今日は、久しぶりにアナログ写真からヒメオオクワガタの思い出を書いてみました。
(画像はすべてアナログ写真を転写したものです)
はじめに
私が県北部域でヒメオオクワガタを探し始めたのは1990年の夏でした。
そして、最初の1頭を見つけたのは2年後の1992年です。
採集センスというか、何というか・・・
オオクワガタやコルリクワガタのときもそうでしたが
最初の1頭を見つけるのにずいぶんと時間がかかってしまいます。
片道2時間半の単独行きで一番の不安は天気です。
山の天候は行ってみないとわからない。困ったものです・・・
現地で天候が急変し、引き返したこともありました。
↓押し迫るガスに”おじけづく”
当時、山中では幸か不幸かクワガタ採集者と出会うことは殆どありませんでした。
出会うのは、キノコ・山菜採りの方や写真、蝶屋・虫屋さんなどといった
遠からず近過ぎずの人たちで、路上で立ち話をよくしたものです。
また、故人が逢わせたと思うような縁を感じる出会いもあり
その方には今もお世話になっています。
↓とある学校の生物班から教えてもらったコブヤハズ
↓アサギマダラ、多い年とそうでない年があります
↓モズの仕業
そのころの林道沿いには多くのヒメオオクワガタがヤナギやヤシャブシなどに付いていました。
また、アカアシクワガタもヤナギで沢山見ることが出来ました。
しかしながら、林道沿いで発見できる個体はしだいに減ってきました。
これらの現象は、林道開発のために切り倒された多くのブナが
ある期間発生源になっていたことと
周辺が今より乾燥していなかったことによるものと思いますが
当初から材採集をほとんどしていないため本当のことは判りません。
採集圧の真実についても同じです。
採集と操作
最初の2~3年間は採集した個体の多くを持ち帰り
飼育や標本にしていたのですが私の考えに少し変化が出てきました。
採ってもよい数というか・・・本当に必要なのか?
次第に持ち帰る個体は少なくなり、手ぶらで帰る日が多くなりました。
そして、特別大きいとか、特別小さい個体だけに狙いを定め
そうでないものは落下させて、人目に付かないよう操作して帰るようにもなりました。
あしからず。
↓きれいな夕焼けをみながら下山
大きさの壁
ヒメオオクワガタの大きさは最大級になると58mmを超えるようですが
〇○山では最初の壁が52mm、次の壁が54mm。
最初の壁52mm台は、10頭に1頭くらいの割合で採れていましたが
その次の壁、54mm台はなかなか見つからず、これまでに3頭しか採れていません。
この山で55mmを超える個体は未だにお目にかかったことがありません。
(近隣未記録山では知人が56mm台採集)
また、近年では発見できる数そのものが僅かなせいか
大きさの壁は50mmになっています。
ヒメオオクワガタが辿り着く木
ヒメオオクワガタは樹木の枝などを自分で齧り、樹液を自給できる種です。
他の昆虫の穿孔によって出る樹液に頼るクワガタムシが多い中
ヒメオオクワガタはヤナギやハンノキなどのホスト木があれば
食べ物にありつけるためその出現・行動には謎めいたものがあります。
↓ヤシャブシの葉の裏に付くオス
↓ヤナギに派手な食み痕(2008年10月)
↑この木には複数の個体が付いており
ここまでわかりやすい木は最近では見かけなくなりました。
↓極小個体、大アゴはよく摩耗しています
ホストとなる樹種については木の匂いで選択しているものと思われますが
例えば ヤナギが群生していても全くいなかったり
数年間全く付いていなかったヤナギ等にある年から突然付き始めたり
また、その逆もあります。
これらの現象は、発生木の有無によることが多いと考えています。
また、同所のヤナギで競合するアカアシクワガタとの関係ですが
この山でヒメオオクワガタと同じ木に付いていることはめったになく(過去に2度確認)
狭い範囲で両種は棲み分けみたいなことをしているようです。
樹種も含め、互いの活動個体が出す匂いや地面や木に付いた排泄物等の匂いに反応して
必要な距離を保っているのではないかと私は想像しています。
ヤナギを植えて飼育する
不明な部分の多いヒメオオクワガタの活動の一部始終を観察してやろうと思い
水槽にヤナギを植えて観察したことがあります。
↓現地のヤナギを植え込み、ブナ朽ち木も投入
最初は2ペアを入れて観察していたのですが、大きさが違うオスでもしつこく喧嘩をするため
1オス2メスに変更し、観察を再開しました。
この種の特徴でしょうか?
