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イヌとネコ
世界共通の2大ペットといわれるイヌとネコだが、人間に対する行動は大きく異なる
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①飼い主への態度
イヌ…飼い主が帰ってくるとすぐに出迎えに来る。名前を呼べばすぐに駆けよってくる。なでてもらうと尾をふり全身で喜びを表現。
ネコ…飼い主が帰ってきても、多少視線を送ったりもするが、ほとんど無視を決め込む。名前を呼んでも近づいて来ない。そのくせ飼い主がくつろいでいるとネコのほうからすり寄ってきたりする。なでてやると気持ちよさそうにゴロゴロと満足気な声を上げる。ところが飼い主が抱こうとするといやがって逃げたりする。しかも時には爪をたてる事もある。
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②エサの食べ方
イヌ…エサを与えると一気に食べる。
ネコ…せっかく与えたエサを拒否したり食べ始めても飽きてどこかへ行ってしまう。
③叱られた時の反応
イヌ…寂しそうに反省の声をあげる。
ネコ…聞く耳を持たないかのように毛づくろいを始めたりする。
このような行動の違いから犬は従順で、猫は気まぐれな動物と考えてしまう。このような性質に見える違いはどういう理由からか…。それは6000万年に渡る壮大な進化の謎に起因する。
犬と猫の祖先は同じ動物だという。進化の過程で枝別れし、全く性質の異なる動物となっていった。
30万年前はオオカミ、ヤマネコ。2000年前はトマルクトゥス、サーベルタイガー。2300万年前はキノデスムス、プセイダウルルス、3000年前はヘスペロキオン、ディクティニスとしだいに古くなるほど骨格の違いが少なくなってくる。6000年前に至っては骨格の違いはなくなる。
その動物の名前はミアキス。分類学上最も古いイヌとネコの祖先なのである。
ミアキスから性質の異なるイヌとネコがうまれた過程を検証すると…
ミアキスの骨格をみると現在のイタチに似ているという。大きさはネコよりも一回り小さかったという。森林に単独で生活し、ネズミ、小鳥、などの小動物を獲物としていた。
4000年前森林に適応した進化をとげたのがネコへ第一歩。木に登ったり、草木の陰に隠れて獲物を待ち伏せして至近距離から一気に獲物を襲う。そのために瞬発力を持った筋肉が発達した。
さらに音を立てずに接近できるように爪の出し入れが可能となった。暗い草木の陰から明るい場所に飛び出して獲物を襲うことができるように明るさの変化に対応できるように瞳孔を自由に変化させ、目に入る光の量を調整できるように進化した。
加えて夜行性であったため視覚に頼らなくても獲物を襲うことができるように、獲物の動く音を正確に聞き分け、相手の位置や大きさを的確に判断できるように聴覚が発達した。これがネコの祖先のWILDCATである。
それが人間に飼われるようになり、様々な種類のネコとなった。
森林で獲物を得ることを得意とするミアキスが増えていくなかで、その進化に乗り遅れたミアキスは森林では生活できなくなった。新たに生息地を求めて草原にたどり着いた。草原では見通しがよく獲物をすぐに発見できる反面、相手からも発見されてしまうというデメリットがある。そこで飢えから身を守るために生活形態を変えていくしかなかった。もともと森林で単独で暮らしていたミアキスが草原に出るようになって群れをなすようになった。獲物を得るのに群れによる連携プレーが行われるようになったのである。自分より大きな動物も襲えるようになった。そして連携プレーをとりやすくする
ためにリーダーと順位が誕生した。群れは順位にしたがって行動するようになった。
見通しのよい草原では音を立てずに獲物に近づくより早く走れることが必要となった。出し入れ可能だった爪はスパイクのように出たままになり走りやすくなった。一方、視覚や聴覚ではとらえることができない遠くの獲物の存在をキャッチできるように嗅覚が発達。長時間獲物を追いつづけることができるように筋肉は瞬発力よりも持久力に優れたものに変化していった。
上昇した体温を走りながら下げることができるように口を開けて熱を放出できるように進化。これがイヌの祖先であるオオカミ(WOLF)へと進化していったのである。そして人間に飼われるようになって様々なイヌへ進化していったのである。
このように群れと単独という生活形態の違いから形成された性質が現在のイヌとネコに大きな影響を及ぼしている。
イヌは群れの一員として行動をとって来たために飼い主に従順。ネコは単独行動をとって来たために気まぐれという印象を与えているのである。
群れで生活をしてきたイヌは人間の家族を群れにみたてており、飼い主を出迎えたり、名前を呼んで応じるのは自分を群れの一員と心得ているからである。ほめたりすることで自分の存在を認めてもらえたと喜びを大きくするのである。
一方単独で暮らしてきたネコは飼い主が帰ってきてもイヌのように歓迎はせず、そっけない態度をとる。ネコは単独生活者で人間の家は単なる住み家としか思っていない。
ネコが単独生活者でありながら外を出歩いても家に帰って来るのは確実なエサがあり、安全な寝ぐらがあるからである。つまりネコにとっての人間は危害を与えずエサをくれる友好的な動物というふうにしかとらえていないイヌのように順位があるとは考えていない。
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エサの食べ方もイヌの場合、エサを与えると喜びを示し、一気に食べる。いつ獲物を得ることができるかわからず、得ることができても、獲物は群れの順位の高いものから食べていた。短時間で少しでもたくさん食べなければ次に食べる機会はいつ回ってくるかわからない。
俗に“イヌ食い”といって空腹でなくても一気にたいらげる習性が残っている。
