ジャイアンツの先発・菅野智之投手は好投した(5回と3分の1を投げて1失点。)が、如何せん投げ合った相手が悪かった。今季、レギュラー・シーズンでは「24勝0敗1セーヴ」と、1つも負けていない田中将大投手だったから。
取り敢えず1点は取れたのだから、「手も足も出ない」では無く、「手」位は出せたけれど、ジャイアンツ打線は田中投手を打ち崩せなかった。「予想通りの結果」では在るのだが、気になるのはCSを勝ち抜いたとはいえ、ジャイアンツ打線の調子が低迷し続けている事。田中投手が先発した試合は勝てそうも無いので、残りの試合は全部勝たないとジャイアンツの日本一は無いと思っている。本拠地に戻り、29日からの第3戦からは、打線が爆発してくれれば良いのだが・・・。
閑話休題。
子供の頃、父親とゲームをすると、本気になって勝ちに来る為、自分は負けて許りで楽しく無く、「もう止める。」と中断する事が結構在った。父親は負けず嫌いな所が在ったので、「『子供が相手で在っても、勝負に徹する勝負の厳しさを、子供で在っても知った方が良い。』といった“教育方針”だったのかも。」と中学生位の時には思っていたのだが、父親が亡くなって暫く経った頃、母親から意外な話を聞かされた。
「『子供との遊びなんだから、ああも向きにならなくても良いじゃないの。』と、御父さんに聞いた事が在るの。そうしたら御父さん、『俺は子供の頃、親父から遊んで貰った事が殆ど無いので、子供とどう遊んだら良いのか、良く判らないんだ。だから、ついつい向きになってしまう。』と答えたんで、『そういう事だったんだ。』と思ったのよ。」と。子煩悩な父親に、そんな過去が在ったなんて全く知らなかったし、「自分が父親から遊んで貰った経験が殆ど無いので、子供とどう遊んだらいいのか、良く判らない。」という思いを父親が抱えていたというのは、凄く可哀想に思ったもの。
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大手建設会社に勤め、都心の高級マンションで妻・みどり(尾野真千子さん)と6歳の息子・慶多(二宮慶多君)と暮らす野々宮良多(福山雅治氏)。或る日、慶太を出産した産院から電話が在り、慶太が取り違えられた他人の子だと判明。みどりは気付かなかった自分を責め、一方良多は、優し過ぎる息子に抱いていた不満の意味を知る。
良多は、相手方の家族と戸惑い乍らも交流を始めるが、群馬で小さな電気店を営む斎木雄大(リリー・フランキー氏)とゆかり(真木よう子さん)夫婦の粗野な言動が気に入らない。
「過去の取り違え事件では、多くが血の繋がりを選択する。」と言うが、息子に一心な愛情を注いで来たみどりと、温かで賑やかな家族を築いて来た斎木夫婦は、育てた子を手放す事に苦しむ。「子供を交換するならば、早い方が良い。」と言う良多の意見で、遂に“交換”が決まるが、其処から良多の本当の“父”としての葛藤が始まる。
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エリート街道を歩み続け、今は大手建設会社に勤務し、家庭よりも仕事を最優先している良多。他者に対する思い遣りに欠け、「勝負には、何が何でも勝たなければいけない。」といった思いを持つ彼は、様々な面で無機的&冷徹な印象を受ける。一方、町の小さな電気店を営む雄大からは、ずぼらさや小市民的小狡さが伝わって来る。生活水準や家庭環境等、あらゆる面で異なる2人は、何も無ければ一生交わる事が無かったのだろうが、“赤ん坊の取り違え”という過去が、2人を交わらせる事に。
粗野な言動を見せる斎木夫婦に、良多は冷ややかな視線を浴びせ続けるが、「自らが御腹を痛めて産んだ。」という共通経験を有するみどりとゆかりは、徐々に親しい関係となって行くが、其の事も良多を苛立たせて行く。
斎木夫妻の気持ちを全く考えずに、「慶太と(斎木夫婦が息子として育てて来たが、良多にとっては実子の)琉晴(黄升君)の2人共下さい。」と口にする良多。「(琉晴は)犬や猫じゃ無い!否、犬や猫だって『欲しい。』と言われても、『はい、そうですか。』と渡せるものじゃ無い!」と怒りを露わにする斎木夫妻。「自分さえ良ければ、他者の事なんか知ったこっちゃ無い。」といった思考が、良多からは透けて見える。
「自分の子供ならば、箸の持ち方がきちんと出来て当然。」、「自分の子供ならば、『誰にも負けない位に、ピアノが上手くなりたい。』と思って当然。」、「自分の子供なら、有名小学を受験して入学するのは当然。」等々、良多の中には「自分の子供ならば、~でなければならない。」といった“決まり事”が幾つも在り、其の決まり事に子供を嵌め込む事に汲々としている感じがする。
