前回に続いて、学校教育のことを。
今年度から中学校保健体育において、武道・ダンスを含めたすべての領域を必修となるという。文部科学省によれば、「武道は、武技、武術などから発生した我が国固有の文化であり、相手の動きに応じて、基本動作や基本となる技を身に付け、相手を攻撃したり相手の技を防御したりすることによって、勝敗を競い合う楽しさや喜びを味わうことができる運動です。また、武道に積極的に取り組むことを通して、武道の伝統的な考え方を理解し、相手を尊重して練習や試合ができるようにすることを重視する運動です」
ダンスについては、「創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスで構成され、イメージをとらえた表現や踊りを通した交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにすることを重視する運動で、仲間とともに感じを込めて踊ったり、イメージをとらえて自己を表現したりすることに楽しさや喜びを味わうことのできる運動です」と説明している。
確かに、それぞれの説明はその通りなのだが、今なぜ武道、ダンスが必修なのか、よく分からない。武道については、体力、精神力を養うことはもちろんのこと、「礼に始まり礼に終わる」と言われるように、良いことは理解できるのだが、しかし、必修となると疑問を感じる。特に、柔道に関して言えば、事故を心配する声が上がっている。
今も、北海道の道立高校の部活動で柔道部員が障害を負ったとして訴訟を起こし、札幌地裁は、顧問教諭らの注意義務違反を認めた。そして、学校側の対応に原因があったとして、北海道道に約1億3700万円の賠償を命じた。それに対し、北海道教育委員会は札幌高裁に控訴する方針を決めた。
また、愛知県では、柔道の指導者講習会で、わずか6日で、30年近く、受講者全員に段位(黒帯)が授与されていたとして問題となっている。愛知県教育委員会が県柔道連盟へ委託し、中学、高校の体育教員を対象に2年に1度開いているというものだ。
講道館(東京都)によると、黒帯の取得には「平均でも2年程度かかる」と言われ、愛知の場合は短期間の上、審査も一般の昇段試験と違って試合の勝敗を考慮していないもの。 こうしたことがある中で、中学校で柔道が必修となれば、指導者の養成が急務となり、未熟な指導者が生まれることが懸念される。
私も、どちらかと言えば体育会系で、小学校から高校まで幾つものスポーツをしてきたので(武道はしていないが)、スポーツの素晴らしさ、効用は十分に分かる。だが、必修だから仕方なく受ける授業は、危険だ。とにかく、事故のないように無理のない指導の徹底を望みたい。
「それよりも先にやることがあるだろう」と言いたいことがある。
誰もが感じていることだと思うが、中高生の公共心の欠如だ。ほんとうに目に余るものがある。シーンとした電車内というのに大声で騒ぐ、物を食べる、中には化粧を始める子もいる。(最近は、大人も同じようなことをしているのがいるが)
だから、もっとマナーや作法を身につけさせる教育が必要だ。そのためにも、武道の必修化を行うのだというかもしれないが、それをしなくたって、幾らでも方法はあるだろう。こうしたことは、学校ばかりではなく家庭教育の問題でもあると認識しているが、道徳の時間などで、しっかりと教えていくことが大切だ。
文部科学省よ、もう少し、今、教育には何が大切かを良く考え直してみるがよい。