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「今年の夏は食べられない 鰻老舗店が次々に閉店」(5月17日付け日刊ゲンダイ)
今年の夏は、鰻を食べられないかもしれない。鰻の稚魚が3年連続の不漁で高騰し、鰻屋が次々に店を閉じ始めているのだ。
都内だけでも今年3月末に、創業65年「寿恵川」(高円寺)、4月末に創業35年「吉川」(月島)、5月中旬に創業65年「弁慶」(上野)と、老舗店が廃業に追い込まれている。
「今年は国産だけでなく、中国、台湾、韓国産とアジア全てで不漁です。国産の鰻の卸売値は、1kg当たり9,000円、中国産でも1kg当たり5,000円程度。此処2年の値段は上がりっ放しです。鰻屋の仕入れ値は昨年の2倍。8年前の10倍。此れでは幾ら売っても赤字です。」(築地の卸売業者)
流通ジャーナリストの金子哲雄氏も深刻な事態をこう解説する。「現在、鰻は稚魚の高騰により、業者も手に入れるのが難しい。鰻丼1杯の適正価格は3,000円前後と、例年の3倍近くになりそうな勢いです。此れ迄は物流コストのカットや大量仕入れ等、企業の経営努力でコストダウンして来ましたが、其れも限界に達しています。最早値頃感の在る価格に迄下げる事は出来ません。一般家庭に於て、鰻は縁遠い存在になるでしょう。」
ファミレスの「華屋与兵衛」は、鰻の量が確保出来ない事から「鰻重」の販売をストップした。スーパーも売る事を諦めている状況だと言う。
「例年、GWは春の丑の日として多くの小売店が特売をするのですが、「今年は商売にならない。」と止めてしまった所が多い。」(前出の卸売業者)
前出の金子哲雄氏もこう続ける。「スーパーマーケット側も頭を抱えています。今年の土用の丑の日は、鰻の量を減らして楽しんで戴く『鰻玉丼』を提案したり、代替品として『穴子丼』等で、キャンペーンを打つ可能性も在りますね。」
スーパーの一部では、苦肉の策として米国の天然物も扱い始めていると言う。
「評判は悪いです。脂が乗っておらずパサパサで、形も不揃い。しかも輸入して来た時には、3分の1は死んでいる為、歩留まりが悪いのです。其れでも、此の状況下ではノー・クレームで買わなきゃいけないのが現状です」(前出の卸売業者)
庶民は食べるのを諦めるか、米国産で我慢するしかないという事か。
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鰻の値段が高騰しているのは知っていたが、其の事で鰻屋、其れも創業35年とか65年といった超老舗の鰻屋が、次々に閉店に追い込まれる事態になっているとは全く知らなかった。鰻は庶民にとって決して安い食材では無く、「或る程度の高値で売られるのは仕方無い。」と多くが思っているで在ろうが、とは言え、余りにも高値になってしまうと、流石に手が届かなくなってしまう。ギリギリの線の高値を付けて踏ん張って来たけれど、止むに止まれず其の線を越えた高値を付けてしまった所、客足が一気に遠退き、閉店に到ったという鰻屋も在るのだろう。
「超老舗の鰻屋が、次々に閉店している。」という報道にも驚かされたが、閉店規模で言えばもっと驚かされた報道が。
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「本屋を襲う“倒産ラッシュ”!1日1店が店仕舞い」(5月24日、ZAKZAK)
街の本屋が危ない。ネット社会の広がりと長引く不況を背景に本を購入するマインドが縮小。調査会社の調べでは、1日に1店の割合で消えていると言う。待ち合わせや暇潰しにも貴重だった巷の空間が虫の息だ。
東京・新宿の大型書店「ジュンク堂新宿店」が3月に閉店した。「入居していた『新宿三越アルコット店』が閉店した事に伴った物ですが、ジュンク堂はテナントとして残ろうと(オーナー側と)交渉していました。でも、(賃料等)諸条件が折り合わなかった様です。」(流通アナリスト)
長引く不況で大手書店でさえ再編、撤退を強いられる中、体力の無い街の本屋は言わずもがな。業界の環境は可成り厳しい。
書店調査会社のアルメディア(東京都豊島区)の調査によると、全国の書店数は5月1日現在、1万4,696店。昨年同月の1万5,061店から365店が減った。1日当たり1店が閉店した計算になる。
都道府県単位の増減では、大阪の56店減を筆頭に東京の48店減以下、マイナスだらけで47都道府県中、42の自治体で店舗が縮小。増えたのは、大手書店等が出店した長野(5店)と栃木(3店)の2県だけだった。
アルメディアでは「書店業界の全体的な売り上げが落ち込んでいる。中でも資本力の無い小さな書店が可成り厳しい。」と注目する。
民間信用調査機関の東京商工リサーチが纏めた「書店の倒産件数」を見ても苦戦は歴然とし、2011年の倒産は計25件で、負債総額は35億300万円。2010年は34件(同約34億円)、2009年も35件(同約43億円)と一定の水準で潰れていっている。
