私は、何かあってはいけないと、
いつも避妊具を財布に入れて持ち歩いていました。
結婚前のことです。
ある時、財布を落としてしまいました。
口の悪い先輩がいち早く拾い、中身を点検しました。
もう、遅い。
先輩は大きな声で、「これは何だ。」と言い、
周りの人に見せて歩いていました。
財布には、使われないためにくっきりと丸い輪のあとが付いていました。
その先輩に、パブリカを借りました。
恩寵上野公園で、夜を明かしました。
早朝に、グラウンドの予約を取るためでした。
夜の10時頃のこと、寒い中アベックが通り過ぎていきました。
暗闇に消えました。
ささっと何か動きました。二つの陰でした。
その衣装は黒づくめでした。肘宛てに膝宛てをしていました。
ははあ、出歯亀だなとすぐに気づきました。
私は、シートに身を沈めました。
二人は、忍者のように斜めに歩を運んでいました。音を立てませんでした。
しかし、後ろの男の動きはちとぎこちないのです。
前の男が、時々注意しているようでした。
躓いて転んでしまいました。怒られていました。
どうやら、見失ったようでした。
痴漢の師匠と弟子でした。
暗闇に消えていきました。
新入社員のころ、上野公園で朝から読書でした。
シートを敷いて、ひたすら夕方を待つのでした。
花見の宴もたけなわ。
知らない親父が混じっていました。
2015年1月8日