(写真)東京新聞より。下級審裁判官には珍しい死亡記事。
小林久起判事追悼を兼ね、初「あっぱれ!」を。
最高裁大法廷係属中の旧優生保護法による強制不妊手術に対する国賠訴訟。
仙台高裁の第二次訴訟の判決をした小林コートは、「除斥期間」経過として請求棄却とした他の部の第一次訴訟の判決と異なり、そもそも「除斥期間」ではなく「時効」の規定と解するとして時効完成を認めず、請求認容した。
https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2023/11/post-96.html
一連の地裁・高裁判決の中で最高裁判例に正面から異を唱えた唯一の判決。
「あっぱれ!」だ。
当時の民法724条後段を20年の長期消滅「時効」期間と解していた通説を覆し、唐突に、一切の例外を認めない「除斥期間」と解した35年前の最高裁判例は、増えつつあった戦後補償裁判を問答無用でシャットアウトする意図で無理矢理先回りしたと見るしかないものだった。
当時の通説に戻って「時効」だから援用権の濫用とすれば原告を救済できるではないかというのは、極めて真っ当な判断である。数年前の民法改正によって、同条の20年の期間は「時効」であると改めて明示された。
この「小林判決」は、最高裁大法廷に回付された先行事件には含まれていないものの、同様の見解を採用する最高裁判事が何人か出る可能性は十分あるようにも思われる。