同リサーチでは「簡単にネットから情報が取れる事や、新型古書店や漫画喫茶等二次流通市場の広がりも影響している。個人商店の様な所は、負債を抱える前に自分の代で店を閉めて廃業する傾向も強い。正直、淘汰の歯止めが掛からない。」(情報部)。
消え行く身近な“知”の宝庫。街もどんどん味気無くなって行く。
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抑、書店は「薄利多売の商売」と言われている。本以外の物“も”販売しているケースは別だろうが、本だけを販売している場合、可成りの量を売らないと厳しいと聞く。だから6年前の記事「万引」で書いた様に、「1冊の本を万引された場合、同じ本を5冊売らないと穴埋め出来ない。」そうだ。
そんな厳しい状況が在った上で「書店業界の全体的な売り上げが落ち込んでいる。」、「長引く不況。」、「二次流通市場の広がり。」、そして「店舗を持たない、インターネット書店の広がり。」等の追い撃ちを掛けられれば、“街の小さな書店”が持ち堪えるのは、そりゃあ厳しい事だろう。
「実家が、地方で書店を営んでいる。」という知り合い(主婦)が居るけれど、随分前より親から「家の様な小さな書店は、今でもかすかすの利益しか出ない。将来的には、もっと酷い状態になるだろう。だから、店は継がなくて良い。自分達の代で、店は閉じるから。」と言われ続けていたそうだ。
村長様が「ネット通販の時代」という記事の中で書かれているが、様々な利点からインターネット等を使った通販は益々勢いを増して行くのだろう。家に居乍らにして欲しい本が購入&入手出来る、其れも送料無料でという事になると、店舗を構えた書店が苦戦するのも当然と言えば当然。
でも、本好きの自分は特に用が無くても、書店で過ごす時間というのが堪らなく好き。本を手に取ってパラパラと頁を捲り、気に入った本が在れば購入する。予想もしていなかった面白い本に出遭った時なんぞは、何とも言えない幸福感を感じたりする。
だから、店舗を持った書店が次々に閉店しているというのは、非常に寂しい話。(「1日当たり1店が閉店している計算。」というのを目にして、昔読んだ本のタイトル「生物が一日一種消えてゆく-滅びの動物学」を思い出した。)街の小さな書店が少しでも多く残って欲しいので、本は出来るだけ通販では無く、そういった書店で買う様にしている。
卸しがジャンプみたいなある程度の部数が見込める雑誌を地方の小規模書店に廻してくれなくなって(コンビニに廻すため)、それで嫌になってやめたと言っていました。長年の信頼関係を無視して大資本を優先するやり方が露骨過ぎる、と。21世紀になった頃かな。ネットによる書籍販売が流行る前だったけど、本人には苦渋の決断だったようだが、止め時としては良かったのかなと思いますね。傷が深くならないうちだったから。
で、かつての上客に廻さずにコンビニに廻しすぎて返品の山になってる出版業界を「ホントバカだ。足洗ってよかった。でも悔しい」と嘆いていました。
こういう話、まあOA機器や町の写真屋さん(フジフィルムなど大手もあまり小規模な町の写真屋に商品を廻してくれないらしい)、電器屋でも聞く話ですけどね。余談だけどパナソニックは町の電器屋さんを結構大事にしてくれる数少ない大手らしいので最近のニュース、辛いです。まあ三洋ブランド消滅の際、パナより三洋の商品のほうがいいのになとボヤいていた消費者なんで勝手な感想(そしてどちらかというと日立・東芝製品派なのでますます勝手ではあるが…)
「此の店は、何で潰れないんだろう?」と不思議に感じてしまう、所謂「商店街の小さな御店」というのが在ったりします。しかし以前、「“表面的には”儲かっていなさそうだけれど、実は結構儲かっている御店。」という特集がTV番組で組まれており、其の内容を見て「そういうケースも在るのか。」と納得させられました。
客の出入りが殆ど無いクリーニング屋や花屋、写真屋等を取り上げていたのですが、「学校や寺等と契約を結び、行事が在る際には商品を納入する様になっている。」、「インターネットでの販売をメインにしている。」、「特別な技術(例えば「超頑固な染みを抜く。」等。)を売りにしている事で、高価な商品が一定量売れる。」等の理由が挙げられ、中には年商1億円を超える御店も在ったりしました。
AK様の御知り合いの方は、上手く商売替えが出来たケースですね。自身が扱って来た商品への思い入れが強ければ強い程、其の商売からの撤退を決断するのは、身を割かれる思いだった事でしょう。でも「結果良ければ、全て良し。」で、本当に良かったですね。
商売をしている以上、利益を追求するのは当然の事。しかし、余りに利益を追い求める中で、古くからの付き合い等、「心」の部分を蔑ろにしてしまうと、長期的に見れば商売は上手く行かない事が多い気がします。