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美容室「シーズン」を営む岩本万季子は息子・正樹が小学2年になった春、夫・清原圭介と離婚。建築事務所を起ち上げ、忙しさの余り帰宅しない日々が多く続いた圭介と、仕事と育児に追われた万季子との間に擦れ違いが生じた結果だった。そして正樹が私立小学校の6年生になった或る日、近所のスーパー「フレッシュサクマ」から万季子に電話が入る。「正樹が万引きしたので、店に来る様に。」との電話だった。
フレッシュサクマを訪れた万季子は、店長の佐久間秀之から脅迫される。「正樹が万引きシーンが防犯カメラに収められており、其れを30万円で買い取れ。買い取らなければ、警察に通報する。」と言うのだ。「警察に通報されてしまったら、名門中学の受験を予定している正樹の人生が狂わされてしまう。」と恐れた万季子は元夫の圭介と話し合い、30万円を払う事にしたのだが、狡猾な秀之は更に万季子の肉体を要求して来た。「このままでは、際限無く揺すられる。」と恐れた万季子と圭介は万引きの翌日夜中、意を決して秀之の下を訪れるが、万季子達が目にしたのは人気の無いオフィスに横たわる秀之の射殺体だった。
事件の捜査に当たる刑事・飛奈淳一。秀之の腹違いの弟で、サクマ産業の重役を務める佐久間直人。そして万季子と圭介。彼等は小学校時代の同級生で、非常に仲が良かったのだが、23年前の小学6年の時に発生した或る殺人事件によって、彼等の人生は大きく変わってしまった。そして今回の殺人事件に、23年前の殺人事件が関係している事が判り・・・。
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第56回(2010年)江戸川乱歩賞を受賞した横関大氏の「再会」(受賞時のタイトルは「再会のタイムカプセル」。)。過去、同賞の最終候補に3作品が残ったと言う横関氏。(8年連続で同賞に応募。)「三度目の正直」ならぬ、「四度目の正直」で栄冠を掴み取った事になる。
「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」等、ミステリーには幾つかの禁じ手が存在する。今となっては禁じ手と言えなくなってしまった項目も在るのだが、“ミステリーの女王”と呼ばれるアガサ・クリスティー女史の作品の中にも、発表当時は「禁じ手を使っている!」と大論争を巻き起こした作品が幾つか在る。小学校の同級生だった4人の視点を通してストーリーが展開して行く此の作品も、昔だったら「禁じ手を使っている!」と批判される可能性が在ったと思う。ネタバレになるので詳細は書かないが、クリスティー女史の名作「アクロイド殺し」と似た部分が在るからだ。
「過去」と「現在」が交錯する展開も、巧みな筆力で読み手に混乱を来させない。ストーリー自体も面白く、スイスイ読み進めてしまう。しかしミステリーを読み込んでいる人間だったら、早い段階で真犯人及び其の動機が読めてしまう懸念も。自慢になってしまって恐縮なのだが、自分は完璧に的中させてしまったし。そういった物足りなさが在ったのは、否定出来ない。
総合評価は星3つとする。
美容室「シーズン」を営む岩本万季子は息子・正樹が小学2年になった春、夫・清原圭介と離婚。建築事務所を起ち上げ、忙しさの余り帰宅しない日々が多く続いた圭介と、仕事と育児に追われた万季子との間に擦れ違いが生じた結果だった。そして正樹が私立小学校の6年生になった或る日、近所のスーパー「フレッシュサクマ」から万季子に電話が入る。「正樹が万引きしたので、店に来る様に。」との電話だった。
フレッシュサクマを訪れた万季子は、店長の佐久間秀之から脅迫される。「正樹が万引きシーンが防犯カメラに収められており、其れを30万円で買い取れ。買い取らなければ、警察に通報する。」と言うのだ。「警察に通報されてしまったら、名門中学の受験を予定している正樹の人生が狂わされてしまう。」と恐れた万季子は元夫の圭介と話し合い、30万円を払う事にしたのだが、狡猾な秀之は更に万季子の肉体を要求して来た。「このままでは、際限無く揺すられる。」と恐れた万季子と圭介は万引きの翌日夜中、意を決して秀之の下を訪れるが、万季子達が目にしたのは人気の無いオフィスに横たわる秀之の射殺体だった。
事件の捜査に当たる刑事・飛奈淳一。秀之の腹違いの弟で、サクマ産業の重役を務める佐久間直人。そして万季子と圭介。彼等は小学校時代の同級生で、非常に仲が良かったのだが、23年前の小学6年の時に発生した或る殺人事件によって、彼等の人生は大きく変わってしまった。そして今回の殺人事件に、23年前の殺人事件が関係している事が判り・・・。
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第56回(2010年)江戸川乱歩賞を受賞した横関大氏の「再会」(受賞時のタイトルは「再会のタイムカプセル」。)。過去、同賞の最終候補に3作品が残ったと言う横関氏。(8年連続で同賞に応募。)「三度目の正直」ならぬ、「四度目の正直」で栄冠を掴み取った事になる。
「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」等、ミステリーには幾つかの禁じ手が存在する。今となっては禁じ手と言えなくなってしまった項目も在るのだが、“ミステリーの女王”と呼ばれるアガサ・クリスティー女史の作品の中にも、発表当時は「禁じ手を使っている!」と大論争を巻き起こした作品が幾つか在る。小学校の同級生だった4人の視点を通してストーリーが展開して行く此の作品も、昔だったら「禁じ手を使っている!」と批判される可能性が在ったと思う。ネタバレになるので詳細は書かないが、クリスティー女史の名作「アクロイド殺し」と似た部分が在るからだ。
「過去」と「現在」が交錯する展開も、巧みな筆力で読み手に混乱を来させない。ストーリー自体も面白く、スイスイ読み進めてしまう。しかしミステリーを読み込んでいる人間だったら、早い段階で真犯人及び其の動機が読めてしまう懸念も。自慢になってしまって恐縮なのだが、自分は完璧に的中させてしまったし。そういった物足りなさが在ったのは、否定出来ない。
総合評価は星3つとする。