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こないだ読んだ、
山崎ナオコーラさんの『昼田とハッコウ』の中に、
この本の事が出てきていたので、読んでみた。
山崎ナオコーラ 「昼田とハッコウ」 読了!!
サリンジャーは、2010年1月27日に91歳で亡くなった。
とても変わり者の作家だったと聞いている。
自分の作品で、
最初に映画化されたものが、満足のいく出来ではなかったため、
今後、自分の作品の映画化はいっさい許さん、と決めてしまったという
エピソードをウィキで読んだ。
偏屈ですよね。
この本にしても、
サリンジャーが、翻訳者によるあとがきや解説など、
小説以外の余計なものをくっつける事を厳格に禁じていたため、
翻訳者・村上春樹さんによる解説を、
小冊子にして小説の中に挟みこんで販売するという苦しまぎれの方法をとっている。
僕は、村上春樹さんの「こんなに面白い話だったんだ!」というタイトルのついた
解説を読んでから、本編を読むことにした。
ちなみに、この解説は全文、新潮社のホームページで読むことができる。
■新潮社「フラニーとズーイ」のページ
■新潮社
そして、小説を、すべて読み終えた。
………。
かなり、苦労した。
サリンジャーは、グラース家という、
両親と7人の子供で構成される家族を描いた小説を何冊も出している。
その描写は、すさまじく詳細で、
まるで実際に存在する家族のエピソードを
つぶさに記録しているだけなのではないか、という印象を受けるくらい。
これをすべて想像で一から創り上げたのであるならば、
何と言うか…すごい。
気の遠くなるくらい膨大な設定作業を思い浮かべて、僕は気絶しかけた。
物語を作るとき、
ここまで人物を、あるいは世界を頭のなかに創りあげなくてはならないのだとしたら、
僕はこれから、作品を世に出すことができるのだろうか。
とにかく、勉強になった、かなり勉強になった一冊。
さて内容に関してだけど、
7人兄弟のうち最も若い二人、ズーイ(男25歳)とフラニー(女20歳)が登場する。
小説としては、かなり変わった小説だと思う。
最初から最後まで、「会話」以外行われない小説だ。
一つ目の章、いや一つ目の短編というべきか。
「フラニー」では、フラニーとその彼氏レーン・クーテルとの会話がほとんどすべてだ。
この「フラニー」が、そのまま「ズーイ」の序章になっている。
二つ目の短編「ズーイ」では、
二番目の兄バディーがフラニーのすぐ上の兄ズーイに宛てた長い長い長い手紙の全文と、
ズーイと母ベッシーとの会話、
そしてズーイとフラニーとの会話で成り立っている。
舞台となるのは、彼らが住むアパートメント。
部屋から部屋への移動はあるものの、
アパートメントから外へは出ず、事件も起こらない。
人と人とが会話する、議論する、
その中で語られる、他の兄弟や父親友人の話。
それだけ。
フラニーは、20歳で、賢くて多感で神経質で、
彼氏のレーンを含めた周りの人間すべてが、
くだらなくてどうでもいいクズに見える。
彼女の口から出るのは、彼らを批判するひどい言葉ばかり。
一方で、そんな自分が嫌で嫌で仕方がない。
彼氏にひどい事を言って二人の週末を台無しにしたフラニーは、
とてつもない落ち込みの中にいた。
その一部始終は、「フラニー」の章に語られている。
母ベッシーと兄ズーイは、その事を気にかけている。
だけど何を話しても、うつむき落ち込み、
何も食べようとしないフラニー。
ズーイもまた、頭のいい青年だった。
ここでは、
頭のいい青年という設定のようだ、と言っておこうか。
僕は、
ズーイの、もったいつけたような、
頻繁に脇道に反れ、どうでもいい事をくりかえし発する言動が、
本当にイライラして、本当にこいつは頭がいいのだろうかと疑いを持ってしまった。
頭のいい人間なら、もっと簡潔に喋るはずだ。
というわけで、僕は読み続けることを、とても頑張らなければならなかった。
翻訳者 村上春樹さんに言わせれば、
「この本の中を縦横無尽に駆け巡る、圧倒的パワフルな文章的展開」
となるようだけど、
僕にとっては、極端に外国文学的めんどうくささに満ち溢れた、
読みづらい小説だった。
だけど、読み終えてみると、意外なさわやかさ。
あれ?なんだこれは…。
不器用で人をムカつかせる喋りかたしか出来ない頭でっかちな兄(僕はそう感じた)が、精神のバランスを崩し、ひょっとしたら、長兄シーモアのように、自ら命を絶ってしまわないかという不安からか、
妹を救おうと、妹にキレられながらも、必死にくらいついていく。
そこには、兄の自殺のようなことは、もうごめんだという強い思いを感じたし、
妹に対する深い愛情を感じたのだった。
結論。
小説は、本当に最後の一行まで読んでみないと、わからない。
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