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「ホテル・コルテシア大阪」で働く山岸尚美(やまぎし なおみ)は、或る客達の“仮面”に気付く。一方、東京で発生した殺人事件の捜査に当たる新田浩介(にった こうすけ)は、1人の男に目を付けた。事件の夜、男は大阪に居たと主張するが、何故かホテル名を言わない。殺人の疑いを掛けられてでも、守りたい秘密とは何なのか。御客様の“仮面”を守り抜くのが彼女の仕事なら、犯人の“仮面”を暴くのが彼の職務。2人が出会う前の、其れ其れの物語。
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昨夏に刊行された東野圭吾氏の小説「マスカレード・イブ」は、4つの短編小説から構成されている。尚美や浩介等、知っているキャラクターが登場するものの、設定等に違和感を覚え乍ら読み続けていたのだが、最後の作品「マスカレード・イブ」(書き下ろし作品)で「此の記述、前に読んだ事が在る様な・・・。」と思い、状況が全て判った。
東野氏は4年前に、「マスカレード・ホテル」という小説を刊行しているが、今回の作品は「マスカレード・ホテル」よりも前の時代という設定なのだ。「マスカレード・ホテル」で出会い、そして“事件”によって良い仲になって行った尚美と浩介。そんな2人が出会う前の話が「マスカレード・イブ」。
浩介が“初登場”する「ルーキー登場」は、もやもやとした思いが残る、後味の良く無い作品。「秀でた推理力を有し乍らも、“真犯人”を追い詰める迄には到らなかったルーキーの浩介が、此の挫折を糧に、刑事として大きく成長して行くで在ろう事。」を予感させるストーリーでも在る。
全体的に言えば、「東野作品としたら、凡庸な感じだなあ。」というのが読後感。其れ其れの結末は想定内だったし、充足感よりも物足り無さを感じてしまったので。
総合評価は、星3つとする。