誕生日祝いをする等、息子の慶太に対する愛情が無い訳では無いのだろうが、仕事を最優先せて慶太と向き合う時間が少ない良多。思うに「自分の子供なら、~でなければならない。」という自身が定めた決まり事の多さ、そして「其れ等を慶太に守らせなければいけない。」という事に、自らが気付かない内に疲れ果てしまい、「仕事」に逃げてしまっていた面が強いのではないだろうか。
「もう少し、子供と向き合った方が良いのではないか?」とする雄大に対し、「人には、其れ其れの考え方が在る。自分は仕事が忙しい。」と、雄大のずぼらさを皮肉る様な返答をする良多。其れに対し雄大が返した言葉、「『父親』というのも、大事な仕事だぞ。」は非常に重かった。
「~でなければならない。」という意識の強さが、何に起因しているのか?良多の過去が明らかになって行く中で、其れが判って行く。「子供の頃、父親と一緒にした凧揚げが楽しかった。」と思い出を語る雄大に、「僕は、親父からそういう風に遊んで貰った事が無いので。」と答える良多。「父親から遊んで貰った経験が無いので、子供とどう遊んだら良いのか、良く判らない。」と言った父親の言葉が、重なり合ってしまった。
「其れ迄の関係性」よりも、「血の繋がり」という物を最優先させ、そして息子の交換を決めたかの様な良多。取り違えが明らかになった後、良多が口にした或る言葉を、妻のみどりは「絶対に許せないし、一生忘れない。」と詰るのだが、其の気持ちは痛い程良く判る。「自分の子供なら、~でなければならない。」という思いが強過ぎて口にしてしまったのだろうが、子供は親の操り人形じゃ無いのだ。
血の繋がらない或る親子の姿を見、自身の過去を振り返る中で、良多の中で“其れ迄に無い思い”が生まれて行く。「父親の真似事」をしていた彼が、「本当の意味での父親」になろうと思い至る。
子供達のいじらしい言動に、何度も涙してしまった。野々宮家に引き取られ、良多達に懐いたかの様な琉晴。親子3人で夜空を見上げていた際、流れ星に祈りを捧げる琉晴に「何を願ったのか?」と聞くと、「パパとママの所に帰りたいって・・・ごめんなさい。」と顔を覆う琉晴。育ての親の元に帰りたいという思いと、実の親に対する申し訳無さを口にする6歳の少年。余りにもいじらしく、此の場面では爆泣き。
赤ん坊の取り違えに関しては、9年前に「産みの親、育ての親」という記事を書いた。其の際には専ら「取り違えられた子供の立場」を思って記したのだけれど、今回の映画では「子供を取り違えられた親の立場」で「自分だったら、どうするだろうか?」と自問自答。血が繋がっていないからという理由で、ずっと我が子として育てて来た子供を手放したくは無いし、同時に取り違えられた実子も一緒に育てたいという思いも在る。そうなると、「慶太と琉晴の2人共下さい。」と言った良多と一緒になってしまうのだけれど・・・。
以前、福山氏が、自身の家庭に付いて語っていた。子供の頃、決して恵まれた家庭環境にはなかったという彼は、だからこそ「家庭という物に夢が持てない。」という趣旨の発言を。そんな彼だからこそ、今回の役には複雑な思いが在ったろうと推測する。
「家族の形って、何なんだろう?」、「血が繋がっていなければ、本当の親子とは言えないのだろうか?」等、色んな事を考えさせれらた。最初から最後迄、こんなにも感情移入させられ続けた映画は、本当に久し振りだ。
総合評価は、星4.5個。
7回の彼の判定、自分も誤審だと思います。ジャイアンツ・ファンとしては、「彼の誤審が無かったら・・・。」という思いは確かに在るのですが、同時に「彼の場面で2点目が入らず、1点の儘だったら、恐らく寺内選手にホームランを打たれる事も無かったんじゃないかなあ。」と思ったりもします。其れだけ、田中投手の「1点も与えないぞ!」という気迫は凄かった。後味の悪い負けでは在りましたが、「田中投手と菅野投手の投げ合い」は見応えが在った。
「家庭環境というのは、凄く子供に影響を与えるんだなあ。」というのを、強く感じました。父親で在る良多の過度な期待に応え様とする余り、常に父親の目を意識し、小さくなってしまっている様な慶多。一方、ずぼらでは在るけれど、子供と一緒になって遊んでくれる父親の雄大の下、自由闊達な子に育った琉晴。遺伝子学で言えば、琉晴が良多の子供な訳ですが、もし琉晴が最初から良多の下で育てられていたら、あんなにも自由闊達な子供にはならず、慶多の様な感じになっていたかもしれませんね。
ネタバレになってしまいますが、子供に対して「自身の理想」を押し付けていた良多も、子供の頃は別れた母親が恋しくなって家出をしようとしたり、ピアノが嫌で止めたりしていた過去が在った。マヌケ様が指摘されている様に、彼自身も家庭環境によってパーソナリティーが歪められてしまったという面が在り、色々考えさせられました。