若くて爽やかな男性教師が、と或る学校に居た。生徒や親、そして同僚からも「良い先生」と見做されていたのだが、或る日、一人の女生徒が別の教師に相談を持ち掛けた事で彼の“本当の顔”が明らかに。カンニングしている現場を其の教師に見付かってしまった彼女は、其の後彼から継続的に金銭と肉体を求められる様になり、悩み抜いた結果、別の教師に相談したのだった。件の男性教師を呼び出して事実か否かを問い質すも、彼は一貫して否定。「僕がそんな事をする訳が無いじゃないですか。」と笑顔すら浮かべて否定する彼だったが、件の女子生徒から「卑猥な写真を何度か撮られた。」とも聞いていた事も在り、「君のロッカーや机の中を調べさせて貰うよ。」と言った所、彼の態度が急変。オドオドし出した彼を横目にロッカー等を捜索すると、卑猥な写真が次々に見付かった。彼女一人だけでは無く、他の女生徒数人も彼の毒牙に掛かっていたのだ。ロッカー等からは、他にも悪事の証拠が発見。校内に盗撮カメラを仕掛けていた事も、親から徴収していた金銭を横領していた事も、同僚が職員室に置いていた財布を盗んでいた事も、全て白日の下に晒された。
しかし此の事実は、一部の教師と生徒だけしか知らされなかった。学校の体面、そして保身を最優先に考えた上層部が、事実を闇に葬り去ったからだ。件の男性教師は病気で休養という形を取らされ、数ヶ月後に“何事も無かったかの如く”他の学校へと異動したのだった。
此れは物語の梗概では無く、10年近く前に某学校で起こった実話だ。内部に居た人間から聞いた話だが、件の男性教師は今でも平然とした顔で働いているのだろう。再び悪事に手を染めていなければ良いのだが・・・。
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晨光学院町田高校に勤務する若き英語教師・蓮見聖司は明るくユーモアのセンスも在る事から、生徒から絶大な人気を集めていた。彼を慕う女子生徒達が“親衛隊”を作る程の人気振りで、又、校内に於ける揉め事も一手に引き受け&解決する事から、教師達の間でも一目置かれる存在。
しかし、そんな非の打ち所が無い彼に対し、疑惑の念を持つ教師と生徒も居た。彼等は聖司の過去を探り、やがて恐ろしい事実を突き止める。高いIQを有する聖司は、“サイコパス(反社会性人格障害)を抱えた連続殺人鬼”という真の姿が在ったのだ。躊躇無く人を殺め続ける彼はやがて・・・。
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7月に刊行された「悪の教典」(著者:貴志祐介氏)を読み終えた時思ったのは、「久々に貴志テーストを感じさせてくれる作品。」という事だった。大ベスト・セラーとなった「黒い家」や「青の炎」が顕著なのだけれど、人間の持つ邪悪さを「此れでもか!」とばかり読者の前に曝け出している。読んでいて感じるのは嫌悪の念ばかりで、爽快さなんぞは皆無と言って良い。けれど、人間には「正義」を望む一方で、「悪」に心を動かされてしまう部分も正直在り、ストーリーにはぐいぐい引き込まれてしまった。
嘗ての人気ドラマ「高校教師」(動画)、手塚治虫氏の漫画「MW」、そして映画「バトル・ロワイアル」等と似たテーストを持つ作品。上&下巻併せて8百頁以上も在る長編だが、面白くて一気に読み終えてしまった。「星4つを与えても良いかな。」とも思ったが、上記の如く非常にテーストの似た作品が過去に在った点、そして貴志作品にしては文章の精緻さに欠けるという点を減点ポイントとし、総合評価は星3.5個とする。
しかし此の事実は、一部の教師と生徒だけしか知らされなかった。学校の体面、そして保身を最優先に考えた上層部が、事実を闇に葬り去ったからだ。件の男性教師は病気で休養という形を取らされ、数ヶ月後に“何事も無かったかの如く”他の学校へと異動したのだった。
此れは物語の梗概では無く、10年近く前に某学校で起こった実話だ。内部に居た人間から聞いた話だが、件の男性教師は今でも平然とした顔で働いているのだろう。再び悪事に手を染めていなければ良いのだが・・・。
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晨光学院町田高校に勤務する若き英語教師・蓮見聖司は明るくユーモアのセンスも在る事から、生徒から絶大な人気を集めていた。彼を慕う女子生徒達が“親衛隊”を作る程の人気振りで、又、校内に於ける揉め事も一手に引き受け&解決する事から、教師達の間でも一目置かれる存在。
しかし、そんな非の打ち所が無い彼に対し、疑惑の念を持つ教師と生徒も居た。彼等は聖司の過去を探り、やがて恐ろしい事実を突き止める。高いIQを有する聖司は、“サイコパス(反社会性人格障害)を抱えた連続殺人鬼”という真の姿が在ったのだ。躊躇無く人を殺め続ける彼はやがて・・・。
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7月に刊行された「悪の教典」(著者:貴志祐介氏)を読み終えた時思ったのは、「久々に貴志テーストを感じさせてくれる作品。」という事だった。大ベスト・セラーとなった「黒い家」や「青の炎」が顕著なのだけれど、人間の持つ邪悪さを「此れでもか!」とばかり読者の前に曝け出している。読んでいて感じるのは嫌悪の念ばかりで、爽快さなんぞは皆無と言って良い。けれど、人間には「正義」を望む一方で、「悪」に心を動かされてしまう部分も正直在り、ストーリーにはぐいぐい引き込まれてしまった。
嘗ての人気ドラマ「高校教師」(動画)、手塚治虫氏の漫画「MW」、そして映画「バトル・ロワイアル」等と似たテーストを持つ作品。上&下巻併せて8百頁以上も在る長編だが、面白くて一気に読み終えてしまった。「星4つを与えても良いかな。」とも思ったが、上記の如く非常にテーストの似た作品が過去に在った点、そして貴志作品にしては文章の精緻さに欠けるという点を減点ポイントとし、総合評価は星3.5個とする。