さいきんの流星光
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(ネタバレ注意)


ことの善悪の話…


 アリスは山の中のセキュリティのしっかりした近未来的なデザインの家で父親と白い大きな犬と三人で暮らす少女である。年齢は13歳くらい。実際に近未来の時代設定なのかも知れないけれども、どうなのかはわからない。

 アリスは森の中で黒い人がすっぽりと入りそうなほどの大きさの正方形の黒い箱を見つける。箱の角は鋭利に幾何学的にとがっていて精密なものを製造できる工場か何かで造られた工業製品に見えた。

 その箱は、アリスが近づくと謎めいた動きをして誘うような窪みをつくる。アリスがその窪みに手を入れるとメモ書きを見つける。
 紙片には自分の筆跡でメッセージとも忠告ともわからない一文が書かれていた。


 ある日、父親は森の中で、顔に傷を負った少女とその弟を発見し家に連れてくる。その少女は何者かになぐられた様子で顔にあざをつくっていた。父親は、傷を負った少女を介抱しつつ姉弟を家に住まわせる事にする。
 少女はアリスよりも年上の17歳くらい。弟は小学生くらいだった。

 数日後、アリスがあの黒い箱へ行き、窪みの中でメモリーチップのような物を見つける。午前四時にステレボヘッドフォンでそれを聴くようにと指示が書いてあった。午前四時にそれを聴くと、ふたりの姉弟を殺すようにと指示する声が聞こえる。その声は、自分自身の声のようであった。

 アリスは殺すことをためらい、結局できなかった。

 するとその夜、ふたりの姉弟の手引きで家に侵入した男のせいで、父親と犬が殺されてしまう。父親と犬の死を悲しんだアリスは、激しく動揺する。自暴自棄になって森の中の箱に体ごとすっぽり入ってしまう。するとアリスの体は時間を飛んで過去に戻るのであった。


 アリスは父親が殺される前の世界に戻った。
 そしてその時代に存在するアリスに会い、その時代のアリスを自分の部屋のとじこめておいて、自ら森で拾った弟を刺し殺す。


       ×       ×       ×


 アリスは最初、人を殺すことをためらった。
 だが、父親を殺されてみると、悲しみと怒りから「人を殺してはいけない」というリミッターがはずれてしまう。

 その姉弟が父親を殺害したのではなく、その兄弟によって招き入れられた男の犯行である。その姉弟を直接に殺害するというのは道理にあっていないではないかという気持ちが芽生えたけれども、おおもとの原因を排除するという意味では正しいかも知れないし、なによりアリスは父親を殺されて怒りに満ちていたと考えると当然の気持ちかも。

 とにかく大事なのは、大切な人を殺された事で、アリスの中のリミッターが消えたということだと思う。


 人を殺すことは絶対的な悪なのだろうか?

 決まっていないというのが僕の考えだ。一個人の中でも場合によって、善と悪との間をゆらぎ行ったり来たりするものだと僕は考える。

 どんな行為でも、その価値観は、善と悪の間のゆらいでいるのだ。




 善と悪との違いは、好き嫌いだ。

 個人によってどう感じるかが違う。

 ある行為は、人によっては悪だし人によってはそうでもない。


 人を殺すことなんてできないと思っていたアリスは、状況の変化によって、自分よりも幼い他人の弟を殺せてしまう。


 善悪の基準がいちじるしく違う人とは、群れの中で暮らしてはいけない。殺人に対して、悪いことという価値観を持っていない人間とは暮らせないのである。それを可能するのが法律なのである。法律と警察機構が、それらいびつな多種多様な人間を最低限平和に暮らせるように日常という枠の中に押しとどめているにすぎない。

「なぜ人を殺してはいけないか」

という議論は意味がない。

 そもそも前提が間違っている。人は殺してもいい。ただ社会の秩序を守るために法律というルールによって、人を殺してはいけないということにしているだけである。それを根源的な問題であるかのように「なぜいけないのか」という議論に持って行こうとするのは滑稽である。





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長文におつきあいくださいまして、
ありがとうございました! <(_ _)>



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