♂更年期

以前、私の勤め先に時に大きな病を抱えているわけでもなさそうなのに、無断欠席が多く、会社の温情も空しく退職していった男がいた。
彼が辞めていった後に「男性更年期障害」について学んだことがあった。まさしく彼は男性更年期障害だったのである……カモシレナイ!?今日はそれについてまとめてみた。

【男性更年期障害】

　中年男性が突然の出社拒否になる原因としては初老期うつ病（Presenile Depression）の可能性が考えられる。「セロトニン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質が情報を伝える。通常うつ病の原因としてセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌の減少が考えられる。神経細胞から神経細胞への情報の伝達が阻害され、自信喪失、絶望感、不安、焦燥感に苛まれる。胃痛、頭痛など体の変調を感じることもある。これが４０代、５０代の初老期に発症するうつ病の場合、「初老期うつ病」と呼ばれる。
　うつ病の治療法としては神経伝達物質の分泌を増やす抗うつ剤が近年飛躍的な進歩を遂げ、うつ症状が劇的に改善される例が見られるようになった。
　抗うつ剤が効果をあらわさない場合、血中テストステロンの不足が考えられる。これは精巣で作られる男性ホルモンの一種で成長期の第二次性徴をもたらし、骨や筋肉を増長させるなどの働きが顕著であるが、血液中テストステロンの量は２０代で平均３０ピコグラム、３０代では平均２０ピコグラム、４０代で平均１８ピコグラム、５０代では平均１６ピコグラムと年齢を経るごとに減少していくものである。が、平均値の半分を下回ると男性更年期障害をもたらすという。通常、更年期障害というと女性特有のものとして、閉経後の女性がエストロゲンの急激な減少によって起こす体調不良を言う。エストロゲンの作用で保たれていた自律神経のバランスが崩れてしまうからである。臓器などの機能が一気に低下し、体の変調を引き起こすのである。具体的には、自律神経の異常により、血管が収縮、縮小、痙攣を起こし、「顔がほてる」「手足が冷える」「めまいがする」「心臓がドキドキする」などの血管運動神経症状を訴えたり、「手足がしびれる」「アリが這っているように感じる」
などの知覚神経症状を訴えたりするものである。さらには肩こりや腰痛などの運動器症状などもポピュラーである。これらの症状に加えて、「なかなか寝付けない」「興奮しやすい」「神経質になる」「頭が痛い」などの症状からうつ状態の症状を引き起こすこともある。
　男性更年期障害とはどういうものか。男性ホルモンこと「テストステロン」は年齢とともに減少し、これにより保たれていた自律神経のバランスが崩れ、疲労、性欲減退、筋肉痛、関節通、こり、イライラ、不安感などを訴えるようになる。女性と違って閉経などの劇的なサインはないが、３０代から７０代まで緩やかに進行する。その緩やかさゆえに自覚がない場合が多い。またテストステロンの量が年齢にしたがってゆったりとしたペースで減少する場合はさほど問題はないが、何らかな要因で年齢以上にテストステロンが急激に減少する場合は深刻な事態を引き起こすことがある。保たれていた自律神経のバランスが一気に崩れ、強い疲労感、強い頭痛、イライラ、頻尿、さらにはうつ病の症状まで引き起こすことがある。
　急激なテストステロンの減少の原因として考えられるのは…
①ストレス：人体に強いストレスが加わると視床下部から下垂体にその情報が伝わり、性腺刺激ホルモンの分泌を抑制してしまう。精巣ではテストステロンが作られにくくなる。このことは１９６９年、ベトナム戦争出征間近の新兵と一般人のテストステロンの量が測定された。すると一般人１０に対して新兵は５．３とおよそ半分しかなかった。これは死の危険が伴う戦場に向かうストレスによってテストステロンが減少したと考えられる。現代の企業戦士たちがテストステロンの減少を引き起こすほどのストレスを感じることは大いに考えられる。
②肥満：体重が増えると脂肪細胞が増加する。その脂肪細胞が分泌するホルモンが過剰になると直接精巣に働きかけテストステロンの生成を抑制してしまう。
③タバコの吸い過ぎ：精巣はもともと血流が豊富で血液を多く必要とする。ところがニコチンによって交感神経を刺激し、血圧が上昇。精巣の毛細血管が収縮し、血流を阻害してしまう。また煙に含まれる一酸化炭素は酸素運搬を担う赤血球中のヘモグロビンと
結合しやすい。すると酸素が取り込まれにくい状態になり、精巣の機能が低下しテストステロンの生成にも影響するという。
　アメリカ国立衛生研究所の調査によるとバイタリティにあふれ、リーダーシップを取れるような男性は血液中のテストステロンの量が多いということが明らかになっている。また元々テストステロン量が多い男性が急激に分泌量が減少すると集中力、やる気、自信をより喪失する傾向があるという。
　さらに男性ホルモンの急激な現象で自律神経のバランスが崩れると、心臓冠動脈が痙攣する異型狭心症を引き起こすことがある。この場合、検査をしても自律神経の異常によるものなので心臓には異常を見出すことはできない。
　以上のことから男性更年期障害とうつ病との違いを判断し、治療法が異なることを認識したうえで、適切な処置を施すことが望まれる。しかしながら、日本では男性更年期障害の研究は歴史が浅いく、女性の閉経のような劇的な形で訪れるわけではないので、見過ごされてしまう可能性が高い。
　現代男性更年期障害の罹患が低年齢化しており、患者も増加している。重度になる前にカウンセリングや食餌療法で改善することが望ましいが、テストステロンを注射によって補充する方法もある。
　次に男性更年期障害予防法を挙げてみよう…。
　日ごろより体重管理を行い、肥満の指標ＢＭＩの値を超えないように食事を制御することも重要だ。このＢＭＩとは体重(㌔㌘)÷身長(㍍)÷身長(㍍)で算出するもので「２５」を超えると「肥満」、脂肪細胞から分泌されるホルモンによりテストステロンの生成が阻害され、男性更年期傷害を引き起こしやすくなる。「２２」以下に抑えるのが望ましいとされている。
　運動も効果的だという。どんな運動でもテストステロンの分泌は見られるが、脚や胸などの大きな筋肉に直接負荷をかける運動がもっともテストステロンの分泌を促すという。筋肉を使ったトレーニングを行うと即座にテストステロンが増加するという。
　禁煙も有効。せめて一日一箱以内にとどめたい。
　なるべくストレスをためないことである。睡眠を十分に取る。気分転換を図る。仕事を家には持ち帰らない。
　風通しのよい下着も効果的。精巣は温度が低いほうが活性化する。熱を効率よく逃がす下着をつけるとテストステロンの生成能力を保てる。下着はトランクスのほうが望ましいという。
　バランスのよい食事は不可欠だ。ヤマイモ、納豆、オクラといったネバネバした食品が効果的である。これらのネバネバした食品はホルモンの一種であるＤＨＥＡの原料となる物質を多く含む。ＤＨＥＡは体内で男性ホルモンに変わりテストステロンの増加につながるという。一日１５０㌘ほど食べることで男性更年期障害がかなり緩和されるという。
　このように男性更年期障害は適切な対処で深刻な事態を防ぐことが可能なのである。

という風に学んだことがあるが、すべて正しいことを言っているかは別として、伝統的な日本型食生活はかなり期待が持てる。