「『日活』に付いて、どういうイメージが在る?」と問われると、世代によって答えは大きく分かれるのではないだろうか。“映画黄金時代”をリアル・タイムで知っている世代だと、「石原裕次郎氏や小林旭氏、浅丘ルリ子さん等が活躍していた『日活』。」というイメージだろうし、今の若い人達だと「他の映画製作会社より地味。」とか、中には「良く判らない。」という答えが返って来そう。で、自分の世代で言えば「日活」では無く、「にっかつ」と平仮名で書かれていた、成人映画の「にっかつロマンポルノ」*1を製作していた会社というイメージが非常に強い。今だから言えるが、中学2年か3年の時に学校をサボって、当時歌舞伎町に在った“ポルノ映画館”に観に行った事も在る。「どう見ても未成年だったろうに、良く入れてくれた物だ。」と思ってしまうが、エッチなシーンに興奮しつつ、「ストーリー自体も面白かった。」のを覚えている。
何でこんな話を書いたかと言えば、昨日、移動中の車内で聞いていたラジオ番組で“ピンク映画”*1を取り上げていたからだ。正確に言えば、“ピンク映画出身の監督達”を取り上げていたのだが、改めて「“名監督”と呼ばれる人達の少なからずが、ピンク映画に関わって来た。」事を感じさせられた。
「お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法」というブログを運営されているKei様が、12年前に「『おくりびと』受賞で思うこと― ピンク映画出身である事を何故隠すのか」という記事を書いておられる。自分が考えていたのと同じ事を的確に纏めておられるので、其方を読んで戴きたいのだが、滝田洋二郎氏や周防正行氏、高橋伴明氏、和泉聖治氏、井筒和幸氏、黒沢清氏、瀬々敬久氏、磯村一路氏、沖島勲氏、山本晋也氏、若松孝二氏、金子修介氏、根岸吉太郎氏、中原俊氏、そしてKei様の記事では取り上げておられなかったが藤田敏八氏等々、実に多士済々な有名監督達がピンク映画出身なのだ。
今ではそういう事は無くなった様に感じるが、昔は“特撮番組出身の俳優”というと一般的に、一段低く見られていた。だから、特撮番組出身の俳優の中には、“黒歴史”として触れない様な人も存在した。特撮番組を見て育ち、特撮番組が大好きな自分には、そういう事がとても悲しかった。「“熱量”が、ドラマや映画の作り手達よりも劣っているとは全く思わなかった。」からだ。ピンク映画も同様で、一段低く見られている様な所が在ったけれど、決してそんな事は無い。ストーリー的に面白い作品は在ったし、何よりも作り手の熱量を強く感じる物が少なく無かった。
「ピンク映画は、低予算&短時間での製作が求められる。そんな非常に厳しい条件下、『どうしたら観客を喜ばせる作品が作れるか?』に監督達は腐心し、揉まれて行く中で映画作りのノウハウを学んで行く。こういうタフさを経験しているからこそ、ピンク映画から有為な人材が育って行ったのだろう。」という趣旨の指摘をKei様はされているが、自分も同感だ。
*1 記事をアップした後、Kei様から書き込みを頂戴し、「ピンク映画」の正しい定義を知るに到った。詳しくはコメント欄を読んで戴ければと思うが、「ピンク映画に、にっかつロマンポルノは含まれない。」そうで、「ピンク映画とにっかつロマンポルノを“総称”するならば、『ポルノ映画』とした方が良い。」との事。Kei様、情報有り難う御座いました。
あの記事を書いてから、もう12年も経ったのですね。
で、細かい事ですが、giants-55様の当記事について、ちょっとだけ誤解されている点がありますので補足させていただきます。
まず、「ピンク映画」の定義ですが、これは若松プロや獅子プロといった“ごくマイナーな独立プロダクションが作る成人向け映画”の事でして、大手映画会社の日活が作るロマンポルノは、作品内容は同じ成人向け映画であっても、「ピンク映画」とは呼ばれておりません。
wipipediaの「ピンク映画」を参照しても「日本のポルノ映画のうち、大手(一般的には日本映画製作者連盟加盟の4~6社を指して呼ぶ)以外の映画製作会社によって製作・配給された作品のこと」とあります。
従いまして、日活の助監督から1本立ちしてロマンポルノで監督デビューを果たした金子修介、根岸吉太郎、中原俊といった方たちは、ピンク映画出身とは呼べないと思います。この方々とピンク映画出身の監督たちとをまとめて総称するなら、「ポルノ映画出身」とするのが妥当でしょう。
また藤田敏八、長谷部安春などはロマンポルノも多く監督しているのは間違いないですが、スタートが日活の一般映画で、それまで多くの青春映画、アクション映画を監督しておりますので、「ポルノ映画出身」監督とも呼べないと思います。
細かい事申し上げて恐れ入りますが、以上の点、ご理解いただければ幸いです。
ピンク映画の範疇ににっかつロマンポルノも入っていると思い込んでいたのですが、「ピンク映画=大手以外の映画製作会社によって製作・配給された作品」となっており、にっかつロマンポルノは該当しないんですね。勉強になりました。又、勘違いの程、失礼しました。早速、本文内に“注記”を入れさせて貰いました。
以前にも書いたのですが、「集客数を増やしたいが為だけに、必要性が全く感じられない女優の濡れ場を入れ込む作品は好きじゃ無い。」という自分ですが、「裸がメインで在ったとしても、ストーリーや撮影スタイルに魅力を感じ得る作品。」は評価出来るので、“ポルノ映画”で在ろうとも、其れは例外では無いし、決して出身を卑下しないで欲しいという思いが在ります。
Kei様が書かれていましたが、「低予算&短時間で、如何に観客を魅了するかに腐心している。」という姿には、“作り手の本来在るべき姿”を感じます。