徳川斉昭はたくさんの梅の歌を作ったようで、(4)で少しご紹介しましたが、今回はその続きです。どれも「景山詠草」にある歌です。景山は元服の時定めた斉昭の号だそうです。説明は私の勝手流です。
立春梅
しら雪に まがふ籬の 梅の花 にほふ方より 春や立らむ
白雪に紛れて籬(かきね)のところに咲いている花から漂ってくる香とともに春が来るようだ
写真は偕楽園で見た雪の帽子をかぶった梅花です。
鶯
年ふ(経)れと(ど) 人にしられぬ 山陰の 花をあはれと 鶯の啼(なく)
年を経ても人に知られない山陰の梅の花を鶯はすばらしいとないている
梅
うぐいすの なくねにはるの 色そへて 匂(におい)そめたる 梅の初花
うぐいすの鳴き音に色や香りを添えて梅の初花が咲いている
水にうつれる梅を見て
池水に うつらふ梅は 影なから 匂ひありやと 魚の寄らん
池の水に映る梅にも匂いがあるのだろうかと魚も集まってくるだろう
弘道館の神前なる梅は 酒梅とて酒の匂ひを含みて花白く 右は朱梅とて紅梅なり いつ(づ)れもわれいとけなき時より 物に植ておほしゝを 寝殿造り(弘道館鹿島神社)奉りし時 階(きざはし 階段)のもとに手つ(づ)から植おきしを 今はおほ(大)きなる木となりて花いとおもしろく咲けれは(ば)
白妙(しろたえ)も 赤きも花の 色に出て 神を尊とふ(ぶ) 心みえけり
神を尊ぶ心は、清らかな白や、赤誠の赤の色として梅の花にみることができる