メスの喧嘩もしつこく、納まりが付かなくなるので最終的には1ペアで観察をしました。
↓喧嘩が終わらない!
この時は一週間餌を与えずヤナギを齧ってくれるのを待ちましたが
結局、最後まで齧ることはありませんでした。
↓仕方なくゼリーを与える
生息地の環境に近づけることで産卵に関するヒントが見つかるのではないかと思ったのですが
結果は、それまでに見てきた行動と変わりありませんでした。
産卵
持ち帰ったヒメオオクワガタに朽ち木を与え産卵を待ちます。
材を齧っているときは何度かあったのですが齧られた材片は大きく
他種でも見られるような居場所作りみたいなものばかりで
当初は全く産卵してくれませんでした。
当時は、気温が下がれば産むとか、気圧が違うとか
ブナでないと産まないとか、いろいろ推察をしたものです。
現地に産卵セットごと隠し置いたこともありました。
(雨水が入り×)
また、1996年発行の「クワガタムシ飼育のスーパーテクニック」小島啓史著には
ヒメオオクワガタの項があり、それなりにページ数は確保されていましたが
肝心の ”テクニック” が見当たらず参考にはなりませんでした。
恐らく著者ご自身も何だかよくわからないまま産卵に成功されたため
あのような内容になってしまったものと思います。
ある日、1頭のメスをサクエチで〆たときふとこんなことを思いました。
「このメス、卵持っているだろうか?」
そこで、他種ではたまに行なっていた腹部切開をしてみたところ
卵の確認はできませんでした。
*内臓露出のため閲覧注意!
↓=============
「もしかすると他のメスも蔵卵していない可能性がある・・・」
いくらセットを組んでも蔵卵していなければ卵など産むはずがないこと
朽ち木を与えても無駄なことをその時思い知ったのです。
↓山ブドウの葉に付くメス
解剖により得られた考察は
「野外活動中のメスはすでに産卵を終えているか、或いは未成熟の可能性がある」
とういこと。
そして、私がヒメオオクワガタの産卵をはじめて確認したのは
2002年の6月、休眠明けの個体からでした。
この時、ヒメオオクワガタと出逢って既に10年が経っていました。
↓エノキでも産卵可能
↓終齢幼虫
↓小さなオス
最近ではヒメオオクワガタは
「野外活動をした翌年の盛夏以前に産卵が期待できる」
という考えが一般的になっています。
最後に
今年は久しぶりに野外メスを1頭物置で越冬させています。
12月中旬、13度くらいの気温でも動いた形跡があります。
春の雪解けは単に温度上昇を加速させるだけでなく
朽ち木の水分量にも変化が起り新しい環境を作り出します。
そのあたりのことについて、次のタイミングで考えを書いてみたいと思います。
↓↑ブナ倒木から出てきた幼虫と成虫
今回も見づらい写真を沢山載せましたが最後まで見て頂いた方
ありがとうございました。
ヒメオオは札幌で数年前に探してみたことがあります、天空のクワガタと言われてますね標高の高い山地にいて、柳や、ハンノキで良く見掛けます。
こちらこそ
ありがとうございました。
北海道にはヒメオオクワガタやミヤマクワガタが沢山いるようなのでうらやましいです。
夏になればそのあたりの様子もブログで見せてください。
楽しみにしています。