私たちが転職を決めたのは霊仙寺湖畔の雪景色でした。
『でも こんなに花が好きなのになぜ雪景色?』
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ずっと持っていた謎が
雪解けに咲く花と、影絵「天の笛」を重ねることによって、
次第に解けてゆきました。
* 斉藤隆介作「天の笛」 (1978年~佼成出版社)
この物語は ~
ひばりが命をかけて太陽のかけらを
とってきたことから
厳しく長い冬が終わり一気に春が訪
れる ~ というお話で、
そのお話に藤城清治さんが影絵を添えて絵本として出版されました。
ページを繰ると
・・・ひばりの羽ばたきや、厚い雪雲
ぐりんぐりん真っ赤に燃える太陽などのシーンが延々続き、
一変して 次のページに変わるのです!
< 魅せられたページ >
そこに広がる清らかな雪原!
そして焼け死んだひばりから雪解けが始まり、大地の黒へ
命燃える草花の色とのコントラスト!
周りへ広がる 微妙な色彩の光の輪
さらに最後のページは
一面の花園で埋め尽くされていきます・・・!
私は書店でこのページに巡りあった時 「ゾクゾクッ」と大きな
衝撃を受け、深い感動でその場に立ち尽くしました。
そして
「いつか絶対これを影絵劇にして上演しよう!」と思ったのでした。
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やがて 10年後雪景色との出会いによって
「天の笛」の背景は霊仙寺湖の風景に置き換えられ
物語と現実が 夢のように重なりはじめました。
「ひばりが落ちた地面から花ひらきはじめ・・・」
「 花の輪はグングンひろがっていった
地面は一ぺんに春になったのだ 」
< ’89年10月 「天の笛」上演イメージ >
(雪景色は自分でカットし 花園は同僚のT先生作です)
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* 影絵劇について (1977~’86年)
私は教師になって間もなく藤城清治さんの影絵に強く魅きつけられ、
「影絵クラブ」を作って中学校の文化祭で上演したことがあります。
方法は
* 2台のOHP(オーバーヘッドプロジェクター)を用いて
拡大した背景をスクリーンに映し出し
その光で人形のシルエットを作って劇をします。
* OHP2台の映像を合成したり
セロファンやカラープレートで画
面に色彩を加えたり、ぼかしを入
れたり 光の量を変化させたり・・・
* 工夫次第で画面に素晴らしい効果を出せるのも大きな魅力でした。
* 透明な光と影の世界にすっかり魅了され
~「天の笛」 「銀河鉄道の夜」 「つるの恩返し」 「かぐや姫」など~
10分程度の影絵劇にして文化祭で上演していました。
そして ’88年転勤したのを機会に
クラブ活動は止めてしまっていたのですが・・・
’89年 ~教師向けの影絵劇講習会を というお話をいただき~
同僚の先生方の協力を得て、
再び「天の笛」を演じることができたのでした。
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このように絵本の一ページが
未来の世界で 雪景色と花園を結び付けてくれたのでした。
そして今
天空に向かって
さえずり飛翔し続けるひばりの姿と
現実の世界で
勇気を持って困難に立ち向う人の姿や
未来に向かって努力し続ける多くの方々の姿が
重なり合ってきます・・・
大きな災害の 命の瀬戸際でとられた行動に感銘を受け
素朴でさりげない表現の中に漂う深い悲しみを
推し量りつつ・・・
「きっといつか本物の春が!」
と念じています。
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