ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「メビウス・ファクトリー」

2016年10月22日 | 書籍関連

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の住民の殆どが働く巨大工場然し其処で何が作られているのか、実は、誰も知らない。


妻子を連れて地元の町にUターン就職し、町一番の工場に就職したアルト。
完璧な管理システムを持った工場は、町民の誇りと憧れの存在だったが、
アルトは働き続ける内、徐々に工場の“秘密”に気付き始め・・・。

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不可思議奇妙奇天烈な世界を舞台にした作品を、好んで描く作家三崎亜記氏。今回読了した小説メビウス・ファクトリー」も、そんな作品だ。

 

ブラック企業を辞め、妻子を伴って戻って来たアルトの地元は、「ME創研」なる工場が町を“支配”している。現金は一切存在せず、工場から渡されたパスで全て支払いを済ます。何か在れば町民達が手伝ってくれて、交通網が整っている事から自家用車は必要無い。町民の殆どは、此の町に住んでいる事に幸福感と誇りを持っている。但し、自由に町外へは出られない。“北の国”を想像させる町だ。

 

意味不明なスタイルで、“P1”なる物を製造する工場。「“真心”を込めてP1を作り上げる事が、全ての幸せに繋がる其の事を否定したり、疑問を持ったりする事は許されない。」というのは胡散臭い宗教団体を想像させるし、延いては「『挙国一致』や『尽忠報国』、『進め一億火の玉だ』等のスローガン掲げて国民を統制し、戦況が悪化しても、『我がは勝利に勝利を重ねている。』と嘘の“大本営発表”を流し続けた戦時中日本。」と重なってしまう。

 

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ねじれたメビウスの輪の上でも、何も見ず、何も考えずに歩き続ければ、平坦で歩きやすい道がどこまでも続く。だが、足元を一旦見つめてしまえば、自分がねじれた空間にいることに気付いてしまう。嘘にまみれた世界を『歩かされている』ことにね。それは不幸なことだよ。気付いてしまえば、ねじれた部分から振り落とされてしまう。それがなら・・・。

 

彼は窓の外に目をやり、眩しそうに目を閉じた。その先には、新たに設置された四人の勇士がある。

 

目をつぶることだね。そうすれば、足元がねじれていることなど気にかけることもなく、元の通りに平坦な道を歩くことができるよ。

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多様性を一切認めず、国が示す方向性に少しでも疑問や抵抗を示す“異分子”は、徹底的に“駆除”し様とする。」、そんな雰囲気が強くなっている我が国に在って、此の小説は必ずしも“非現実的な世界”を描いているとは言えないのかもしれない。

 

総合評価は、星3.5個とする。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2016-10-22 17:06:24
昨日からニュースで話題になっている、大阪から派遣されている機動隊員による「土人」発言。
これを見ていて、最近つくづく思うのは、人に誇れるほどの財産や地位といったものを持たない「弱者」同士が、互いに争い傷付けあっていて、それらを持つ少数の「勝者」が時々「建前」を言うだけであとは高みの見物をしている構図。

富める者がますます富む中で、弱者が互いに不信感で監視しあい、社会全体を閉塞感と無力感が覆う。
今や北朝鮮だけでなく、日本やアメリカ合衆国をも包むこうした空気が、世界をどこに向かわせるのか。
「明日」に乞うご期待。
事実は小説よりも奇なり。
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>悠々遊様 (giants-55)
2016-10-22 18:52:11
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

「土人発言」に「支那人発言」。デモ隊の中には所謂“プロ市民”が混じっていた“かも”しれないし、そうで無くても、行き過ぎた抗議を見せる人が居たの“かも”しれない。だけれども、国家権力を背景にし、時には強圧的な対応も可能な立場の人間としては、どういう挑発が在ったにしても、こういう発言をするのは許されない。発言してしまったという事は、心の中に相手を見下し、自分達を上と思う気持ちが在ったと思う。

又、「差別的な意識は無かった。」と言っている様だけれど、ネット右翼が好んで使用する様な言葉を吐いたというのは、とても差別意識が無かったとも思えない。

実際には自民党の支持者だったのに、TPPに抗議するアピールを目の前でされた事で、彼等を自身のツイッターで「左翼」と断じ、批判した安倍首相。無根拠な決め付けをし、相手を愚弄するという風潮は、国のトップの姿勢に影響を受けていないとは言えない。

日本のみならず、世界中で“フラストレーションを晴らす為の弱者叩き”が盛んになっている。嫌な御時世です。
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