梶井基次郎 「檸檬」
あらすじ
普段から気に入っていた京都 寺町通りの果物屋で檸檬をひとつ買ったが、肺病で熱を帯びた手にその果実の冷たさは丁度良かった。
暫らく遠ざかっていた丸善に立ち寄った
普段気に入ってみていた画集を見ても不安な気持ちが変わらない事に不満を覚えた私は、本棚の上に時限爆弾に見立てた檸檬を置いて立ち去った。・・・・・・・
見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の諧調をひっそりと防錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかへっていた。
私は埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。
私は暫らくそれを眺めていた。
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梶井基次郎(1901~32)の短編小説「檸檬」で主人公が檸檬を購入した京都市中央区・寺町二条の果物店「八百卯」が創業130年の歴史に幕を下ろした。
との記事が、インターネットで流れた。
「檸檬」は私の青春時代の大事な短編小説のひとつ
そしてもうひとつ大事な短編小説「蜜柑」
を思い出した
どちらも黄色い色をした小さな果物が主役の物語
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あまり正確に想いを伝えることは出来ないかもしれないが
思い出すままに書いてみたい・・・・・・・・・・・・・・
永井龍男(1904~1966) 「蜜柑」
あらすじ
これは女と別れようとしている男の話
男は45歳、病妻と年頃の長男がおり、女は30歳で一度結婚した過去を持つ
2年間続いた二人の仲が冷えたと言う訳ではない
しかしそれはいわば大人の恋であり、男はこの関係がある虚構の上に成立していることを知っている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その時、車がブレーキを掛けた。
顔を上げた私は、前方に黒人兵が手を上げて立っているのを見つけた。
青っぽい軍服の、若い男だった。その背後に、同じ仲間を2、3人乗せた車を停めてある。
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舗装道路のカーブに、吹き付けられた海岸の砂が積もっていた。
ゆっくりその脇を渡りきり、松林に沿ってカーブを曲がりきったと思うと、次の光景が鮮やかに私の視線に入ってきた。
舗装道路の幅一面に、途方もない数の蜜柑が散乱していたのだが、初めからそれと見たのではない。ただ鮮やかな色彩に、一瞬私は戸惑ってから、
「・・・・・・・やったね」
とつぶやいていた。
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国道134号線 至 鎌倉・逗子へ
短編小説「蜜柑」の海岸線沿いのアスファルトの舗装道路に鮮やかな色彩をした途方もない数の蜜柑が散乱していた光景は、このカーブを曲がった先・・・・・?(私の勝手な想像)
梶井基次郎「檸檬」と永井龍男「蜜柑」は どちらも私が高校時代に読んだ短編小説のひとつ
この二つの短編小説にはどちらも鮮烈なイメージがあった
「檸檬」には・・・・・・・・・・・・・・カーンと冴えかへっていた。
「蜜柑」には・・・・・・・・・・・・・・舗装道路の幅一面に、途方もない数の蜜柑が散乱していたのだが・・・・・・・
私の青春時代
どちらも数ページの短編小説に過ぎぬのだが 30年以上過ぎた今も「檸檬」も「蜜柑」も私にとっては
大切な本である
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後日加筆しま~す