ネコの方はエサを与えると時々拒否をする。少ししか食べずにどこかへ行ってしまう。ネコは狩りを単独で行うため獲物は自分だけで全部食べられる。自分の縄張りをもっていたために他の動物にエサをとられる心配はない。つまりエサにたいして執着心がなく、食べずにどこかへ行ってしまったりするのである。気まぐれに見えてしまう理由である。
イヌは飼い主に叱られるとしょんぼりする。群れの中では順位の高い者に背くことは許されない。順位の高い者に嫌われることは群れから追い出されることを意味する。最も辛いことなのである。つまりしょんぼりして許しを請うのである。
これに対してネコはだれかに嫌われることなど全く関係ない。人間に叱られることなど意味のない時間なのである。大声を出された不愉快な現実を一刻も早く忘れようという行動に出る。それが件の“毛づくろい”なのである。これをネコの「転移行動」という。全く関係ない行動をとって気分を静めようとしているのである。
侵入者に対する態度も大きく違う。知らない人間が玄関から入って来た場合、吠えて飼い主に知らせる。イヌは自分の群れが最も大切なものと考えているため群れを守ろうとする行動なのである。ネコは侵入者に対して自分だけ物陰に隠れてしまう。ネコにとって自分の身を守ることが最も大切なのである。
このようにイヌもネコも本能に従って生きているのである。人間の目にはイヌは従順、ネコは気まぐれと映るのである。
ところが最近のイヌやネコには問題行動が多い。ネコは飼われていても人間の前では出産したりしなかったが、最近のネコは人間の前で平気で出産をするばかりではなく、子育てをしないのである。ネコの本能を脅かされているからである。
そもそもネコが人間に飼われ始めたのは5000年前の古代エジプトである。穀物の倉庫を荒らすネズミが深刻な問題となっていたが、ネズミをエサとするリビアヤマネコを飼いならしていったのである。
これに対してイヌが人間に飼われるようになっていったのは1万数千年以上も前の旧石器時代からだという。当時狩りによって食糧を確保していた人間は効率よく獲物を発見することを必要としていた。また夜の暗闇での侵入者は脅威であった。そこで優れた嗅覚で獲物を探す、侵入者を知らせるオオカミを飼いならしていったのである。このようにイヌは飼いならした人間に忠実に従うことから狩猟犬、牧羊犬、盲導犬など様々なところで役立てるように体格や性格の改良が行われていった。
しかしネコは人間の命令に従うことはなかったためにネズミ退治以外に利用されることはなかった。そのために愛玩用(※小さな動物などをかわいがって楽しむこと)として外見的な部分だけが改良されていった。
その結果イヌは約300種類。ネコは3分の1の約100種類しかいない。つまり用途の少ないネコは性質の改良を施されることもなくイヌよりも野性の本能を残してきた。ところが現代の人間との生活環境によって重大な影響を受けている。
まず、単独生活の本能への影響がある。ネコは子供の時から自分を育ててくれた人間を親と考える習性がある。ネコが飼い主について歩いたり、本を開いた時に一緒に覗き込んだり親について学ぼうとする学習行動なのである。人間になでてもらうのは親ネコになめてもうらうのと同じ感覚なのだと言う。
通常ネコは生後3ヵ月過ぎると親との関係を断ち切る。そして外に出て狩りのしかたをおぼえたり、独立した単独生活者として行動を開始する。
ところが最近のネコは室内飼い。食事はもちろん身の回りのことをすべて人間が面倒を見てくる。ネコは3ヵ月をを過ぎても大人になりきれず、子供のままでい続けてしまうのである。すると単独で生きようという本能が養われず、親である人間に依存して生きようとする。出産の時も一番安心できる人間の前で行う。子育てさえも人間に頼ろうとする。人間の過剰な甘やかし、ネコに独立する機会を失わせてしまったのである。
さらに最近多い問題行動には暴れる、かみつくといった行動がある。ネコは成長すると狩猟本能を発揮してそとで獲物を捕ることを覚える。以前ネコは飼われていても、家と外の出入りを自由に許され、外で狩猟本能を発揮してきた。
ところが室内だけで飼われていると狩猟本能を満たすことができない。安全な家の中では敵から逃げる必要もない。ネコが厳しい自然の中で生きていく能力は人間に守られた平穏な暮らしの中では完全に抑えられてしまう。
それがかえって仇となり、極度のストレスになって問題行動を起こしていたのである。
これらの人間の過剰な甘やかしや室内飼いがイヌの問題行動の原因にもなっている。
それが件の権勢症候群である。順位のある群れの中で生きてきたイヌは人間を自分より低い立場と見て反抗的な態度を示すようになってきた。
ではイヌが権勢症候群に陥らないようにするにはどうしたらよいか。人間との立場の違いをイヌに理解させる。遊ぶ時には飼い主が必ず勝つこと。散歩の時、スピードや方向を飼い主が決める。このように人間との立場の違いを、イヌに認識させれば権勢症候群に陥ることはない。
ネコの場合は野性の本能を発散させてやること。できればネコには家と外の出入りを自由にさせてやることだが、現代の日本ではネコ白血病ウイルスやエイズウイルス(ノラ猫の10匹に1匹)が蔓延しているためうかつには外に出せない。室内でその本能を満たしてやるためにはおもちゃなどを使って疑似狩猟をさせてやったり、マーキングといって爪跡を残したりにおいを残したりするが、とくにのびた爪を研ぐことができないとネコはストレスを感じる。
爪研ぎを不快に感じるようであればネコを飼うことをあきらめる決断も必要である。
ネコの本能を人間の都合で押さえ込むのはネコにとって不幸なことである。森林の中で単独で暮らして来たネコがその本能を満たすために高いところに登ったり、走り回ったとしても叱らないだけの余裕が必要である。
こちらにもおこしやす。
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