Cobaringの生涯学習ブログ

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滅びる沿岸

2010-09-18 19:22:44 | 日記
「滅びる沿岸」と言っても、20年ほど前に学習したことなので、改善が進んで、蘇って来ているかも知れないし、またそう望みたい。
 北海道熊石町の沿岸地域では沿岸の海底部分が白いもので覆われ死の海と化しているという。この熊石町では古くから漁業が盛んで昆布漁などが行われていた。ところが最近では昆布が急激に減少し、漁師等を脅かしているという。それも乱獲が原因ではなく、海底を覆う白い怪物が原因だという。
 昆布だけではなく、その他の海藻類や魚などの生き物を寄せず、かろうじてウニだけが生息しているが、肝心な卵巣を持たない不完全なものであった。
....← この白い怪物の正体だが「石灰藻(CORALLINE ALGAE)」というものであり、カルシウムを多く含む極めて堅い藻の一種で、本来は岩の表面に生息し、ほかの海藻とバランスよく共存している。熊石町のように石灰藻だけが海底を覆い尽くすことは自然界では通常ありえないことであった。
 そしてこの状態は生態系に重大な影響が生じるという。
 普通岩にはコンブやカジメが生息し、魚の産卵場所や稚魚の隠れ場所となって“海のゆりかご”として機能している。しかし石灰藻が岩を覆い尽くすと剥がそうとしても剥がれない。このため海藻は新たに岩にはりつくことができず、しだいになくなり、魚介類は産卵場所や隠れ場所を失う。するとほとんどの生物が生息できない“海の砂漠化(SEA DESERT)”となってしまうのである。ただ海草をエサとしているウニだけは硬い石灰藻でも食べることができるため貧弱ではあるが(石灰藻は栄養が少ないため)、辛うじて生息できるのである。
 この海の砂漠化現象は日本全国に広がって行き三重県方座浦漁港、鹿児島の枕崎漁港などは深刻な問題となっているらしい(繰り返しますが20年ほど前の話なので改善が進んでいるかもしれない)。

 日本の沿岸・沖合いの過去10年間の漁獲量を見てみると半分の500万㌧にまで落ち込んでいる。石灰藻の地域と漁獲量の激減地域はことごとく一致している。
 つまり日本の漁獲量を激減させた大きな原因の一つが石灰藻の異常繁殖だった。
 では、なぜ石灰藻が異常繁殖してしまったのかというと、そもそも石灰藻は決してめずらしい藻ではなく、いたるところに分布し、他の海藻とバランスよく生息している。ところが海藻とのバランスがある原因によって崩れ石灰藻が異常繁殖してしまったのだそうだ。その原因とは…。
 それは陸から海に流入しているフルボ酸鉄の減少が災いしているのである。このフルボ酸鉄(IRON FULVATE)とは森林の土壌に住んでいるバクテリアが落ち葉などを分解する際に作り出すフルボ酸ともともと土壌にある鉄とが結びついた物質で雨によって土壌から川に流れだし、海に到達する。このようにして陸だけにしか存在しないフルボ酸鉄は海に広がって行くのである。フルボ酸鉄、窒素、リン、カリウムなどは海藻に吸収される。つまり海藻は生きるために必要な鉄分を陸から得ていたのである。フルボ酸鉄は海藻にとってなくてはならない物質だったのである。さらにこのフルボ酸鉄は石灰藻の増殖を止めてしまう効果をもっている。まさに石灰藻の天敵といえる物質なのである。
 石灰藻が異常繁殖した原因は陸から海へのフルボ酸鉄の共給量の減少したためと言える。これは広範囲にわたる森林の伐採が災いしている。当然落ち葉はなくなり、バクテリアは死滅する。その結果フルボ酸鉄も生産されなくなったのである。そこへ川に建設されたダムはフルボ酸鉄を含んだ土砂までせき止めてしまう。川の護岸工事はフルボ酸鉄を含んだ地下水をも遮断してしまう。
 海岸線の道路もフルボ酸鉄を遮断してしまう。
 このように陸から海へのフルボ酸鉄の供給量が減ったために海藻が減り、石灰藻が異常繁殖したのである。
 対策としてフルボ酸鉄を海にまく方法も考えられたが、コストがあまりにもかかりすぎる。
 現実的な対策として森林を増やす方法もあるが、成長には30年かかるため多くの時間が必要。そこで浮上している対策法として、わずかに残された海藻を促進させ、増やす方法として深層水を使った方法が研究中である。この深層水(DEEP SEAWATER)とは太陽光の届かない水深300㍍以下の海水のことである。
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ちなみに水深300㍍より浅いところにある海水は表層水という。
 この深層水は地球上のある限られた場所で作られる。グリーンランド沖で冷やされた海水は比重が重くなり沈んでいく。グリーンランド沖で作られた深層水は海底を這うように大西洋をくだり、インド洋と北太平洋と2つのルートに分かれる。そして地球すべての海で大循環している。深層水は1秒間に4000万㌧が作りだされ、ゆっくりと循環し、地球を1周するのに2000年かかるという。さらに2つの特徴があり、1つは栄養性(NUTRITION)である。海には窒素、リン、ケイ酸といった無機質が含まれているが、表層水では海藻やプランクトンにそれらが消費され、無機物質は少ない。ところが深層水では海藻やプランクトンが生息していないので無機物質が消費されず、膨大な量が蓄積されている。もう1つの特徴は清淨性(PURITY)で表層水と深層水は比重の違いから混じり合うことがない。つまり表層水が汚染されたとしても深層水に影響がおよぶことはないのである。さらに低温であるため病原菌が繁植しにくい。
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研究によると深層水を使ってコンブを育てると2倍のスピードで成長する。これは深層水に含まれる豊富な無機物質がコンブの栄養源となり、成長を促したことが考えられる。この深層水をポンプでくみ上げ、石灰藻で覆われた海域に放水してやることでわずかに残された海藻類を増やし、回復を望むことができるのではないかと考えられている。しかも深層水は海水の90㌫を占めている。使い尽くしてしまう心配もない。
 特にわれわれ日本人は四方を海に囲まれ、恵まれた資源の恩恵を得てきたが、その資源には限界があり、生態系を狂わせてきた。この白い怪物“石灰藻”はそんな人間達への警鐘ではないか……っていうか今どうなんだろう。


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