変えた、20年前の事件。確かな腕を持つ彼が、「卑怯傷」を負った理由とは?彼は何故、破廉恥な行為で逐電する事になったのか?軈て、其れ等の真相が明らかとなり・・・。
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「永遠の0」、「モンスター」、「プリズム」、「海賊とよばれた男」、「夢を売る男」に続き、今回の「影法師」で百田尚樹氏の小説は、6作品読了した事になる。「此の人は、同じ場所に留まり続ける事を好まないのだろうな。」と改めて思う程に、彼は小説の題材を様々な分野に求めており、「影法師」は武士の世界を描いている。
1970年代に大ヒットした漫画「愛と誠」。昨年、4回目の映画が公開となったが、漫画の中で使われ、当時流行語となった言葉に「早乙女愛よ、岩清水弘は君の為なら死ねる!」というのが在った。超優等生の岩清水弘が、清純な令嬢・早乙女愛に強い恋心を抱き、彼女に向かって吐いた言葉。「ストーカー」と紙一重な感じがしないでも無いが、「我が身を賭しても、相手を守り抜く。」という思いは、生半可な物では無い。身内に対してなら未だしも、血の繋がりの全く無い他者に対して我が身を賭せるというのは、自分には到底無理だ。
「影法師」とは「光が当たって、障子や地上等に映る人の影。」を指すが、此の小説の中では「他者の為、其の影法師となって生きた人物。」を意味している。此れ以上、彼此と書くのは無粋な気がするので控えるが、全ての事実が明らかとなった時、其れ迄の“彼等”の関わりが改めて脳裏に甦り、泣けてしまった。現実社会では、先ず無いで在ろう事だけに・・・。
総合評価は、星4つ。